1998年4月7日
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●総合経済対策の柱に情報通信分野で1兆円の予算
○高速光アクセスシステム「ATM-PDS」の承認
○米4大ネットのデジタルTV放送方式が決定
余談3題:WBTの出荷/高精度ソーシャル情報フィルタリングシステム/大規模イベント向けエージェント型情報システム
[景気対策][教育](レベルA')
●総合経済対策の柱に情報通信分野で1兆円の予算
日経新聞1面には、政府が4月下旬に打ち出す総合経済対策の柱として、98年度補正予算に情報通信分野で1兆円の国費を盛り込む検討に着手したという記事が掲載されている。2003年をめどに進めてきた全国3万8千の公立学校をインターネットに接続する計画を前倒しして、2000年までに整備するとともに、中高校については今年度中に生徒が1人1台のPCを使える教室を全校に設ける計画という。また1.5Gbpsの光ファイバー敷設や小中高校のネット利用料を5年間、政府が補助する案も検討しており、情報革命に対応する新社会資本の整備に重点を置くとしている。
3月27日号のNEWS
Watchで取り上げた総合経済対策のうち、情報通信分野における詳細な内容が見えてきたようだ。これでアメリカのGII政策に対して、すべての公立学校をインターネット接続するという教育分野に限っては、ある程度の遅れは取り戻せると思われる。
このプロジェクトを推進する為には、各省庁間(特に文部省と郵政省)の協調が必要であり、効率良くかつ効果的な予算配分を行うことも重要だろう。
○高速光アクセスシステム「ATM-PDS」の承認
日刊工業新聞9面と日経新聞11面&日経産業新聞4面には、NTTが6日、NTTの提案による高速光アクセスシステム「ATM-PDS」が国際電気通信連合(ITU)の電気通信標準化部門(T-SG15)の会合で国際標準として了承されたと発表したという記事が掲載された。この方式は光合分波器を使って1台のNTTビル内装置(OLT)と複数の顧客側装置(ONU)を接続することにより、複数の利用者でOLTを共有できると書かれている。システムの伝送速度が155Mbpsで、利用者が10Mbpsの通信速度を確保しても、電話局側の1台を16世帯で共用できるという。NTTでは来年半ばまでに同仕様に基づいた機器を開発し、実用化する計画のようだ。
この仕様はFTTH(ファイバー・トゥ・ザ・ホーム)以外にも、FTTB(同・ビルディング)やFTTC(同・カーブ:電柱)といった光ファイバー網整備に対しても適用できるので、ITUから正式承認を受ければ国内外の関連メーカーも採用する動きが出てくるだろう。仕様の一般化による関連機器のコスト低減がなされれば、また一歩FTTH(高速通信網)整備へと進んだといえるだろう。
○米4大ネットのデジタルTV放送方式が決定
日経新聞11面には米4大ネットのNBCが5日、ラスベガスで開催中の世界最大の放送機器見本市「NAB98」(全米放送機器展'98)において、今年秋から開始するデジタル放送の規格を、走査線数が1,080本のHDTV(高品位TV)方式を採用すると発表したという記事が掲載されている。CBSは同じくインターレース方式のHDTVをすでに採用しており、ABCとフォックス・テレビはPCと相性の良い「プログレッシブ」と呼ぶ走査方式を採ることを発表している。
またNBCは「プログレッシブ」方式を推すマイクロソフトと協同でMS-NBCを運営しているが、当面NBC本体は放送機材の品揃えが良いインターレース方式でデジタル放送を開始すると書かれている。
これで米4大ネットが全てデジタルTV方式を発表したことになり、米FCC(連邦通信委員会)が承認した18のデジタルTV方式も、従来のTV放送方式の延長にあるインターレース方式と、PC寄りのプログレッシブ方式の2つに収束しつつあるようだ。
また昨年の同時期、NAB97の開催前にFCCがデジタルTV放送を1998年秋から開始させるという発表(97年4月4日号のNEWS
Watch記事参照)を行ってから、わずか1年しか経っていないのも驚きである。その短い間に米4大ネット全てが放送方式を決定するようなダイナミックなスピードを見るにつけ、今のアメリカの力強さ(好調さ)を感じてしまう。
余談その1:「ウィンドウズ・ベースト・ターミナル(WBT)」の出荷
日刊工業新聞8面と日経新聞13面&日経産業新聞5面、4月6日号のPCWatchには、NECや富士通などコンピューターメーカー11社が今夏にも、米MSが規格を提唱するネットワーク専用端末「ウィンドウズ・ベースト・ターミナル(WBT)」を出荷するという記事が掲載されている。WBTは大半の業務をサーバー側で処理するために端末の機能を絞っており、価格も5万円台にまでを抑えられると書かれている。
またシステムの総管理コスト(TCO)もPCと比較して約4割削減できるらしい。
シン・クライアントの考え方は、ネットワーク・コンピューター(NC)と似ているようだ。昨日のNEWS
WatchでもNC普及の遅れを指摘した記事を取り上げたが、このWBTについてもNCと同様に、アプリケーションなど動作ソリューソンの整備が普及のためには重要となってくるだろう。NCつぶしのため、というだけでは実用性が上がってこないと思われる。
余談その2:高精度ソーシャル情報フィルタリングシステム
日経産業新聞4面には、NECのヒューマンメディア研究所は個人の好みを絞り込んで、新着ホームページ情報を自動的に紹介するシステムを開発したという記事が掲載された。新方式は「高精度ソーシャル情報フィルタリング」と呼ばれ、ジャンルなどを登録後いくつかのホームページを紹介し、閲覧したユーザーは満足度を5段階で評価していく。システムは閲覧された各ページから多数の単語を拾い上げ、評価に応じてそれぞれに点数を付ける。これを毎日紹介するたびに繰り返して、数百~数千の単語と好みのデータベースを構築し、単語を手がかりに紹介するページを選ぶ精度を上げていくという。BIGLOBE上の新着HP情報提供サービスである「MY
PLAZA」で8日から、先着500人を対象に公開実験を行うようだ。
音楽などの嗜好を評価して、データベース蓄積していく米「ファイヤーフライ」なども、方向性としては同様なエージェント技術と言えるだろう。
次々と生まれてくるHPを個人で全てチェックするのは不可能に近いことなので、今後需要が増すネットサーフィン用ツールと言えるだろう。
余談その3:大規模イベント向けエージェント型情報システム
日経産業新聞2面には、NTTがインターネット上でイベントに関する情報を選
択して収集できる「大規模イベント向けエージェント型情報システム」を開発し、サービスを始めたという記事が掲載された。イベントに行く人ごとの興味に応じて、どんな展示を回ればいいか一覧表や展示品情報を提供するので、大規模な展示会など事前に多様な情報を入手出来、かつ効率的にイベントを回ることができるという。
このシステムは、来場予定者に事前に住所や氏名、年齢などを専用のホームページに記入して会員登録(登録料は無料)してもらい、登録者が自分の興味ある展示分野をホームページの画面上で指定する。すると、その興味に合致した展示を選び出して一覧表を作成し、どこにその展示があるか会場の地図を作成して表示する仕組みのようだ。
実際には今年7月に開催する「WINDOWS
WORLD Expo/Tokyo
98」向けに、「Active
Agent
Assist」という名称で4月3日よりサービスを開始している。出展製品情報は4月中旬から、ナビケ-ト機能は6月中旬から提供開始するとしている。
現在幕張メッセで開催されているCOMDEXで、当日会場をウロウロしてお目当てのものを探し回ってしまった方にしてみると、もう少し早いサービスインが望ましかったのでは...(^_^;)
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