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パネルディスカッションの模様
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11月17日、ECジャパンのバイスプレジデント サーチマーケティングのジェフ・ルート氏と、検索エンジン業界に詳しくアイオイクス株式会社のチーフアナリストなどを勤める渡辺隆広氏が主催する、検索エンジン業界の関係者を集めたイベント「SEOverdrive」が都内のレストランで行なわれた。
イベントでは、Yahoo! JAPANリスティング事業部の小野澤忠仁氏、マイクロソフトMSN事業部サービス部部長の浅川秀治氏、Googleパートナーサービス&オペレーションテクニカルアカウントマネージャーの熊倉健介氏、アスクジーブスジャパン取締役COOの樋口将嘉氏、ネットレーティングス代表取締役社長の荻原雅之氏らによるパネルディスカッションが行なわれた。
パネルディスカッションは日本と欧米の検索業界の動向を比較、今後の戦略についての話題が中心となった。
● ディレクトリ検索か、ページ検索か、それが問題だ
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ネットレーティングス代表取締役社長の荻原雅之氏
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Yahoo! JAPANリスティング事業部の小野澤忠仁氏
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冒頭、ネットレーティングの萩原氏が、世界的に見て日本ではYahoo!検索の利用率が高いことを指摘。これを受けて、Yahoo!の小野澤氏は「国内では、現時点で、大多数の人々に使いやすいと考えられているのがディレクトリを中心に据えた構成だと考えている」とコメント。また、「ロボットによるページ検索も併せ持っているので、利用状況とニーズに合わせて、今後もディレクトリとページ検索を組み合わせて提供していくことになるだろう」とした。
一方、Googleは圧倒的にページ検索の利用率が高く、中・上級者の“固定客”が多いとされるが、これについて熊倉氏は「インターネットを利用し始めた頃は、サイトを検索することが多いと思うが、慣れてくればくるほど、自分が必要な情報をピンポイントで指定できるようになる。そうなると、サイトではなくて自分の欲しい情報が記述されたページそのものを検索するようになる」と述べた。
さらに、ネットレーティングの荻原氏が「日本での検索語を見ると企業名が多い。これは欧米ではないこと」と付け加えると、アスクの樋口氏は「欧米では企業名を普通にアドレスバーに入力すればだいたい表示されるという事情がある。日本では、日本語での入力が可能な検索エンジンで調べるほうが理にかなっているのではないか」と分析した。
主要な論点に加え、各氏ともに語っていたのは、ただエンジンを輸入しただけでは通用しないという点だ。アスクの樋口氏がそれらの状況を「ローカライズに時間がかかる、という問題は大きい。日本では文字の種類、表記のゆれ、文節区切りなども考慮してやらなければならない」とまとめていたのが印象的だった。
● 次世代の検索は「パーソナライズ」と「マルチメディア」
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マイクロソフトMSN事業部サービス部部長の浅川秀治氏
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話題が近年の検索エンジン業界の変化と2005年への展望に移ると、まずYahoo!の小野澤氏が「今年、GoogleからYST(Yahoo! Search Technology)にエンジンを切り替えたが、利用動向を見ると、エンジンを変更したことによる数字上の大きな変化はなかった。今後はパーソナライズがキーになるのでは。個人個人の趣味趣向やニーズはそれぞれ違うから、検索ワードは同じでも、違うジャンルの情報を求めているということは多々あるはずだ。利用者が求める情報をより得やすくするには、誰が検索しても同じ検索ワードを入力したら同じ結果が出るというところから前に進まなければいけない。また、現在はテキストも画像もすべて一緒に検索結果に表示されるが、転職情報だけを引き出したいとか、特定の分野だけを対象にした検索もできるように取り組みたい」と抱負を語った。
一方Googleの熊倉氏は「いろいろ取り組んでいるが、具体的には言えない」としながらも、Googleが国内にR&Dセンターを開設することに触れて「日本人技術者が日本人のための技術を開発するので、よりよいサービスが提供できるようになると考えている」と述べた。
