【イベントレポート】
ACCS久保田氏講演「デジタルコンテンツ保護には現行の著作権法では不十分」■URL
ケーブルテレビ関連イベント「ケーブルテレビ2003」2日目の24日、社団法人コンピューターソフトウェア著作権協会(ACCS)の久保田裕専務理事・事務局長が、「ネットにおける著作権侵害事案とその対策」と題する講演を行なった。 まず最初に久保田氏は「情報というものは無形だからこそコピーされやすい」と警鐘を鳴らす。「米国では、この種の犯罪に対して懲罰的損害賠償などを下すが、日本ではそれができない」と続ける。そして「デジタルコンテンツでビジネスを考える場合、著作権法だけを知っていても意味がない。肖像権やパブリシティ権なども視野に入れて、デジタルコンテンツそのものを法で保護すべきだ」と語った。 また久保田氏は、「デジタルコンテンツを扱うということは、情報の信憑性をどのように担保するのかが重要になってくる」と語る。また、インターネットが普及したことで、「著作物の送受信が容易にできるようになり、被害が広範囲に、それこそ世界中に拡大してしまう」と現状を指摘する。 ACCSではデジタルコンテンツ保護のための活動を1986年頃から行なってきた。最初は専門業者による海賊版への対策だったが、1989年頃から違法レンタル・擬似レンタル対策へとシフトしていった。1993年頃からパソコン通信によって、被害の「一般化」が進み、インターネットの普及に従って「匿名化」が進んだという。1998年からのインターネットオークションの悪用に加えて、最近ではインターネットファイル交換ソフトによる被害が拡大しているという。 久保田氏は、「ファイル交換ソフトへの対策として、京都の大学生の摘発に協力した。ところが、アピールが足りなかったのか、違法行為である認識を広めるという点では効果がなかった。最近、とある大学院の学生にアンケートをしたところ、ファイル交換が違法だと思ってないという結果を得た」と語った。ACCSでは、6月までに240件の刑事事件への協力を行なってきた。その内インターネットの掲示板などを使った海賊版摘発が120件、無許諾アップロードが9件だという。また、ファイル交換ソフトユーザーには、インスタントメッセンジャーを使って警告書を送る活動もしている。これまでに1万2,632通(うち、ファイル交換に関しては9,189通)の警告書を送付したという。 さらに久保田氏は、「著作権法違反の場合、3年以下の懲役か300万円以下の罰金となっている。これを特許法違反と同じ5年以下の懲役、もしくは窃盗と同じ10年以下の懲役にしたほうがいい」と語る。またプロバイダー責任制限法(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)についても一定の評価を下しながらも、「情報の開示を認める判決と認めない判決が東京地裁で下されており、なんのためのプロバイダー責任制限法かわからなくなることがある。通信の秘密保持も重要だが、著作権保護違反に関しては分けて考えてもらいたい」とコメント。 最後に久保田氏は、デジタルコンテンツ利用のマナーや啓蒙活動に触れ、「セキュリティを施さないで情報を公開する企業はモラルに反していると思う。個人でも、IDやパスワードをしっかり管理するのと同じモラルの問題だ」と語った。
◎関連記事 (2003/7/25) [Reported by okada-d@impress.co.jp] |
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