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マイクロソフトの古川享氏
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東京国際フォーラムで開催されているGlobal IP Business Exchangeでは16日、マイクロソフトの最高技術責任者を務める古川享氏などが参加した、デジタル情報家電に関する技術と市場の最新動向をテーマとしたカンファレンスが行なわれた。
カンファレンスではまず、マイクロソフトが進めるデジタル家電への取り組みについて古川氏が解説。デジタル家電の相互接続に関する標準設計ガイドライン「DLNA」(Digital Living Network Alliance)にボードメンバーとして積極的に関与しているほか、Windows Media Videoを「VC-1」として標準化することで次期DVDに採用が決定したことなどを紹介し、デジタル家電においては共通のフォーマットやプロトコルの上で、共通のサービスやコンテンツが利用できることが重要であるとして、マイクロソフトも積極的に規格の標準化に取り組んでいくという姿勢を示した。
サムスンエレクトロニクスのビュン・チャン・カン氏は、サムスンが考えるデジタルホームネットワークの将来像を紹介。これまではネットワークのパイプを太くすることが課題だったが、インフラの整備により今後はそのパイプに何を流すのかが課題になっており、ネットワークの高速化・広帯域化はネットワーク家電に求められるものも変えてきたとした。家電そのものが高機能化するのではなく、高い機能を持つサーバーや機器にネットワーク経由でアクセスすることで様々なサービスを受ける方向にシフトしていくだろうと語った。
東芝の石原淳氏は、デジタルコンテンツの配信技術についての現状を解説した。普及が進むデジタルホームネットワークでは、商用コンテンツを家庭内の各所で楽しめる環境が整っているが、一方でコンテンツプロバイダーはコンテンツ保護の方式が確立されない限りは流通を認めようとしないという背景を説明。コンテンツプロバイダーからは、保護をかけて配布したコンテンツが他の機器に移動した場合にも保護されることや、ネットワークで不正に再配布されないことなどが要請されており、コンテンツ利用の宅内制限が考慮された「DTCP over IP」が今後用いられていくとの認識を示した。
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東京大学の江崎浩教授
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ディスカッションではマイクロソフトの古川氏が、BSデジタルデータ放送の委員会に参加した際に、コンテンツの記述フォーマットとしてHTMLとは互換性のない「BML」の採用に反対したところ、「インターネットのような邪悪なものを放送の世界に持ち込まないでくれ」と言われたというエピソードを紹介し、今後は通信や放送、コンテンツホルダーといった垣根を超えて、あらゆる業界が同じテーブルで物事を考えていくべきだと語った。また、サムスンのカン氏は、韓国でも法律や規則がネットワークの現状に追いついていないとして、通信業界では放送をやりたいと思っているが、放送業界と対立しているといった状況を説明した。
司会を務める東京大学の江崎浩教授からは、コンテンツの権利問題についてはAppleの「iTunes」の成功によりコンテンツホルダー側の態度も変わってきているのではないかという質問に対して、東芝の石原氏は「音楽業界はナップスターなどでビジネスが壊されたところからスタートしているため、やや状況が異なる。ハリウッドなどのコンテンツホルダーは、やはり安全な環境が整わない限りはコンテンツを出さないという意識である」と説明した。ただし、権利問題については多くの企業が、どのようにユーザーの行為を規制するかという観点から、どのように権利を管理するかという「プロテクションからマネージメント」の方向に変化してきているという認識を示した。
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サムスンエレクトロニクスのビュン・チャン・カン氏
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東芝の石原淳氏
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関連情報
■URL
Global IP Business Exchange 2004
http://www.ip-bizex.jp/
( 三柳英樹 )
2004/11/16 21:56
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