【ワイヤレスジャパン2003レポート】
東京電力講演「最大54Mbpsの無線アクセスを2003年内に提供予定」
WIRELESS JAPAN 2003のコンファレンスでは、東京電力 光ネットワーク・カンパニー バイス・プレジデントの板橋敏雄氏が、同社の光ファイバサービスや無線アクセスサービスの取り組みについて講演を行なった。講演では東京電力が2003年内のサービス開始を予定する最大54Mbpsの無線アクセスサービスに関する現状が説明された。 東京電力は2003年6月に傘下のスピードネットを事業統合、上下とも最大1.5Mbpsの「無線アクセスサービス」を提供している。このサービスで利用している免許不要の無線周波数である2.4GHz帯は「ISMバンド」と呼ばれ、無線LANはもとより電子レンジや医療機器などでも使用されているために、日常生活の場面で電波干渉が発生する可能性がある。 そのため無線アクセスサービスではIEEE 802.11bなどで採用されている最大11Mbpsの「DS(Direct Sequence)」ではなく、「FH(Frequency Hopping)」という通信方式を採用。通信速度は上下とも最大1.5Mbpsへ制限されるものの、ISMバンドのノイズ耐性を高めている。 無線アクセスサービスのサービス開始当初は、ADSLの通信速度も最大1.5Mbps程度だったため、両者に数字の面での差はなかった。しかしYahoo! BBが8Mタイプのサービスを打ち出して以降、ADSLは次第に最大通信速度を高速化、無線アクセスサービスとは大きな差が開き始めた。板橋氏は「実効速度では決して劣っていないと思うが、ユーザーは数字を強く意識するためにサービスが厳しくなってきた」と実情を語る。 ●5GHzサービスの実証実験は最終段階そこで当時のスピードネットが打った次なる手が、5GHz帯を利用した無線アクセスサービスだ。こちらは現在のところサービス提供に免許が必要となるものの、理論上は最大54Mbpsでの通信が実現できる。また、FTTHやADSLが利用できない環境へも無線を利用して提供できる、FTTHとは異なり1戸ごと回線提供できるといった無線アクセスサービスのメリットも併せ持っており、「携帯電話のポータビリティ性とブロードバンドの高速性の両方を実現できる」と板橋氏は自信を示した。 5GHzの実験は2001年6月から2002年1月に4.9GHz~5.0GHzの周波数帯で基本動作実験を実施。この結果を受けて5GHz帯の実験局免許を取得したのち、2002年9月から12月まで5.03GHz~5.091GHzの周波数帯を利用したフィールド実験を行なっている。現在はプロトタイプの製品を利用し、性能評価や長時間稼動といった最終段階の実証実験に入っており、今秋以降設備を展開、年内のサービスインを目標としていると語った。サービス提供方法はTEPCOひかり同様、ホールセール形式を採用するという。
通信速度は最終段階の検証でほぼ54Mbpsの速度を引き出せており、実効速度でも25~26Mbpsが見込めるとした。月額料金はまだ未定だが、板橋氏は「高速ADSLと競争力のある価格設定」を予定しているという。ただしADSLはNTT交換局からの距離といった環境によって速度が変わるのに対し、5GHz帯での無線アクセスは安定した速度が実現できるため、実際の速度ではADSLに勝る点を強調。そのため料金はADSLとFTTHの中間程度に設定する方向を明らかにした。 セキュリティも重要視しており、WEPやWPAといった標準的なセキュリティのほか、東京電力独自の方式も採用する予定。回線の利用が特定ユーザーに偏らないよう、負荷分散といった対策も講じるという。また、課金方式は現在の2.4GHz帯のように伝送データ量で料金を決めるのではなく、あくまで定額制で提供するという。サービス提供エリアはユーザーニーズなどを踏まえて検討中であるものの、無線アクセスサービスまたはTEPCOひかりのサービス提供エリア内であることが付け加えられた。
今後の課題として板橋氏は、「技術面ではかなりの部分をクリアしている」と前置きした上で、周波数帯の問題を挙げた。現在利用している5.03GHz~5.091GHzではサービス提供の上で数が足りないため、4.9GHz~5.0GHzを利用している固定マイクロの速やかな移行が必要であるという。さらに同周波数帯を使用できる時期の明確化、今後さらに周波数帯が必要になった場合に追加割り当てを行なうなど、柔軟な対応の必要も同時に訴えた。 2.4GHz帯のサービスではアクセスポイントが見渡せない環境のユーザーに対して、中継局を利用してサービス提供しているが、5GHz帯ではこの中継局が法規制のため設置できない点も大きな問題だという。この問題については関係当局へ、中継局を利用できる用途制限の緩和を求めていくという。 最後に板橋氏は、「下りだけでなく上りも高速であり、ユーザーがいつでも、どこでも、誰でも情報発信できる立場である」点から、無線アクセスサービスを「ラストワンマイル」ではなく、ユーザー側からの視点に立った「ファーストワンマイル」であるとコメント。さらに今後は技術が進むことで、FTTHを超える速度やADSLより低廉な料金も実現できるだろうとの予測を示した。
◎関連記事 (2003/7/17) [Reported by 甲斐祐樹] |
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