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【連載】

ホームページ安全講座


第8回 掲示板の運営方法


 前回は、意図的な嫌がらせをする「掲示板荒らし」について書きました。今回は、参加者に悪気はないのに起こってしまうトラブルについてです。

 掲示板で色々な人とコミュニケーションをとるのは楽しいものですが、些細なことからトラブルに発展することもあります。人にはそれぞれの価値観があるわけで、さまざまな人が集まるとそれらが衝突してしまうことがあります。また、掲示板での会話は、基本的記には文字だけのコミュニケーションですから、ささいな言葉の使い方が誤解を招いて大騒動に発展してしまうこともあるのです。

 まず最初に。個人ページの掲示板は、設置をしている管理人のものです。ですから、どういう掲示板にしたいか、どういうルールで運営するかは管理人の一存で決めてよいものだと思います(ただし法律や公序良俗に違反してはいけません)。そのルールにあわない発言を削除するのも、ルールに従わない人の参加を断わるのも管理人の権利です。ただし、それによって生じる結果の責任は管理人がひとりで受け止めることになります。
 あまりに独善的な運営をしていれば参加者も離れていきますし、別の場所でリンクを張られて批判されたりすることもあるかもしれません。そのあたりは覚悟しておくべきでしょう。
 もうひとつ管理人の方にぜひ知っておいてほしいのは、掲示板に書込みしている人よりもはるかに多くの「見ているだけの人」がいるということです。まだ「誰が見ているか」もわかりません。運営するときには、頭の中に「誰だかわからない人も読んでいる」ことを常に頭に置いてください。

 掲示板にはルールが必要です。ルールなどなくても、スムーズに運営できれば一番いいのですが、誰でも参加できるような掲示板ですと、悪意はなくてもよくわかってない初心者が問題のある書込みをしてしまうこともあります。問題が起こってからルールの設置をするよりは、予防のためにもルールを明記しておいた方がいいでしょう。もし、何かトラブルが起こったときに、「ルールを読んでください」と言えば済みます。
 では、どんなルールを作ればいいのでしょうか。これは、管理者が「どんな掲示板にしたいか」によると思います。とにかくみんなで楽しくお喋りができればいいのか、真剣に議論をしたいのか、情報交換をしたいのか、まずは考えてみましょう。もし掲示板の「テーマ」が決まってるなら、それを明記します。低年齢層の方や初心者が多く集まる掲示板であれば、「掲示板は誰が見ているのかわからないので、住所や電話番号などの個人情報を書込みするのは危険です」の一言を明記しておいた方がいいでしょう。ネットの危険性については、「インターネットで危険を避けるための最低限の知識」で初心者向けにまとめていますので、そちらに直接リンクして「初心者はココを読んでください」としていただいてもかまいません(リンクの連絡は不要です)。あとは、「楽しくお喋りしましょう」、「議論は冷静に」など運営方針を書きましょう。また、「問題のある発言は削除します」と明記しておいた方がいいでしょう。

 情報系の掲示板でトラブルになりやすいのは、「裏情報」的なものの扱いです。このあたりについては、第2回の「情報の扱い方」で書きましたが、誰かに迷惑をかけそうな情報や掲示板でのやりとりは禁止しておいた方がトラブルにはなりにくいです。
 たとえば、金銭的や物品のやりとりがある掲示板であれば、「物品のやりとりは個々の自己責任でお願いします。何かトラブルがあっても管理人には一切の責任はありません。」と免責事項を書いておいた方がいいでしょう。ただし、免責事項を書いておいても、問題となる発言をそれとわかっているのに放置していると、管理人にも「管理責任」が問われることになります。メンテナンスはこまめに、長期間に渡ってメンテナンスができない場合は掲示板を一時的に閉鎖しておいた方が危険は少ないです。

 なお、注意書きに「荒らし禁止」などとは書かないでおきましょう。荒らしをするような人は、人が嫌がるのをみて喜ぶので、かえってターゲットになる可能性があります。このあたりは第7回の「掲示板の安全」に詳しく書いていますので、参考にしてください。
 また、あまりにルールが長くなりすぎると、読んだ人が参加を躊躇してしまうことがあるので、なるべく必要な分だけにしておいた方がいいと思います。
 参考として、私が運営していたタレントのファンページのルールをここにまとめてあります。このページのルールは内容をそのまま使っても、一部改変して利用してもかまいません。

 ルールを作成するには、同じようなジャンルのページの掲示板のルールをいくつかみて参考にするといいと思います。ルールはトラブルへの対策のためにできてくるものですし、ジャンルによって起こるトラブルは違ってきます。ルールを参考にする場合は、その旨を一応ホームページの所有者に連絡しておいた方がいいでしょう。

