【イベントレポート】
東京電機大学・佐々木教授「日本の情報セキュリティ教育の現状と今後」を語る■URL マイクロソフトやトレンドマイクロなど8社が設立したセキュリティー教育プログラム機関「SEA/J(Security Education Alliance/Japan)」は11日、パートナーや認定制度などを説明するセミナーを開催し、基調講演として東京電機大学工学部情報メディア学科の佐々木良一教授が演説を行なった。 ○セキュリティー重要度や脅威の現状
セキュリティーの脅威は大きく分けて「クラッカーやスパイなど部外者」によるものと「従業員などの部内者」によるものになるという。これらの脅威はさらに、不当に情報を閲覧されてしまう「機密性の喪失」、情報を不当に破壊されてしまう「完全性の喪失」、不当な利用によりデータやPC等が利用できなくなってしまう「可用性の喪失」の3種に分けることができる。また、以前はこのような情報の喪失は部内者によるものが圧倒的に多かったが、現在では外部からの攻撃等が急激に増加しているため、相対的には部外者によるものと部内者によるものの割合は、約50%ずつになっていると紹介した。 このような脅威に対する主要な対策としては、技術的対策として「ファイアウォール等によるアクセス管理や暗号化」や「セキュリティー監視等による予防や検知」などがある。また、管理的対策としては、セキュリティーポリシーの構築・運用・教育があるという。具体例を挙げると、アクセス管理では、パスワード等によるユーザー認証やファイアウォールがある。中でもユーザー認証は、“本人の知識を利用するもの”としてのパスワード、“本人の持ち物を利用するもの”としてICカードなど、“本人の身体的特徴を利用するもの”として指紋や声紋などを挙げた。次にセキュリティー監視では、「脆弱性診断」や「不正侵入検知」があるが、最終的にはこれらの技術的対策を有効活用するための管理的対策として、セキュリティーポリシーの構築や運用が重要であるとまとめた。 ○セキュリティー教育の状況や今後 佐々木教授は、次にセキュリティー教育の状況を例示した。資料には、セキュリティー教育を実施している割合が示されており、全体で18.8%、一番高い大学の場合でが32.7%、一番低い企業が15.9%だった。このような現状下に「如何にセキュリティー教育を進めていくか?」という問題について、教授は大学生などの学生の場合は「一般ユーザーとして」、「将来の技術者として」、「将来の研究者として」の3通りの教育方法があるとしており、企業の場合は「一般ユーザー」、「幹部」、「管理者」など立場にあわせた教育が必要だとしている。 実際のセキュリティー教育分野やスタイルは、基礎として「TCP/IPやOSなど」、中級として「PKIやIPSEC、Windowsセキュリティー」、応用として「電子商取引」や「ISO17799などのポリシー策定」などの分野を教育する必要があり、スタイルとしては「通常の講義方式や実習・実技」、「eラーニングや通信教育」などが考えられるという。ただし、現在の技術ではeラーニングなどで技術レベルの高い実習などは難しいのではないか?との分析も述べていた。
次に海外でのセキュリティー教育の例を挙げた。米国では、大学におけるセキュリティー教育コースの一覧を掲示しているWebサイトがあるが日本ではまだないという。また、日本では一般教養的なコースが少なく、そのほとんどが大学院のコースで、ほとんどが「暗号」中心のものになっている。その点韓国では、「セキュリティー学科」が学部に誕生し、1,000名規模の卒業生を送り出しているという。この米国や韓国の例をみると、日本の大学でのセキュリティー教育は遅れているというのが現状だ。 このような、セキュリティー教育の現状の中での「今後のあり方」について、佐々木教授は、「役に立つ教育」と「暗号に偏らない教育」の重要性を説いた。同教授の調査によると、セキュリティー教育を行なう企業は増加傾向にあるが、「体系だっているか?」、「教育レベルは?」、「受講者の満足度は?」などの疑問が残るという。このような疑問の残るなか、日本のセキュリティー市場はさまざまな調査や報告から“伸びるのは確実”とされながら、まだまだ未完成の部分が多いことが指摘された。そのような未完成の部分を満たす点からも、SEA/Jのようなセキュリティー教育機関に寄せられる期待は大きいとした。 ◎関連記事 (2002/12/11) [Reported by otsu-j@impress.co.jp] |
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