Web Application Securityフォーラム事務局が開催したコンファレンス「Web Application Securityフォーラム」では、KDDI技術開発本部情報セキュリティ室長中尾康二氏が「情報セキュリティに関わる戦略、および標準化」と題した基調講演を行なった。
● 携帯電話も数年以内には、ウイルスや不正アクセス被害の対象となるだろう
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KDDI技術開発本部情報セキュリティ室長中尾康二氏
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中尾氏は、まず「ITネットワークへの依存が高まっているが、それに比例してセキュリティ被害も深刻化している」と指摘。守るべきものを明確化しなければ、守ることも難しいとし、「守るべきものは情報資産である」であると認識しなければならないと強調した。具体的な情報資産には、経営戦略や人事情報、個人情報などを挙げ、これらの情報資産が不正アクセスやウイルスの攻撃対象となっていると語った。
また、情報資産の多様化に伴い、脅威も多様化していると分析し、「携帯電話も今後数年以内に、ウイルスや不正アクセスなどの脅威の対象に確実になるだろう。すでにKDDIでは、それに対応するための研究を進めている」と説明した。
● 脆弱性を数値化すると
“情報セキュリティの確保”に関しては、「機密性」「完全性」「可用性」の維持が必要であるとしたほか、“リスク値”を定量化するための方法として、以下の方程式を示した。
「リスク値」=「重要度」+「脅威レベル」+「脆弱性のレベル」
また、ウイルス「Sasser」の例などのように、脆弱性が発見されてから実際に脅威(ウイルス等)が発生するまでの期間が14日に短縮されてきていることから、“脆弱性の数値化”に関する方程式も示した。
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“脆弱性の数値化”に関する方程式
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これらの方程式を応用することにより、リスクや脆弱性を数値化可能となり、情報性セキュリティ確保に利用可能だとしている。
● “インターネットセキュリティ対策推進協議会”を7月に設立
中尾氏は「脆弱性発見からウイルス発生までの期間短縮や、パッチ適用の不徹底が一般ユーザーでは特に多い」と分析していることから、脅威は増していると警告。さらに、脆弱性公表時の説明文の多くが難しく、一般ユーザーが理解しづらい点や、伝達手段や相談窓口の不備を指摘した。
特に脆弱性情報の公開方法に関しては、「現状は、意識ある人は情報公開に気付き、内容も理解できるが、一般人は『公開されたことにも気付かないし、内容も分からないまま』」であると分析。メディアやISPなどが連携し、現在セキュリティ意識が低いユーザーに対しても、情報発信していく必要性を訴えた。
これらを踏まえて、Telecom-ISACやISP、システムインテグレータ、販売店などをメンバーとする「インターネットセキュリティ対策推進協議会」を7月に設立し、9月にサービス開始する予定だという。同協議会は、一般ユーザーに対して、脆弱性情報などを正確に・早く・わかりやすく提供することを目的として、メールやWebサイト上にてPush形式で配信していく予定だとしている。
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「インターネットセキュリティ対策推進協議会」の概念図
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インターネットセキュリティ対策推進協議会の組織化スケジュールなど
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● ガイドライン化を推進し、セキュリティマネジメントの確保を重視
インターネットセキュリティ対策推進協議会の設置に加えて、IPAを中心とした「脆弱性情報受付窓口」の設置や、Telecom-ISACの「マルチレイヤ監視システム」「IDSログ分析支援システム」「トラフィック異常レスポンスシステム」「ISP連携によるIPトレースバックシステム」を計画・推進していると発表。これらを組み合わせることによって、緊急時には早急な情報収集・配信が可能になると解説した。
また中尾氏は、最後に“提言”として「とにかくガイドライン化を推進することが重要だ。基盤系やプラットフォーム系は国の研究期間に任せ、民間では情報セキュリティマネジメントやアプリケーションセキュリティの確保を最優先に挙げるべき」と語り、講演を締めくくった。
関連情報
■URL
Web Application Securityコンファレンス
http://www.wasf.net/conference.html
( 大津 心 )
2004/05/25 18:28
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