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高まるDRMの重要性〜コンテンツビジネスと著作権


 CEATEC JAPAN 2004・3日目となる7日は、マイクロソフト日本法人で法務本部長を務める弁護士の水越尚子氏が「高まるDRM(Digital Rights Management)の重要性と法的課題」と題し、昨今話題のデジタルコンテンツの不正コピー問題とそれを防ぐためのDRM機能のバランスについて、法的観点からの考察を披露した。


著作権が利用権化する中で、DRMはユーザの利用を柔軟にコントロールできる

マイクロソフト日本法人で法務本部長を務める弁護士の水越尚子氏
 まず水越氏は、PC用のソフトウェアと音楽パッケージを例に著作物の流通形態の変化を解説。ソフトウェアについてはかつて主流だったいわゆるパッケージ販売から、企業などを中心としたボリュームライセンス契約、ネット上からのダウンロード販売、そしていわゆるASP(Application Service Provider)としてネット上でサービス提供を行なうという形に販売形態が移行してきていることを挙げた。「ユーザー側はダウンロード販売の時点でもはや『物を買っている』という意識はなく、ASPに至ってはソフトを複製しているという意識すらなく、完全に利用に主眼が置かれている」。

 音楽ソフトについても、最近はCD等のパッケージ販売だけでなくネット上での音楽配信サービスが普及しつつあることから、ソフトウェアと同様の変化が起こってきていると水越氏は指摘する。「音楽配信サービスでは、ユーザーは『いくつ複製できた』というよりは『今日は何曲聞けた』という点を重要視している」。

 そのような状況下において、水越氏は「これまで著作権というと『複製がどう行なわれるか』が基本だったが、最近は利用という点に重要性がシフトしていることは否めない」と述べた上で、DRMはそのようなコンテンツの利用に際してユーザーにどのような形での利用を認めるかを柔軟に設定できるのが最大のポイントだと語った。

 水越氏は「(デジタルコンテンツに)DRMを付したもともとのインセンティブは、不正コピーがはびこらないということがメイン」と述べつつも、例えばDRMを使うことで期間や回数を限定した再生許可、ポータブルデバイスへの転送回数などの制御が行なえるほか、パッケージメディアが破損した場合にもDRMを利用すれば無償でメディアの更新を行なうといったユーザーの救済が可能になるなど、ユーザーにとってもDRMはメリットがあるとの考え方を示した。

 このほか、DRMの利点として水越氏が挙げたのが「市場の状況の変化に合わせて、後から権利内容の変更が可能」な点だ。水越氏は、「今日のビジネスモデルが明日の消費者シナリオに合うとは限らない」と述べ、新たなコンテンツベンダーが市場に参入した際に、既存ベンダーはそれに合わせて既存ユーザーに対し、DRMによる権利内容を変更するといった形で対抗することも可能だと説明。その際にベンダー間でどのようなライセンスを付与するかといった競争が起こることが十分に考えられるとの見解を語った。


法的にはコピーガードやDRMはどのように位置づけられるか

 ここで水越氏は、法的側面から既存のコピーガード技術やDRMが現行法上どのように位置付けられるかの説明に移った。

 まず日本の現行著作権法上では、SCMSやCGMSに代表されるコピー回数に制限を加えるようなタイプのコピーガードを「技術的保護手段」と定義し、これを勝手に無効化・回避してコンテンツをコピーするような行為はたとえ私的複製の範囲内であっても著作権侵害に当たる(第30条1項2号)と解説。またそのような回避を行なう装置やソフトウェアを販売することや、商売として回避を行なう行為には刑事罰も規定されている(第120条の2)と説明した(単に個人が無効化を行なうだけなら、民事上の権利侵害に当たることはあるが刑事罰はないという)。

 この背景として水越氏は、「かつては私的複製は零細なものだと考えられていたため、複製を認めるのが一般的な考え方だったが、今や私的複製自体を零細なものと認めない考え方が主流となりつつある」と述べた。

 これに対し、現行著作権法ではアクセスコントロールに関する規定は存在しないことから、BS・CS放送にかけられているスクランブルやDVDのCSS暗号化を回避するような行為は著作権法上は違法ではないという。

 しかし、これらについては不正競争防止法において、アクセスコントロールを含めた技術的制限手段の回避を行なう装置やプログラムの提供行為が不正競争行為と位置付けられており(第2条1項10・11号)、それによって営業上の利益を侵害した場合は差止請求や損害賠償の対象になる(第3条・第4条)と解説した。

 これについては、「管理技術と回避技術のいたちごっこを防ぐための規定」と述べつつも「あまり管理技術に強力な保護を行なうと、管理技術の開発意欲の阻害にもつながる」として、過度に強力な保護を行なうべきではないとの考えを示した。

 しかし、昨今著作権を巡る環境は著しく変化していることから、水越氏は「今後アクセスコントロールについても、著作権法上での保護を行なうよう再考される可能性は十分にある」と述べ、アクセスコントロールを回避した安易なコピー行動に釘を刺すのも忘れなかった。


 一方DRMについては、現行法上は著作権というよりはベンダーと消費者の間の契約行為として説明されると語った上で、コンテンツの販売時などにライセンス条項が表示され、それに画面上で同意した場合に契約が結ばれるとする「クリックラップ契約」の有効性をどうとらえるかという問題になると説明した。

 この点について経済産業省が公表している「電子商取引等に関する準則」は、オンラインでライセンス契約が明示され、契約内容に同意の上購入ボタンをクリックした場合などに契約が成立したと判断される“可能性が高い”といった程度の記述にとどまっていると水越氏は述べた。

 水越氏は「ユーザー側から『内容に納得いかないから(ライセンス契約を)変更してくれ』とは実際問題として言えない」と指摘しつつも、伝統的には電気通信分野などにおける約款と扱いは同じになると考えられ、過去に「特に約款に従わないという意思表示を行なわない限り、内容の知・不知に関わらず約款に拘束される」という判断が下った判例もあると述べた。もちろん消費者契約法などとの関係で、ユーザーが同意の旨のクリックをしたからといってライセンス契約の条項が有効にならない場合があることを認めつつも、「仮に契約が無効となるとビジネスが非常に不安定になるため、法的安定性の確保に向けた努力が必要」と語った。

 このほかWIPO著作権条約や米国のDMCA(デジタルミレニアム著作権法)などについても説明を加えた上で、水越氏は「著作権の範囲やフェアユースの範囲は長い期間をかけてバランスを取ってきたものであり、そのバランスを安易に動かせばいいというものではない」と述べ、権利者と利用者の間でこれまで保たれてきたバランスを今後も維持するためのコンセンサス作りが重要だと語った。

 一方で「いつまでも現行法で新たなビジネスモデルに対応できるわけではないし、ネットの特性上日本だけが独自の方針を取るわけにもいかないので、世界的なコンセンサスや技術の進歩に合わせた再検討が必要」だとして、時代に合わせた著作権法の再検討の必要性にも言及して講演を終えた。


関連情報

URL
  CEATEC JAPAN 2004
  http://www.ceatec.com/


( 松林庵洋風 )
2004/10/08 14:57

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