9月2日~3日にかけて、東京・港区の新高輪プリンスホテルで「2004東京国際デジタル会議」が開催されている。初日の2日はソニー・東芝・三洋電機など日本の大手電機メーカーの首脳が講演を行ない、デジタル化・ネットワーク化が世界的に進展する中で各企業がどのように自らの強みを生かしていくか、各社の戦略を披露している。
講演に最初に登場したソニーの出井伸之会長兼CEOは、「ソニーはホームとモバイルの会社」と語り、AV家電や携帯電話などのモバイル機器と、同社が持つ音楽・映像などのコンテンツをネットワークを介して結びつけることで、将来的な発展を目指す姿勢を鮮明に示した。
出井氏はまず、IT業界で頻繁に登場する「ギルダーの法則」「ムーアの法則」「メトカーフの法則」「収穫逓増の法則」の4つの法則を引き合いに出し、「現代はこれらの法則が掛け算になっており、そのために変化が一度に起こるようになっている」と指摘。「ゴルフで14本のクラブをどのように組み合わせて使用するかを考えるのと同じで、ビジネスモデルを考える際にどのように法則を組み合わせるか考える必要がある」と述べ、「ITバブルのころはよくアナリストがこれらの法則を語っていたが、今になって我々の間でこれらの法則が非常に身近なものになっている」と、経営者にとってその重要さが増している様子を語った。
一方、エレクトロニクス製品の変化について、出井氏は「これまで(スタンドアロンの)AVの分野で日本企業は強かったが、AV機器やIT機器がネットワークにつながってくることで、家庭向けにはいわゆる情報家電、そしてモバイルでは携帯電話などのいわば『情報個電』とでも言うべきものが重要になってくる」と述べ、「テレビのブラウン管が液晶になっただけでは不十分で、これがネットワークにつながることで初めて情報家電と呼べる」「携帯電話は既にネットワークにつながっており、情報個電の資格を満たしている」として、今後これらの分野にソニーとして力を入れていく方針を示した。
また、「以前はビジネスの中心が欧米だったためにソニーのヘッドクォーター(本社)が東京にあることが不便でならなかったが、最近はビジネスの中心が中国やロシア・インドなど日本から時差の少ないところに移ってきている」と、日本の立地条件がこれからはビジネス面で有利になる可能性が高いとの認識を示したが、一方で「労働集約型産業で中国やインド、資本集約型産業で欧米と比べて日本は劣る」とも述べ、「日本の生きる道は知識集約型産業にある」と語った。
今後の方向性については、「ソニーが得意なのはコンシューマ製品であり、今後もその軸をはずすことはない」「キーデバイスも重要だが、最も大事なのはあくまでアプリケーションであり、そのために必要な範囲でキーデバイスを内製する」と述べた上で、「これらの製品がネットにつながってコンテンツと融合していく」と訴えた。出井氏は、「例えば『スパイダーマン』の映画は1作品で1,000億円規模のビジネスになっているが、このようにコンテンツやイベントが持つ力はものすごい」として、ソニーと関連会社が保有するコンテンツの力を使ってソニーのハードを世界に広げていく考えを鮮明にした。
出井氏は最後に、「現在日本国内で(ソニーの売上が)2兆3,000億円あるうち、既に1兆円はサービスとコンテンツが占めている」と述べた上で、「次のコンバージェンスに一歩を踏み出すべき時期に来ている」と語ったが、しかし「(今のソニーは)いわば類人猿から二歩足でよちよち歩きをし始めた段階」とも述べ、ソニーの変化には今後かなりの時間がかかるとの見解も示した。そして「ソニーは“Like No Other”を目指す」として、「そのための改革はつらいけれども、日本発、東京発のグローバル企業として努力していきたい」と講演を締めくくった。
関連情報
■URL
2004東京国際デジタル会議
http://nb.nikkeibp.co.jp/digital/
( 松林庵洋風 )
2004/09/02 15:36
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