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【通信事業】

早急な見直しが迫られるADSLのコロケーションルール
<後編>

■URL
http://www.soumu.go.jp/s-news/2001/011031_2.html
http://www.soumu.go.jp/s-news/2001/011121_5.html
http://www.soumu.go.jp/s-news/2001/011206_2.html
http://www.soumu.go.jp/s-news/2001/011221_7.html

 総務省の情報通信審議会が21日、東西NTTの約款変更申請を条件付きながらも認める判断を下したことで、“コロケーション差し押さえ”論争はとりあえず一段落した。改正約款は申込済みのリソースにも適用されるため、ビー・ビー・テクノロジー(BBT)が大量に保留しているというリソースも、もしもこのまま未使用状態が続いたとすれば、改正約款の実施日を起算日として6カ月後には無償の保留期間が終了することになる。

 同時に、それまでの緊急措置として東西NTTは、「新装置の採用による効率化・省電力化を図り、現在当社が保留しているリソースの開放を前倒しで実施する予定」だ。具体的には、東西NTTが12月に導入する装置からは収容効率が約2倍に向上するため、東日本の34ビルにおいて171ラック分、西日本の17ビルにおいて133ラック分のリソースが捻出されるという。これを保留リソースのない事業者向けに割り当てていく考えである。この施策が実施されれば、一部の収容局におけるコロケーションリソースの枯渇問題も「来年早々には回避される」(イー・アクセス)見通しである。

 しかし、コロケーション差し押さえ論争には、電気通信審議会の公開ヒアリングで進行を務めた電気通信事業部会接続委員会の醍醐主査が指摘するように、「将来どのようなルールを作るのか?」「足下の問題を現時点でどう解決すべきか?」という2つの観点がある。東西NTTによって申請されていた約款変更は、このうち2つ目を解消するための応急処置という感が否めない。

 保留期間が6カ月間に短縮されたと言っても、これはあくまでも無償で保留しておける期間である。さらに6カ月間は有償で延長できるし、BBTの孫社長が主張しているようにこれらの保留リソースが事業計画に基づいて申し込まれたものであるとするなら、その間に使用が開始されることも考えられる。結局、特定事業者によるコロケーションリソースの占有が起こり得る状況にあることは変わりはない。

 そこで必要になるのが、パブリックコメントとして各社から出されるとともに、最終的に情報通信審議会の答申の中でも挙げられているいくつかの施策だ。答申では、約款変更を認可する条件の一つとして、収容局ごとの逼迫状況等によっては「返還のための協議を申し出ることがある旨の規定を追加すること」としているほか、総務省への要望として、返還協議により事態が改善されない場合は「業務の改善命令発動を含む適切な措置を講じること」を求めている。さらに、キャンセル時のペナルティや申込数の上限設定などのルール設定について至急検討することを要望している。

 公開ヒアリングの翌日、イー・アクセスが報道関係者向けに開いた説明会でエリック・ガン代表取締役COOは、新規事業者が勝ち取ったコロケーション開放のルールを逆手にとった行為に対して、「このようにルールを悪用している例は世界的にない」と憤りを露にした。もちろん、現時点でBBTの行為を指して“ルールを悪用”したものだと決めつけることはできないが、結果として「1年間リソースを使わないのは消費者の利益にならない」ことは確かだ。“悪用”ととられてしまってもいたし方ない面はある。

 しかしより問題にすべきは、“悪用”を許してしまう土壌が従来のコロケーションルールにはあったということだ。庄司勇木企画部長が「なぜ、このような慣行がまかり通ったのか、少なくともYahoo! BBが参入した時点で約款の吟味をすべきではなかったか」と指摘しているように、ブロードバンド事業の競争が激化する中で、コロケーションルールの整備をないがしろにしてきたことの責任は大きい。

 いずれにせよ東西NTTは今回、いわば自腹を切って短期的なリソースを捻出する羽目になった。また、これまで優遇が指摘されていた自社のコロケーション利用についても、競合他社と同様に扱うという交換条件(これが正常といえば正常なのだが)も提示させられた。結果として、コロケーションルールを甘く見ていたツケが東西NTTに回ってきたと言える。

 現時点では、コロケーションルールの整備についてようやく重要性が認識された程度に過ぎない。今回はたまたまADSL事業で問題が表面化したわけだが、コロケーションリソースはなにもADSLだけに限ったものではない。今後はダークファイバーの活用など、ブロードバンドの普及へ向けてより重要性が増してくると考えられる。答申で示された項目について、東西NTTがどのようなかたちで修正案に盛り込むのか? さらには今後のルール整備をどれだけ早急に進めるか? コロケーションルールの本質的な部分での見直しが迫られている。

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(2001/12/25)

[Reported by nagasawa@impress.co.jp]


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