【イベントレポート】
テレコムサービス協会桑子氏講演「プロバイダ責任制限法のすべて」■URL IP.net JAPAN 2003のコンファレンス「デジタルコンテンツ著作権問題を解決する」では、社団法人テレコムサービス協会事業者倫理・インターネット委員会委員長の桑子博行氏が「プロバイダ責任制限法のすべて」と題した講演を行なった。 テレコムサービス協会は、第二種電気通信事業者を中心とする社団法人で、情報通信の利用環境整備に取り組んでいる団体。現在の会員数は、全国で約330社だという。また、桑子氏が委員長を務める事業者倫理・インターネット委員会は、インターネットをめぐるさまざまな問題に対する事業者としての対応を検討し、業界・団体として利用環境の改善を目指すという委員会だ。構成は、テレコムサービス協会に所属する会員企業約50社より構成され、主にインターネットプロバイダー(以下、ISP)が中心となっているという。 桑子氏は、まず権利侵害の実態について解説した。最近の特徴は、ホームページ関連では、電子商取引の普及に比例して商品販売に関するトラブルが増えているほか、ダイヤルQ2や国際電話に関するものも減っていないという。また、メール関連では、やはりスパムメールに関するものが大半を占めているほか、ウイルスメールに関する相談やセキュリティホールを狙う不正アクセスなども増加しているとのこと。そのほかにも、警察庁が発表しているハイテク犯罪等に関する相談受理件数を例示して、インターネットに関する権利侵害が急増していることを強調した。 このように、インターネットでの権利侵害が急増しており、万が一権利が侵害された場合に当事者同士で問題を解決することが難しいことからも、問題を解決するための環境整備が必要だったと、プロバイダ責任制限法の成り立ちを説明した。 プロバイダ責任法は主に、権利が侵害された際に関係するISPがこれによって生じた損害について、賠償の範囲を制限する「プロバイダ等の損害賠償責任の制限」と、自分の権利が侵害された際に、ISP等に対して情報の開示を請求できる「発信者情報の開示要求」からなっている。実際の流れとしては、自分の権利を侵害された被害者は、違法情報の削除を当該ISPに申し込み、ISPは発信者への確認等を行なった後に対応を行なうといったものになる。また、ISPの対応や発信者には、いくつもの免責事項が用意されており、それに該当する場合は対応する責任がなく、問題が複雑化している。 こういった環境の中で、ISPはいかに迅速に「本当に権利侵害があったのか?」や「権利侵害は本当に発信者が行なったのか?」などの事実確認を行なって然るべき対応をすることが重要となる。そこでテレコムサービス協会は、迅速な対応を実現するためのガイドラインの作成を行ない、2002年5月に公開したという。 ガイドラインは、ISPの立場に立ち、権利を侵害されたとする申立者から、削除要請を受けた際に、ISPのとるべき行動基準の明確化を目的としたもの。ガイドラインの対象は、プロバイダ責任法の定める“特定電気通信役務提供者”となり、これはインターネット上で書き込み可能な電子掲示板等を運営している者であれば、企業・公共団体や学校、個人などを問わず対象となる。 ガイドラインでは、申請の際の手順に「一般者が提出した場合」と「信頼性確認団体を通して提出した場合」に分けて考えられている。これは、日本レコード協会やコンピュータソフトウェア著作権協会などの9団体が所属する信頼性確認団体を経由して届けられた申請は、形式的な確認だけで申請を受け付けることによって、迅速な対応を行なうというものだ。これは、信頼性確認団体がISPに代わって煩雑な事実確認作業等を行なうために実現している。一方で、信頼性確認団体を経由しない場合はISP自身が確認作業を行なうため、時間や手間がかかるという。このガイドラインを作成したことによって、JSRAC経由できた申請に関しては既に数千件単位で実際に処理しているという。 最後に桑子氏は、「権利処理に関する適切な対応が、今後のインターネットの健全な発展には必要だ。ガイドラインも、今後時代の変化があればそれにあわせて随時見直しを行なっていくつもりだ」と締めた。
◎関連記事 (2003/2/27) [Reported by otsu-j@impress.co.jp] |
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