 もし実際にトラブルが起こったときはどうすればいいでしょうか。まず、事態収拾の処理は、なるべく掲示板上で行なった方がいいでしょう。水面下のメールでのやりとりのみで解決をしようとした場合、まわりの人は事情がわからないので不快感を抱くこともあります。ただし、相手が初心者の場合は、掲示板上で注意されると萎縮してしまう人もいますので、そういう場合はメールでやんわりと注意した方がいいでしょう。それでも内容によっては、そういう書込みがあったことで「こんな書込みもOKなんだ」と別の参加者に誤解される可能性もあるので、掲示板上でもフォローを入れておくべきかもしれません。
 また、嫌がらせのような明らかに問題のある発言は、削除します。初心者が住所や番号をうっかり書込みしてしまった場合も、該当部分を削除した上、掲示板上と(わかれば)書込みした人のメールアドレスに直接メールで注意をします。ただし、注意をする場合には、管理人は怒らず冷静でいること。文字だけの方が直接言われるよりもキツいことだってあるのです。特に相手に悪気がない場合は、なるべくやんわりとした言い方を心がけましょう。
 なお、トラブル処理報告は掲示板上で行なうのが基本ですが、掲示板荒らしにあった場合は「削除して無視」が基本です。下手に反応すると、さらなる嫌がらせを煽ることもあります。
 もしルールに当てはまらない、新たな形のトラブルが起こった場合でも、それらの経緯や自分の考え方をきちんと書いておけば、それらの処置は利用者に受け入れてもらえるものです。「掲示板は管理人のもの」とはいえ、理由も示さずに、何もかも「ダメ」連発では反感を買います。削除などのメンテナンス作業は、最低でも1日に1度はした方がいいと思います。ネットの伝播力というのはかなり強いものなので、長期間放置したときの危険性は少なくありません。パスワードなどを利用してWeb上で削除できるなら、信頼のおける友達にメンテナンススタッフとして参加してもらえるようにしておけば安心です。

 参加者同士での議論などが起こってしまった場合、どう対処するかは掲示板のカラーにもよります。楽しくコミュニケーションすることを目的にしている場所であれば、なるべく早くに介入して、当事者同士にメールなどで解決してもらうのもひとつの手です。
 議論もOKな掲示板であれば、ある程度は自由にしておく方がいいかもしれません。とはいっても、つまらない言葉尻をとらえた罵り合いなどに発展した場合は、すみやかに管理人権限でストップをかけた方がいいでしょう。
 議論が起こった場合、どうしていいかわからずに、嵐が過ぎるのを待って静観を決め込む人もいるかもしれません。でも掲示板は管理人がなんとかしない限り、勝手にうまく運営されていくものではありません。もちろん、参加者の質が高い場合には、適切なフォローをしてくれる人がでて、管理人がでていかなくてもきちんと運営されていることもあります。でも、「質の高い参加者」がどこからかやってきて助けてくれるなんてことはほとんどありません。「質の高い参加者」を「育てる」のも、管理人の仕事だと思います。

 これまでのことは書込みが多く、それゆえにトラブルが多い掲示板の話ですが、逆に書込み数が少ない掲示板の場合は、まず参加者を増やすことが大切です。参加者を増やすには、まずはホームページのアクセス数を増やすことです。掲示板に実際に書込みしてくれるのは、訪問者のうちのほんの数パーセントにすぎません。アクセス数を増やす方法については、Yahoo!などで「アクセス向上」で検索してみてください。多数の参考になるサイトがあります。
 有効なアクセス向上方法に、同じジャンルの掲示板に書込みをしてページをみてくれるように宣伝するというのがありますが、ページの宣伝を目的とする掲示板ではない場合は、あまりに宣伝そのものだと逆に反発を買います。情報を提供したりして、その掲示板に参加する意志をちゃんとみせた上で、さりげなくページの宣伝をする、といった方法がよいでしょう。
 最初の頃は積極的に自分から話をふる、書込みしてくれた人全員に返信をつけるということはやった方がいいと思います。たまに、「自由に使ってください」とだけ書いてある掲示板を見かけますが、逆に何を書いていいのかわからず、かえって書込みにくくなる可能性もあります。管理人自ら、書込みしやすい話題をふった方が、書込みしやすくなります。
 掲示板で色々な人とやりとりをするのは楽しいですが、その分わずらわしいこともでてきます。トラブルが多く大変であれば、思い切って閉鎖してしまうのもひとつの手だと思います。個人のページはあくまでも趣味のもの。設置者が楽しめなくなるほど大変な状況になってまで続けていくことはないのです。

(99年10月6日)

[Reported by 麻弥]


バックナンバー

第1回:インターネットは夢のメディアか?(8月11日)

第2回:情報の扱い方(8月18日)

第3回:インターネットの危険性(8月25日)

第4回:自由と責任(9月1日)

第5回:引用とリンクのしかた(9月8日)

第6回:IPアドレスとリモートホストについて(9月22日)

第7回:掲示板の安全について(9月29日)

第9回:気をつけたい著作権(10月13日)


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