【業界動向】
大根に無線ICタグが付けられるのは2007年以降~NTTデータが市場予測■URL
NTTデータは丸紅や大日本印刷と共同で今年9月、スーパーのマルエツにおいてRFIDの実証実験を実施する計画だ。これは例えば、ユニークな番号が記録されたタグを一本一本の大根に貼り付けることにより、流通管理や店舗におけるレジ清算の効率化を図るほか、消費者が生産者情報などをネットワーク経由で参照できる機能などを提供するものだ。流通経路や消費動向なども細かく把握できるため、生産者にとってもフィードバックを得られるという。従来のバーコードが主に流通業者にメリットをもたらす仕組みだったのに対して、生産者や消費者も含めたバリューチェーンを構築できるとしている。 しかし、「実際に大根にタグが付けられるのは相当先」(ビジネス開発事業本部CRM/コンタクトセンタビジネスユニット長の吉川明夫氏)。理由は「大根とタグ、どちらが高いか?」を考えれば明白だ。タグの製造・加工コストは現在、1個あたり数十円から数百円程度。一方、同社が行なった調査によれば、過半数の企業がRFIDの必要性を認めていながらも、タグや読み取り装置のコストがネックと見ており、タグのコストが1円以下まで下がらなければ導入できないとした企業が多数を占めていたという。 ただしこの調査は、商品の平均単価が200円という食品流通分野でのものであり、商品単価が数万円のアパレル業界ではすでに導入している企業もあるという。現在のようにタグのコストが高くても、費用対効果の改善が見込めるような高額商品であれば早い段階で普及するものと見ている。なお、RFID市場がブレイクするのは、コード体系が整備されるであろう2005年頃というのが同社の予測である。まずは単価が高く、流通経路の単純な商品から導入され、これに続いて2007年以降、単価が低く、流通経路の複雑な商品に拡大するとしている。 このような見通しがありながら、NTTデータがあえて食品流通分野で実証実験に取り組むのは、技術的な課題の洗い出しも兼ねているためだ。RFID用に欧米で使われている860~900MHz帯は日本では携帯電話などで使用されていることから、代わりに2.45GHz帯が割り当てられている。しかし、2.45GHzは水に吸収されてしまうという性質があるとしており、ペットボトル飲料や水分の多い生鮮食料品に適用するには対応策が必要になる。また、RFID用に早くから普及している13.56MHz帯についても金属に弱いため、スナック菓子などのアルミ製の包装には直接貼り付けることができないという。さらには常温だけでなく、冷凍やチルドなど温度の面でも厳しい環境にある。難しい分野だからこそ「ここで使えれば本物」(吉川氏)であり、それがクリアできなければ普及にもつながらないとの考えだ。 なお、RFIDの標準化を目指す団体としては、国際的非営利組織で日本では慶應義塾大学に拠点を持つ「オートIDセンター」や、eTRONを採用し日本のローカル性を意識しているという「ユビキタスIDセンター」があり、このほかに経済産業省も独自にコード体系を提唱している。国内には3種類のコード体系が存在することになり、「将来的には相互接続実験もあるのではないか」(技術開発本部副本部長/事業戦略部ユビキタス推進室長の山本修一郎氏)として調整の必要性を指摘している。
◎関連記事 (2003/6/13) [Reported by nagasawa@impress.co.jp] |
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