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放送のデジタル化はどこまで進んだか~地上デジタル放送の現状


 CEATEC JAPAN 2004では、ユビキタス社会に関するさまざまな講演が行なわれている。6日午後には、総務省 情報通信政策局 放送政策課 課長補佐の池田 満氏による特別セッション「ユビキタス時代における放送のデジタル化」が開催された。地上デジタル放送の行方を主要テーマに、チューナー普及度の解説を行なっている。


地上デジタルは順調に進捗~アナ・アナ変更も完了前倒しの予想

総務省 情報通信政策局 放送政策課 課長補佐の池田 満氏
 講演の前半では主に、地上デジタル放送の普及進捗度合いに関する現状分析が行なわれた。地上デジタル受信機器の出荷台数は、2003年12月1日の放送スタート段階で約33.1万台。これが2004年8月には、134.6万台にまで拡大したという。

 受信機器数の拡大については、特に薄型・大画面のテレビの人気によるところが大きいという。池田氏によれば、「商品としての人気も高く、地上デジタルチューナーを標準で搭載していることが多いため、受信機器数の総計を大きく底上げしている」。今後は20インチ以下の、比較的小さな画面の薄型テレビにも地上デジタルチューナーを搭載させることが課題だと述べた。

 地上デジタル放送の受信には、対応機器だけでなく、利用場所が放送エリアに入っていることが必須となる。放送開始前の段階では、視聴可能世帯数(アンテナ・チューナーなどを用意すれば、すぐに地上デジタルを受信できる世帯)は約1,200万世帯。これが、現在では9月に行なった電波の増力によって1,440万世帯程度に広がった。

 また、デジタル放送のエリア拡大を行なうには、どうしても「アナ・アナ変更」と呼ばれる、周波数対策を先に完了させる必要がある。こちらも進捗は順調で、当初2010年頃と予想されていたが全地域での対策完了が、現在の予想では2007年頃と3年ほど前倒しになる見通しが立っているという。

 このほか、CATV業者による地上デジタル放送の再送信が増えていることも特筆すべき点だという。CATVでの再送信サービスを利用すれば、電波到達エリア外でも地上デジタルを視聴できる。池田氏によると、こちらの視聴可能世帯数は9月末の段階で、約980万世帯に及ぶ。


普及に向けて、デジタルならではのサービスが重要に

三洋電機が発表した、地上デジタル放送受信対応の携帯電話。QVGA(320×240ドット)表示、15フレーム/秒のH.264動画デコードに対応する
 講演の後半で池田氏は、「ここまで(地上デジタルは)順調順調と言ってきたが、全国の総世帯数は約4,800万。普及にはまだ遠い。ハードルは決して低くない」として楽観できる醸成にはまだないという認識を示した。「今後はより一層、地上デジタルによる利便を利用者層にアピールする必要がある。そのためには、デジタルならではの高度なサービスを訴えていかなくては」と述べた。

 その例として挙げられるのがデータ放送だという。大阪のよみうりテレビでは電車の時刻表や経路探索機能を情報番組と同時に配信するサービスを開始。名古屋テレビでも、試験的にではあるが地図配信サービスを開始するなど、具体的なサービス事例も出てきている。

 また、データ放送を使って地域の行政情報などを配信する試みが、大阪府豊中市や岐阜県岐阜市で始まった。岐阜市の場合ではデータ放送によっていったん情報の表示を行ない、そこから公共施設の予約などを選択すると、シームレスにインターネットへ接続するという流れを実現させたという。

 データ放送と並んで、携帯用小型端末での地上デジタル放送の受信にも期待がかかる。三洋電機によって携帯電話一体型の試作機も開発されており、2005年中の実用化が見込まれている。「日本のデジタル放送方式である『ISDB-T』は、テレビ以外の端末にも放送が容易な方式。欧州方式では仕様上難しく、まさに日本ならではのサービスになるだろう」という。

 最後に池田氏は、「デジタル放送は感動を増す道具として、視聴者の理解を得られると思う。そして民間の皆さんの力で、官僚が発想できなかった新しい利用法も生まれている。我々も日本ならではの多様性のあるサービスの実現に努力する」と、民間の活力に期待をかける言葉を述べ、約1時間の講演を終えた。


URL
  CEATEC JAPAN 2004
  http://www.ceatec.com/
  地上デジタルテレビ対応携帯電話試作機ニュースリリース(三洋電機)
  http://www.sanyo.co.jp/koho/hypertext4/0409news-j/0929-1.html


( 森田秀一 )
2004/10/06 21:16

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