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イベントレポート
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【 2009/06/11 】
アナログ停波後の周波数帯域を利用したマルチメディアサービス
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【 2009/06/10 】
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IPv4アドレス枯渇で「Google マップ」が“虫食い”に!?
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[14:53]

「マイクロソフト製ソフトウェアを防衛プラットフォームに」とアピール


マイクロソフトオーストラリアのプレンティス氏
 マイクロソフトは17日、都内で「防衛ITシンポジウム 2005」を開催した。在日米軍や自衛隊のトランスフォーメーション(変革・再編)とIT技術の関わりについて、マイクロソフトや軍関係者らが講演を行なった。

 初めに、マイクロソフトオーストラリアのエンタープライズストラテジ・コンサルタントを務めるウォーレン・プレンティス氏が、「イラク戦争やスマトラ沖地震などを見ても、近年の軍事行動には各国の協力が不可欠になった」とコメント。ラムズフェルト米国防長官のコメントを引用し、「スピードと機敏さ、そしてコネクティビティが何よりも重要」と指摘する。そのために「隊員や部隊といった軍内部だけでなく、政策決定を行なう議会ともIT技術によるデジタルネットワークを構築する必要がある」と説明した。

 マイクロソフトでは、米国内だけでなく同盟諸国をつなげるネットワークのインターオペラビリティ(相互運用性)を重視。米連邦緊急事態管理局(FEMA)やFBI、沿岸警備隊をはじめ、カナダの公安非常事態準備局(PSEP)、イギリスの警視庁などが参加するインターオペラビリティの実証実験「Joint Warrior Interoperability Demonstration(JWID)2004」にも参加した。


インターオペラビリティの実証実験ではマイクロソフト製品を多数導入

優先度や分類のほかグリニッジ標準時や業種分類コードなど各国ごとのポリシーを反映できるミリタリーメールを提供
 JWID 2004では、マイクロソフトがActive Directoryによるネットワークを構築。「Office Live Communication Server 2003」「Windows SharePoint Services」などを用いて参加組織の共有環境を作成したという。また、アプリケーションとしてチャットシステムや、「ACP133」「P772」といった規格に準拠し、優先度や分類のほかグリニッジ標準時や業種分類コードなど各国ごとのポリシーを反映できるミリタリーメールを提供した。

 なお、JWIDは2004年に「Coalition Warrior Interoperability Demonstration(CWID)」と改称。現在進展中のCWID 2005では、米・英・カナダ・豪に加えてニュージーランドやNATO加盟国も参加する。マイクロソフトでも「Active Directory Federated Services(ADFS)」といった新技術を投入し、必要に応じてアクセス権を即座に無効化したり、身元情報のローカル管理などを実現するという。

 CWID 2005のネットワークでは各国に設置された「Federation Server」という連携サーバーと、各国の認証局によるPKI認証サービスで信頼性を確立する。また、ミリタリーメールに加え、統合コラボレーションとして「Live Communication Server 2005」によるチャット機能を提供。このチャット機能には、プレゼンス表示機能やビデオ会議機能、離席中のログも確認できる電子会議システム、情報共有するSharePointのポータルサービスなどが統合されている。


CWID 2005では各国の「Federation Server」とPKI認証サービスで信頼性を確保 プレゼンス表示やビデオ会議などが統合されたチャットシステム

やってはいけないシステム構築

在日米軍のジャニス・レイ大佐
 続いて在日米軍のジャニス・レイ大佐が講演。テロに立ち向かうためにはNGOなどを含め、複数の国や組織が連携する必要があるが、「9.11以降も電話や対面、インターネットしか情報をやり取りする手段がなかった」とコメント。「インターオペラビリティを確立し、情報を一括して把握する必要がある」という。

 レイ大佐は、“やってはいけないシステム構築”として、1)独自システム、2)既存システムをオープンシステムに接続するための変換ボックス、3)運用のインターオペラビリティを踏まえないシステム、4)国際的なスタンダードの無視――を挙げる。

 「例えば変換ボックスを設置することで、データの変換に時間がかかる。時間を損失すれば、攻撃のタイミングを逃すこともある。また、国際的なスタンダードでいえば、アイコンも共有化したほうがいい。ある国では四角が味方を表していても、もう一方の国では四角が敵を表していたら、システムを統合したときに大変なことになる」。

 トランスフォーメーションを行なう際に指針となる標準規格としては、IPv6や無線の秘話性確保の規格「APCO-25」などを挙げ、「日本も独自規格ではなく、共通の規格を採用すべき」と語った。


ネットワークを強化し、艦艇を増強しなくとも戦力を強化

前海上幕僚長の古庄海将
 「2005年は1805年のトラファルガー沖海戦から200年目、1905年の日本海海戦から100年目となる節目の年だ」と語るのは前海上幕僚長の古庄幸一海将。「ネルソン提督はトラファルガーで戦死するも、“ネルソンタッチ”と呼ばれる部下掌握術で情報を共有していたためにフランス・スペインの連合艦隊を撃破した。東郷提督も信濃丸など偵察艦艇や最新式の36式無線機による情報の収集・共有を重視し、バルチック艦隊を退けた」と両海戦における指揮官の戦いぶりを評価する。

 しかし、古庄海将は「これまでの戦争は正規軍対正規軍だったのが、9.11以降テロリストなど敵が必ずしも正規軍ではなくなった」と脅威の変化を指摘。指揮・統制・通信・コンピュータ・情報・監視・偵察をまとめて「C4ISR(Command、Control、Communications、Computers、Intelligence、Surveillance and Reconnaissance)」というが、現代戦においてはこのC4ISRを迅速に、政治的な機微も踏まえ、外部組織との連携しながら行なう必要がある。そのためには「豊かな情報共有が必須」との意見を示した。

 「国内には強力なイージス艦も配備されているが1隻で行動するより、複数隻で情報を共有し、ネットワークを組んだ方が効率的。実際にも隻数を増やすよりネットワークを強化した方が戦力が増すという試算もあり、2005年度は海上自衛隊が始まって以来、艦艇の増加要求を行なわない予算編成になる方針だ」という。

 防衛庁の中で関係各所を結ぶネットワークの重要性に対する理解が深まる一方で、「2004年末に中国の原潜が領海を侵犯した際、原潜の捕捉から出動までに2時間30分もかかった。日本海海戦では信濃丸がバルチック艦隊を発見してから、わずか20分で出動しているのに」と厳しい現実も吐露。「司令官は全体を見渡す必要がある。Enterprise Architecture(全体最適化)を考え、海軍を経営してほしい」と注文を付けた。


関連情報

URL
  マイクロソフト
  http://www.microsoft.com/japan/
  防衛庁
  http://www.jda.go.jp/


( 鷹木 創 )
2005/02/17 16:32

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