CATV業界の年に一度の総合展示会「ケーブルテレビ2004」が、東京・有明の東京ビックサイトにて6月23日から25日の3日間にわたり開催されている。
今年存在が目立ったのは、地上デジタル放送に対応したCATV用のセットトップボックス(STB)。パナソニックの地上デジタル対応STBである「TZ-DCH500」や、パイオニアの「BD-V375」(参考出品)、マスプロ電子の「DST22」など多数が出展された。
● STBによるビデオオンデマンドを実現するシステム
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パナソニックの「TZ-DCH500」
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TZ-DCH500の画面。左中央に「ビデオオンデマンド」のメニューも
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パナソニックブースでは、同社のSTB「TZ-DCH500」とケーブルモデムを利用して、CATVによるビデオオンデマンド(VoD)を実現するシステムのデモを行なっていた。
このシステムは、コンカレント日本が開発したもので、ソフトウェアをVoD対応に改修したSTBによって映像伝送の指示をケーブルモデム経由でVoDサーバーに送信、VoDサーバーがそれを受けてスクランブルをかけた映像信号をCATVの空きチャンネルを利用して伝送する方式だ。この方式は映像伝送にTCP/IPを使用しないため、不正コピーなどに強いというメリットがあるが、一方で同時に映像を見られる最大ユーザー数が空きチャンネル数に左右されるという問題がある。
会場のスタッフによれば、「VoDサーバ自体は数百人単位のアクセスにも耐えられるようにできているが、チャンネル数の問題から同時に収容できるユーザー数は数十人程度になってしまうのではないか」としている。一方で、ジュピターテレコム(J-COM)が2004年度中に実施する予定のVoDなども、「今回出展されたシステムに近いものになる」と見られており、果たしてIPベースのVoDとどちらが市場の支持を得られるか、注目する必要があるといえそうだ。
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VoDのメニュー画面。今回はデモのため「グルメ」以外は利用できなかった
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番組選択画面
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● パイオニアの「BD-V375」はパススルー・トランスモジュレーションの両方式に対応
パイオニアでは、同社のハイエンドSTB「BD-V2TC」の後継機種となる「BD-V375」を参考出品。従来機種では、地上デジタル放送に関してはパススルー方式もしくはトランスモジュレーション方式のどちらか一方しか対応していなかったのに対し、BD-V375では、同時に使えるのはどちらか片方のみとはいうものの、パススルー・トランスモジュレーションの両方式に対応可能だ。また、今回の展示された試作機には装備されていないが、製品ではEthernet端子も標準装備する予定だという。発売は年末を予定しているとのこと。
このほかマスプロ電子では、ミツミ電機製でインターネット経由での映像配信に対応する「IP-STB」を参考出展していた。こちらはMPEG-1/2/4で圧縮されて、TCP/IPで伝送されたストリーミング映像を通常のテレビで再生できるものだが、残念ながら今のところハイビジョンクラスの映像の再生には対応していない。こちらも年末ごろの発売を目指すほか、今後WMV9やH.264などの圧縮方式やハイビジョンへの対応も図っていくという。
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パイオニアの「BD-V375」
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● CATVのフルFTTH化に向けた動きは一歩後退
なお、昨年多くのブースで出展されていた、PON(Passive Optical Network)を利用したFTTHシステムや、光波長多重(WDM)を利用して光ファイバ1芯で映像と通信の上り・下りデータを伝送するシステムなどは今年はやや低調で、CATVのフルFTTH化に向けた動きは一歩後退といった印象を受けた。
同展示会は25日まで開かれるほか、24日にはCATVの技術や経営に関する問題を取り扱う分科会が、25日にはCATV業界で働く女性を対象にしたレディスフォーラムが開催される。
関連情報
■URL
ケーブルテレビ2004
http://www.catv-f.com/
( 松林庵洋風 )
2004/06/23 21:11
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