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登大遊氏、高速化などを実現した次期バージョン「SoftEther 2.0」発表

~2004年夏季以降にベータ版をリリース。2004年末に正式リリース予定

 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が開催している展示会「IPAX Spring 2004」で13日、仮想VPNソフト「SoftEther」の開発者である登大遊氏がプレゼンテーションを実施し、SoftEtherの次期バージョン「SoftEther 2.0」の発表などを行なった。


SoftEtherは、公開後約半年間で145万件以上がダウンロードされる

ソフトイーサ社代表取締役社長登大遊氏
 登氏はSoftEtherの紹介として、レイヤ2をトンネリングすることにより、ほとんどのインターネットやLAN上を通過できるようになった点や、カーネルモード(NTカーネル)で動作するプログラムとして実装している点を特徴として挙げた。

 また、一般的に効率が悪くなるといわれている「Ethernet over TCP」を行なっているにもかかわらず、最適化を行なうことによって、実際の転送速度の60~80%を実現したほか、双方向でのバッファリングと再同期により、モバイルやADSLなどの比較的切れやすい環境でも“切れにくさ”を実現したという。

 このような“画期的”な機能を提供した結果、2003年12月の公開以来約6カ月間で、同ソフトのWebサイトのアクセス数は195万ページビューを達成したほか、ダウンロード数は145万1,178件に上ったとしている。


2GHzのCPUでCPU使用率が40~90%、メモリ使用量は100人同時接続時で80MB程度

 また、SoftEther初心者ユーザーが“お試し感覚”で接続するために用意した「実験用仮想HUB」を設置したことによって、さまざまなデータが得られたという。

 SoftEtherのダウンロード急増に比例して、実験用仮想HUBへのアクセスも急増し、具体的には、クライアント接続時にDHCPサーバーが配布するためのIPアドレス6万個が3カ月程度で終了し、4カ月間で9万個以上のIPアドレスを配布しているという。

 現在は、常時100~300のクライアントが接続している状態だが、2GHz程度のCPUでCPU使用率が40~90%(パケット数に比例)、メモリ使用量は100人同時接続時で80MBだという。

 実験用仮想HUBを運営して初めてわかったこととしては、ICMPパケットをランダムに大量送信するようなウイルス(Welchiaなど)のパケットを、複数のアルゴリズムで自動的に判別し、自動的に遮断できたという。また、一般的に「送信し過ぎない方が好ましい」とされるブロードキャストパケットは、ユニキャストパケット数の10分の1以下だったという。


実験用仮想HUBの動作状況。CPUが2.4GHz程度のマシンでも十分安定稼働が可能だという 実験用仮想HUBのトラフィック状況。着実にトラフィックが増加しているのがわかる

SoftEther 2.0は、通信速度の大幅な強化や大規模環境へ対応

 続いて現在開発中の次期バージョン「SoftEther 2.0」を発表した。SoftEther 2.0では、通信速度の大幅な強化のほか、大規模環境への対応やセキュリティの大幅強化、ユーザーからのフィードバックを活用して開発しているという。

 また、ソフトウェアのバージョン名称を変更し、現在の仮想HUBにあたるバージョンを「SoftEther VPN Server 2.0」、仮想LANカードにあたるバージョンを「SoftEther VPN Client 2.0」とする。さらに、SoftEtherにカスタマイズを施し、ハードウェアや他ソフトウェアへの組み込みを実現する開発用キット「SoftEther VPN Development Kit 2.0」を新たにラインナップに加える。


VPNセッションの負荷分散により大規模への対応や、既存認証にも対応へ

 SoftEther VPN Server 2.0では、1台のサーバー上で複数の独立した「仮想HUB」を起動可能になったほか、管理ツールの強化として現在テキストベースの管理画面をGUIからも可能とするという。また、スクリプトによる管理の自動化や管理用ライブラリの提供も予定している。

 また、VPNセッションを負荷分散することにより大量の同時接続ユーザーをサポートし、大規模接続を可能にするほか、現在のID・パスワード認証に加えて、既存のRadius認証やActive Directoryにも対応し、認証およびセキュリティを強化する。

 クライアント側のSoftEther VPN Client 2.0では、主に高速化を図るほか、現在1個しかインストールできない仮想LANカードを複数インストール可能にするとしている。


開発コード名“Hyper”プロトコル採用で高速化を実現

 通信の高速化では、現在開発中のプロトコル「開発コード名:Hyper」を採用することにより、TCP/IPセッションのみでトンネリング通信速度の向上を実現。実験では、現在の転送速度(実際の転送速度の60~80%)を、おおむね80%にまで向上することに成功しているという。

 開発者向けのSoftEther VPN Development Kit 2.0では、SoftEther 2.0をカスタマイズするために、ソースコードやドキュメントを提供する。これにより、ほかのプラットフォームやハードウェアへの組み込みも可能になるという。開発キットは、今後SoftEtherと提携する各企業へ提供する予定だとしている。

 なお、対応プラットフォームは、サーバー版がWindows Server 2003/XP/2000/NT 4.0、Linux、各種BSD、Mac OS X。クライアントでは、Windows Server 2003/XP/2000、Linux、各種BSDを挙げたほか、各種BSDを挙げたほか、Mac OS Xへも対応したいと語っている。


「SoftEther 2.0」のラインナップ。開発者向けバージョンなどが追加され、4種類に増える予定だ 新プロトコル「開発コード名“Hyper”」採用による通信速度向上をグラフ化したもの

2004年夏季以降にベータ版をリリース。2004年末に正式リリース予定

 また、SoftEther 2.0では、当初より無償版の「Standard Edition(仮称)」と有償版の「Enterprise Edition(仮称)」に分別してリリース予定だ。

 「Standard Edition(仮称)」はバージョン1と同様に、主に個人向けとして無償配布/サポートする。「Enterprise Edition(仮称)」は、SoftEther CAの次期バージョンとして、大規模環境対応やセキュリティ強化を図り、主に商用としてリリースする予定だ。


「SoftEther VPN Development Kit 2.0」の特徴 SoftEtherの開発ロードマップ

関連情報

URL
  IPAX Spring2004
  http://www.ipa.go.jp/event/ipax/spring2004/
  関連記事:VPN構築ソフト「SoftEther」関連記事インデックス
  http://internet.watch.impress.co.jp/static/index/2004/03/04/softether.htm

関連記事
登大遊氏ら、SoftEtherをデモンストレーション~13日には「2.0」を発表(2004/05/11)


( 大津 心 )
2004/05/13 18:31

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