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10GBase-TやIEEE802.11nなど次世代標準規格の最新動向を解説


 Networld+Interop Tokyo 2004(N+I)の最終日となった2日には、「IEEE802委員会のホットトピックスII」と題されたセッションが行なわれた。昨年のN+Iに続き2回目の開催となる同セッションでは、最近話題の10GBase-TやIEEE802.11nなど、次世代の標準規格に関する最新動向を中心に、現在IEEE802委員会で話し合われているトピックスの概要が解説された。


日立電線の瀬戸康一郎氏(左)とNTTアクセスサービスシステム研究所の井上保彦氏(右)
 まず前半は日立電線の瀬戸康一郎氏から、Ethernetなど有線系技術の最新動向が報告された。同氏は冒頭で過去のEthernet規格の進化について触れた上で、「1990年から2002年までの12年間で、Ethernetは10Base-Tから10Gbit Ethernet(10GbE)へ1,000倍の高速化を達成しているが、スピードアップはそろそろ一段落しそうだ」と述べた。同氏によれば、10GbEの次のステップとしては100Gbps、もしくは40Gbpsぐらいへの高速化という案が有力なものの、現時点で具体的な標準化に向けた作業は「機が熟していない」とのことで行なわれていないという。このため、現在IEEE802委員会の中での議論は10GbEの応用範囲を広げる方向の話題が主となっている。

 瀬戸氏はその上で現在の10GbE市場について、「昨年は全世界で出荷数が6,000ポートという結果になったが、(N+Iの)会場だけでも10GbEが1,000ポートぐらいは集まっていることを考えると、この数がいかに少ないかがわかる」と述べた。調査会社の予測では、10GbE製品は今年47,000ポートの出荷が予想され、2008年にはスイッチ市場全体の1%程度を10GbEが占めるようになるというレポートが出ているという。しかし、現在の市場の主流は10GBase-LRを始めとするシングルモードファイバ(SMF)を利用した製品であるため応用範囲に限界があると瀬戸氏は語り、SMF以外の伝送媒体を使った10GbEの規格化の重要性を訴えた。


Ethernetのスピードの変遷 10GbEポートの出荷数予測

GbEにおける光伝送と銅線伝送のポート数の推移 10GBase-Tに対して出されている主な提案

 その中でも注目は、やはりツイストペアケーブルを利用して10Gbps伝送を実現することを目指している「10GBase-T(IEEE802.3an)」ということになるが、当初の予定では今月にもドラフトの1.0版が公開予定だったものの、「規格提案の乱立状態が解消せず、ドラフトの公開時期は流動的になってきた」とのこと。現在のところ、規格提案としては「産総研と日立が提案する方式はOFDMを使う点が敬遠され、やや旗色が悪いが、それ以外の提案はほぼ横一線」だとして、「今のところ8~12値くらいの多値変調(PAM)とLDPC方式を組み合わせる案が有力だ」と語った。

 瀬戸氏は10GBase-T規格化の背景として、いわゆる“ギガビットイーサネット”における2003年第3四半期以降のポート出荷数で、伝送媒体に光を使うものを銅線を使うものが逆転したということで「いずれ10GbEも同じ道をたどるのではないか」との考え方があるという。ただ問題もいくつかあり、現時点で最大の問題は消費電力。今のところ1000Base-Tのポートあたりの消費電力が1W未満なのに対し、10GBase-Tで提案されている各社の方式ではポートあたり8~12W程度の消費電力が発生してしまうという。今後これをどこまで下げられるかが勝負になるとの見解を瀬戸氏は示していた。

 またケーブルについても、既に10GBase-Tでは現在一般的なカテゴリ5/5eのケーブルには対応しないことがほぼ決まっているが、最近新たにカテゴリ6とカテゴリ7の中間に「カテゴリ6e」を規定しようという動きが出てきているとのことで、これについても図を使った説明があった。


消費電力の比較。10GBase-Tは10GBase-CX4と比較しても消費電力の高さが目立つ ケーブル規格の比較。カテゴリ6eではカテゴリ6ケーブルの外周に薄いシールドをかぶせた形となる

 これ以外には、いわゆる「FDDI Grade」のマルチモード光ファイバを使って10GbEを実現しようという「10GBase-LRM(IEEE802.3aq)」や、10GbEをブレードサーバー等のバックプレーンに利用することを狙った「IEEE802.3ap」の標準化が現在進んでいるほか、Ethernet以外ではかつてのFDDIのようなリング型トポロジで高速ネットワークを構築できる「RPR(IEEE802.17)」の標準化が最近完了し、現在RPRと他のLAN方式との間のブリッジングを行なうための「IEEE802.17a」の検討が進められているなどの説明があった。


IEEE802.17の概要 パケット伝送時のイメージ

IEEE802.11nは9月からいよいよ実質審議入り

IEEE802.11nの標準化の状況
 続いて後半はNTTアクセスサービスシステム研究所の井上保彦氏が、IEEE802.11を中心とした無線系プロトコルの標準化状況について説明した。

 この中で最も注目されるのが、やはり次世代の無線LANプロトコルとして開発が進められている「IEEE802.11n」だろう。同方式については「20MHzの帯域幅で、MAC層とPHY層の中間で測定した実効スループットで100Mbps以上を目指す」という大目標が知られているが、井上氏は「やはり関心が高いせいもあってか、常時会合の参加者が100~200人を数えており、それぞれ皆自分の言いたいことを言うのでスタートラインにたどり付くまでが長かった」と述べ、いわゆる要求仕様の取りまとめに非常に時間がかかったことを明らかにした。

 ただ、なんとかその取りまとめも完了。5月17日にはCall For Proposalのアナウンスを行なったことから、ようやく具体的な各社からの提案を受け付けられるようになり、「9月には各社からの提案のプレゼンが始まる見込み」という。具体的にどんな提案が出されるかはまだわからないということだが、今のところPHY層ではMIMO(Multiple Input Multiple Output)の採用や帯域幅の拡大、MAC層では複数のEthernetフレームからデータグラムを取り出して1個の大きなフレームに再構築してから伝送を行なう「Frame Aggregation」、データフレームをバースト転送して、それに対する応答(ACK)を1個のフレームでまとめて行なう「Block ACK」といった技術が提案されるのではないかと井上氏は予想した。


PHY層として提案されそうな技術 MAC層として提案されそうな技術

 時間の都合上、802.11系以外の無線プロトコル(IEEE802.15:UWBやZigBee、IEEE802.16:WiMaxなど)についての説明はほとんど省略されてしまった。しかし、IEEE802.20について2002年末にワーキンググループが発足したものの、「元となるものが何もないため議論の進展が全然見られなかった」と井上氏は述べたほか、UWBについても「スペクトラム拡散派とMultiband OFDM派の対立が依然として解消せず、デッドロックが1年以上続いている」と述べるなど、あちこちの標準化グループで議論の膠着状態が続いている様子がうかがえた。


関連情報

URL
  NetWorld+Interop 2004 Tokyo
  http://www.interop.jp/


( 松林庵洋風 )
2004/07/05 18:11

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