MSN Searchベータ版を12日に公開したばかりのMSNの浅川氏は、「ようやくプレーヤーに入れてもらった、という感じだ。一個人としては、現在の検索エンジンの精度はまだ十分ではないと感じることが多く、マルチメディアの時代なのに、検索結果がすべてテキストというのはちょっとないかなと思う。そこをMSNで実現していきたい。リスティングビジネスは技術面でもビジネス面でも可能性が大きい分野だ」と期待感を述べた。
アスクの樋口氏は、Yahoo!の小野澤氏、MSNの浅川氏のコメントを受け、「今後、パーソナライズもマルチメディアも間違いなく来るだろう。すでに米国ではそういう方向で動き出している。我々は違ったロジックで、違った感覚で表示されるエンジンもあるんだよということをPRしていきたい」と豊富を語った。
● いらない情報? 検索結果に表示されるブログへの対策
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Googleパートナーサービス&オペレーションテクニカルアカウントマネージャーの熊倉健介氏
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アスクジーブスジャパン取締役COOの樋口将嘉氏
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質疑応答で、ネットレーティングの荻原氏は、検索結果に膨大に表示されるようになったブログについて、利用者の一部から不満の声が上がってきている現状を指摘。これに対して、対策を講じるかどうかを質問した。
Yahoo!の小野澤氏は「たしかにブログはトラックバック機能を持ち、リンクされやすいという特性がある。そして、リンクがはられると重み付けがされるのは事実だ。しかし、ブログを読みたいか読みたくないかは個人の問題で、ブログを検索結果から除いたからといって即座に検索精度が上がるとは言えない。検索結果については常に評価し、フィードバックをして調整を行なっているが、最終的には、やはりパーソナライズの一環として、ブログの表示・非表示を選択できるなどの方法がいいのではないか」として、ブログサイトの評価を一律に下げるような対処には慎重な姿勢を見せた。
Googleの熊倉氏も同様に、「現状、ブログが上位にくるケースは多いかもしれない。ただ、ブログがあるないの問題ではなく、大多数の人が満足できる最大公約数的な検索結果を提供するというのが基本だ。そのためにアルゴリズムをチューニングする、ということが基本スタンス」とし、ブログだからという理由だけで、一律にサイト評価をすべきではないという見解を示した。
また、検索結果だけでなく、検索語を自動で翻訳する機能によって言語の壁を越える技術は実現するか、という質問も出た。たしかに実現されれば一気にインターネットの応用範囲が広がりそうな技術だが、MSNの浅川氏は「検索語を英語にするのはあまり問題なく、実際にMSN Searchでも画像検索については、日本語キーワードで検索しても、英語など他言語のサイトにある画像も表示しているし、これは他社のサービスも同様だと思う。しかし、テキスト情報については、検索結果として表示される文章を、機械的な翻訳によって読みやすく正しい日本語で提供するのは現状では技術的に難しい」と説明。すぐには実現しないだろうとの見込みを示した。
このほか、サイトが検索エンジン上位に表示させるような技術全般を指す「SEO」(Search Engine Optimization)について明確な対策をするかという質問についても、小野澤氏は「実力があるサイトがアクセスアップのために利用するならいいが、実力がないのに(ドーピングして)金メダルを取るのはよくない」とユーモアを交えてYahoo!のポリシーについて語った。
関連情報
■URL
SEOverdrive(Yahoo!グループ)
http://groups.yahoo.co.jp/group/seoverdrive/
ECジャパン
http://www.ecjapan.jp/
Yahoo! JAPAN
http://www.yahoo.co.jp/
MSN Search(ベータ版)
http://beta.search.msn.co.jp/
Google
http://www.google.co.jp/
Ask.jp(ベータ版)
http://ask.jp/
( 伊藤大地 )
2004/11/18 15:16
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