【業界動向】
米音楽出版社らが170億ドルの訴訟を起こす
「Bertelsmannは自らの利益のために
Napsterの著作権侵害を見逃した」
■URL
http://www.nmpa.org/pr/BertelsmannComplaint02-19-2003.pdf
米国の音楽出版社や著名なアーティストたちがドイツのメディア企業Bertelsmannに対して、同社がファイル交換サービス「Napster」の延命に寄与したために多大な損害を受けたとして、総額170億ドルにも上る損害賠償訴訟を米国のニューヨーク南部地裁に起こしたことが明らかになった。
この訴訟を起こしたのはThe Harry Fox Agencyなどのレコード会社やJerry Leiber、Mike Stollerなど著名なアーティストのグループである。Jerry LeiberとMike Stollerは「Stand by me」や「Hound Dog」などの作曲家として知られている。
原告の主な主張は以下の通り。Napsterはそのファイル交換サービスのためにレコード業界によって著作権侵害をしていると考えられていたため、1999年の終わりごろから2000年初頭にかけて多くのレコード会社がNapsterを相手取って著作権侵害訴訟を起こした。その中には今回被告となっているBertelsmannのレコードレーベルであるBMGも含まれていた。そのため、BertelsmannはNapsterが著作権侵害に加担していることを十分承知していたものと考えられる。
こうした訴訟を受けて、Napsterは2000年6月ごろには法的リスクが大きすぎるために投資家から追加投資を受けられなくなり、破産の危機に直面していた。この段階でNapsterが破産していればNapsterのファイル交換サービスによる著作権侵害はその時点で食い止められたはずだった。しかしながら2000年10月30日にBertelsmannはNapsterと突如戦略的提携を発表し、Napsterの延命に必要だった資金5,000万ドルを貸与した。このBertelsmannの行動により、最終的に米国地裁がNapsterのサービスを2001年7月11日に閉鎖するまで、著作権侵害が続けられたという。
原告たちは、Bertelsmannが戦略的提携関係とその金銭的な援助によりNapsterの企業運営に対して多大な影響力を有していたにもかかわらず、違法な活動をやめさせることなくサービスを続けたのは、BertelsmannがBMGを通してコンテンツ配信サービスを展開するためにNapsterのブランド力保持と利用者数の減少を望まなかったからだと主張。Bertelsmannが自らの利益のために著作権侵害を意図的に支援したと訴えている。
その後2002年11月にNapsterの資産はCD焼付けソフトで有名なRoxioに売却された。その際Roxioは進行中の裁判や債務を負わないことを条件に資産を買収しているが、今回の訴訟がこれにどのような影響を及ぼすかは今のところ明確ではない。
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(2003/2/24)
[Reported by 青木 大我 (taiga@scientist.com) ]
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