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(向かって左から)宮崎緑氏、徳田潔氏、江嵜正邦氏、古河建純氏、中尾哲雄氏
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社団法人テレコムサービス協会の設立10周年記念フォーラムが15日、東京都内のホテルで開催され、「ネットワーク社会・10年後の展望」と題したパネルディスカッションが行なわれた。
パネルディスカッションでは千葉商科大学助教授の宮崎緑氏がコーディネーターを務め、10年後のネットワーク社会の予測や問題点、そのために今取り組むべき課題などを各パネリストがコメントした。
総務省総合通信基盤局電気通信事業部長の江嵜正邦氏は、6年後の2010年には政府の進める「u-Japan」計画も終わり、地上デジタル放送が各世帯に導入、IPv6も普及しているとした上で、その先のイメージとして、匂いなども伝える五感通信などにより「生身のコミュニケーションに近づいているのではないか」と指摘した。
ニフティ代表取締役社長の古河建純氏は、IT業界では「来年のこともわからないのに、10年先の予測は絶対に当たらないことは確か」だとして、あくまでも今後の傾向として、消費者が情報を発信するブログのようなメディアにより「情報の“主権”が消費者に移る」と指摘。通信事業者としては、「コンシェルジェ」のような、消費者サイドに立ったサービスを考えていくべきだとした。
古河氏はまた、「ニフティは個人情報をいっぱい持っている。これを活用すれば、サービスはよくなる。個人情報の管理はたいへんだが、個人情報を活用して(個々の利用者に)サービスを最適化することが我々の役目だ」とも述べた。
テレコムサービス協会会長の中尾哲雄氏は、今のメールについて、顔が見えず、筆跡もわからず、声も聞こえないことで誹謗や中傷を引き起こすことになっていると分析。「通信としては過渡的な、現実から離れた便宜的なもの」に過ぎないとの考えを示し、倫理や法律を整備する方向へ進むことに期待を寄せた。また、「アジア英語」のような、ネットワークでコミュニケーションする際に使うアジア共通の「通信の言葉」が確立されることにも期待しているという。
慶応義塾大学教授の島田春雄氏は、これまでのITが企業に貢献したきたのに対して、今後は「生活者ソリューションが出てくる」という。例えば、医療機関が診療情報をネットで流し、患者がこれを閲覧できるようにしたり、逆に患者側から健康状態などの情報を流し、それに応じてサービスを受けられるようにするなど、「双方が発信する社会」によって既存の社会の枠組みが変わると説明する。
ただし、それには個人情報の取り扱いの問題を解決しなければならず、技術面では可能であっても、法制度が障害になるという。IT業界に対して、「技術開発の何倍も、制度改革に努力すべき」と提言し、それでこそ「技術開発が本当に人々のメリットになる」と強調した。
チャットや掲示板、メールなどによって現実社会とは異なる社会がインターネット上に形成され、それがトラブルや犯罪を引き起こすという影の部分も指摘されていることについて、日本経済新聞社編集局産業部長の徳田潔氏は、「10年後に新しいネット社会ができること」に対しては楽観的な見方を持っているという。ただし、ネット社会が起因となる問題については、「旧来のルールの応用で解決できるとは限らない。ネット社会学が必要」と指摘した。
関連情報
■URL
フォーラム概要
http://www.telesa.or.jp/telesa10/index.htm
( 永沢 茂 )
2004/06/15 19:32
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