【業界動向】
「儲からないIP電話で競争するつもりはない」と
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森泉氏は、ジュピター・ショップチャンネル代表取締役社長、ジュピター・プログラミング代表取締役社長などを経て、今回J-COM Broadband社長に。コンテンツ/サービス畑を歩んだ同氏が新社長に就任したこと自体が、「サービス会社」を目指す姿勢の現われ |
27日、同日付けでジュピターテレコム(J-COM Broadband)の代表取締役社長CEOに就任した森泉知行氏が記者会見し、ADSLサービスとの差別化ポイントやIP電話サービスに対するスタンスなど、同社のブロードバンド事業戦略について説明した。
同社が現在提供しているのは、多チャンネル放送サービス「J-COM TV」、CATVインターネットサービス「J-COM Net」、固定電話サービス「J-COM Phone」の3つ。サービス内容としては、急速に利用者が拡大するADSLと一部競合している部分はあるものの、「J-COM Broadbandのターゲットカスタマーは、平均年齢が40歳以上のファミリー層。ADSLはもっと若く、対象が若干違う」。
そのため、2002年12月時点で142万2,800世帯あるJ-COM TVの既加入者が何かブロードバンドサービスを導入しようとする際に重要視するのは、「料金も要素ではあるが、求めるのは質の高いサービス」だとしており、「J-COM TV利用者で(割安感のある)ADSLに加入するお客様は多くない」という。同じく2002年12月時点でJ-COM NETの加入者数は50万4,500世帯に達したが、これは前年比57.3%の増加。「(ブロードバンド利用が)ADSLに流れることはなく、むしろ順調に増えている」と説明する。
しかし、もっとも増加率の高いサービスであるとともに、IP電話が本格的に提供されはじめたADSLと大きくスタンスを異にするのが、電話サービスのJ-COM Phoneである。加入者数は34万9,900世帯とそれほど多くないものの、これは前年比110.4%の増加である。森泉社長は、「(J-COM Broadbandのターゲットカスタマーである)コンサバティブなユーザーが求めるのは、(050のIP電話はなく)固定電話」だとして、「(事業として取り組んでも利益の小さい)IP電話で儲けるつもりのない企業と競争するつもりはない。競争しても利益が出ない」と言い切る。
とはいっても、同社がIP電話に参入する可能性がまったくないというわけではない。「IP電話が、CATVにとってビジネスとして成り立つのかわからない」のが現状だ。例えば、若いユーザーが必要としているのであれば、あくまでも「第2の電話」としてだが検討するとしている。また、IP電話を提供しないことが原因で「(J-COM Broadbandの加入者が)ADSLに逃げていくようなら、防御的にやらざるをえない」という。ただし、森泉社長によれば、IP電話がないからといって加入者がADSLに移行しているというようなデータは今のところ出ていないと繰り返す。
なお、同社では5月から7月にかけて最大30MbpsのCATVインターネットの試験サービスを実施し、検証後、J-COM NETの追加メニューとして商用提供する計画だ。高速化の条件でもあるネットワークのHFC化も、札幌を最後に今夏で完了するという。インフラ整備とエリア拡張もこれで一段落するということで、今後は約581万世帯に及ぶホームパス(サービス可能世帯数)の取り込みを強化していく。森泉社長は、「インフラがあれば入ってもらえる時代ではなくなった。これからは、サービスの特徴をきちんとお客様に説明した上で加入してもらう」という営業スタイルに転換するとして、「インフラ会社」から「サービス会社」への脱却を強調した。
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(2003/3/27)
[Reported by nagasawa@impress.co.jp]