【レポート】
世界のインターネットの繋ぎ方~東南アジア編 <その2>
私は中国から東南アジアを周って、その行く先々でインターネットに繋ぐことを模索している。インターネットに繋ぐ必要性があるのは、Webの更新だったり、Webの閲覧だったり、メールの受信などだ。インターネットカフェは世界中にあると言われているが日本語を使えるところは少なく、手持ちのPCで接続することにとなる。 ところで前回、東南アジアについて書かせていただいたが、ベトナム、ラオス、カンボジアと、まだ一部にすぎない。全部見てみたいという欲望の元、今度は残りのフィリピン、シンガポール、マレーシア、ミャンマーに行ってきた。今回の調査の旅は7月から11月にかけてのものである。 ●インターネットカフェは“オンラインゲームセンター”~フィリピン 日本に最も近い東南アジア、フィリピン。沢山の島々からなる国家だが、各島にダイアルアップのアクセスポイントは用意されているほか、「iPass」「GRIC」といった有名どころの国際ローミングサービスも首都マニラやセブ島など、多くの都市で接続をサポートしている。より安く現地のダイアルアップサービスに入るには日本と同様に事前手続きが必要だ。値段は、接続プランにもよるが250ペソ(750円)~2,000ペソ(6,000円)といったところだ。 インターネットカフェもすぐ見つかるほど多くはないが、尋ねて探せば見つかる。インターネットカフェの値段は1時間で60円から120円といったところ。面白いことにインターネットカフェでは、PCと並んでよくタイプライターを見かけるが、残念ながらそれを使っている客は見たことがない。 都市部だけでなく、地方でもインターネットカフェは“オンラインゲームセンター”として見かけることができる。フィリピン人の若い世代はインターネットをよく利用するが、その目的はチャットやゲームが主。インターネットカフェに行く若者は、主に家にPCを持たない人達だが、PCを持ち、プロバイダーと契約している家庭も少ないながらもちろんいる。 フィリピンの公用語はタガログ語だが、英語も他の東南アジアと比べてもかなり通じ、文化もかなり西洋化している。英語を使いこなせるフィリピン人にとって有名なポータルサイトはやはり「Yahoo.com」など英語の著名サイトだ。インターネットに慣れ親しんだユーザは一日一回はネットにログインするという。 ●インターネット環境は日本の大都会並みに整備~シンガポール アジアの中でもアジアらしさのない洗練されたシンガポール。淡路島ほどの大きさの国だが、インターネット環境は日本の大都会並みに整備されている。当然、国際ローミングサービスもiPass、GRICが複数の電話番号を用意するほか、日本のプロバイダーでシンガポールにアクセスポイントを用意しているところもあるので、事前に日本で準備すれば何も問題は起きないだろう。 より安く接続するとなるとADSLであれ、ダイアルアップであれ、現地のプロバイダーと契約する必要がある。料金例として、ADSLでは256Kbps接続で月55シンガポール・ドル(3,300円)、512Kbps接続で月70シンガポール・ドル(4,200円)。ダイアルアップは半従量制の10シンガポール・ドル(600円)から無制限の100シンガポール・ドル(6,000円)まで。電話料金込みで従量課金のプロバイダーもある。 先進国並みの環境に囲まれたシンガポール、他のアジア諸国に比べて物価も高ければ、インターネットカフェでの接続料も高い。インターネットカフェはADSL回線のものもある。大きいインターネットカフェではメールやWebの巡回のほか、オンラインゲームが遊べるところもある。むしろそのようなインターネットカフェ利用者の大半の人はなにかしらゲームをしている。そのほか、ホテルでは専用線を用意しているところもあり、その軽快な速度に比例して値段は高い。 さて、シンガポール人のほとんどは中国系で、ついでマレー系やインド系となっている。公用語は英語だが、彼らの言葉ももちろん通じる。ポータルサイトも英語、中国語、マレー語、インド公用語のサイトがそれぞれ用意されている。
シンガポールの名物の一つとして挙げられるのが、世界で最もサービスが優れていると言われるチャンギ国際空港。日本からシンガポールへの便は全てこの空港に着陸する。もちろんインターネットへの接続サービスも万全。ブロードバンドのインターネットカフェ、無料の電話回線とモジュラージャック、PDAやノートPCのIrDA端子からの赤外線によるインターネット接続もサポートしている。 ●ブロードバンド環境はごく一部~マレーシア 中国系にマレー系、インド系と少数民族により成るマレーシアはマレー半島の一部(西マレーシア)とボルネオ島の一部(東マレーシア)の大きく2つからなる。首都クアラルンプールを始め、大きな都市は西マレーシアに集中する。私は西マレーシアのみ行ったが一般的な事柄については充分と認識してよいだろう。 国際ローミングサービスiPass、GRICは東西両マレーシアの主要都市をサポートしている。より安い現地のプロバイダーへの加入は日本と同様の事前手続きが必要である。ブロードバンド環境はごく一部にあるが、一般ユーザーはまだ恩恵を受けることはないだろう。インターネットカフェの数は多く、探すのにそれほど苦労はしない。利用料金は1時間で2~4リンギット(60円~120円)。家にPCを持たず、インターネットカフェでメールやWebのチェックを済ます人が多い。シンガポールと土堤で陸続きになっており、徒歩でも行き来できるジョホールバルという隣街では、電話代にしろインターネットカフェ料金にしてもシンガポールと比べると格安でネットサービスの恩恵を受けることができる。中国人が経営する店の中にはインターネットカフェと称しながら内部ではオンラインカジノを提供する店も見かけるが、これらの店では実際にはインターネット接続はできない。
マレーシア人の中でも一番中国系の人がインターネットを頻繁に利用する。若い世代が中心で、その目的はやはりオンラインゲーム。「オンラインゲームのためのパソコン、インターネット」という意識がために、本来のインターネットでできること、例えばWebブラウジングを知らない人が結構いるとか。一方、30~40代の世代になると自分のPCとダイアルアップサービスを使ってWeb巡回や情報の検索などをする人が多い。毎日ネットにログインする人もいれば、4、5日に一回ログインする人もいる。 ●一般の人達のインターネットの使用は禁止~ミャンマー 以前はビルマと呼ばれた仏教国ミャンマー。誰もが行くと「いい国だ、いい人達だ」と、いい思い出を作ってくるミャンマー。また、実際に行った人は誰もが「ミャンマー人は頭がいい」と絶賛する。そんなミャンマー人達のインターネット活用法は?と期待させる。 だが、ミャンマーは他の東南アジアと事情が大きく異なる。軍事独裁政権にあり、政府が一般の人達のインターネットの使用を禁止しているのだ。したがって他の国にあるような国際ローミングサービスのアクセスポイントもなければ、民間のプロバイダーサービスもないし、インターネットカフェもない。ただし、インフラ自体はあり、ミャンマードメイン「.mm」も存在する。この「.mm」ドメインのメールアカウントを取得することも可能だが、年数百ドルという現地の物価から考えれば信じられないほど高額だ。唯一インターネットが可能なのは「ICT」というソフトウェア開発機関で、ここだけは他の国と同様にインターネットを利用できるという。とはいうものの実際には政府がインターネット関連を全て管理しており、繋ぐことを許可しても限定されたWebサイトしか閲覧ができない。「国全体がイントラネットになっており、逐一ログをとったりメールも翻訳して全て政府が傍聴している」という噂もあるとか。 現地にインターネットカフェはないが代わりに「メールサービス代行店」というのが存在する。送信受信が別料金で基本的にメール1通につきいくらとか、メールサイズが1KBあたりいくら、といった料金体制になっている。使い方はメーラーに入力するだけ入力して後は係員に頼んで送信してもらい、店員に料金を払うのである。高級ホテルや街中のFAX・コピー屋などで利用可能だ。価格は場所によってまちまちだが、首都ヤンゴンの高級ホテル内のサービスで1通あたり1ドル、FAX・コピー屋で1通あたり1ドルの半額、500チャットという価格設定になっていた。これらの店でのWeb閲覧は不可能である。街中の電話屋で電話線を借りて海外のプロバイダーに向け国際電話をかけるといった方法も、インターネットができないという政情からして、彼らを説得するのは難しい。 以上のようにミャンマーでインターネットを使うのは極めて厳しい。しかし、完全に不可能というわけではない。以下の2つの方法だと可能だと思われる。一つは部屋の中から国際電話がかけられる環境であればそこから他国のアクセスポイントに接続する方法。もう一つはGSM形式の携帯電話と、それとPCを繋ぐ環境を使う。もちろんおおっぴらにやらないことが大事である。 ●地面に座ってPCに向かい合うインターネットカフェ~インドネシア(おまけ) 東西に何千kmも広がる群島国家、インドネシア。東から西までいろんな島があり、文化がある。今回、私が訪ねたのはスマトラ島の最大の都市「メダン」とシンガポールから1、2時間で行けるバタム島だけなので、そこからインドネシアのインターネット事情が全てわかるわけではないので、以下に書くことはおまけ的なものとして読んでほしい。 まずインドネシアでのネットワークへの接続方法だが、比較的行きやすい島であればダイアルアップのアクセスポイントはあると思ってよい。国際ローミングサービスもiPass、GRICとも両方とも対応している。インターネットカフェは、現地の若者が使っており、そこそこといったところ。料金は1時間約100円といったところ。物価からみれば高いがPCとインターネットの普及からいえば妥当な値段か。 面白いのは椅子に座らず地面に座ってPCに向かい合うインターネットカフェがあったことだ。これはインドネシアで大多数を占めるイスラム教の習慣に根付いたものなのか、インドネシアの習慣かは定かでないが、このような姿勢でPCを使うというのは面白い。 ◎関連記事 (2002/11/15)
[Reported by 山谷 剛史( yamaya@tc.xdsl.ne.jp )] |
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