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違法コピーを行なうユーザーが違法〜ピュアP2Pの違法性も再検討すべき


 財団法人デジタルコンテンツ協会(DCAj)は7日、「P2Pコミュニケーションの可能性と法的課題 ―コンテンツ産業はP2Pといかに向き合うべきか―」と題してシンポジウムを開催した。シンポジウムでは、DCAjの「デジタルコンテンツ関連技術の法的評価に関する研究委員会」の委員長を務める大橋正春弁護士(岡崎・大崎・前田法律事務所)をモデレータに、関係者らが集まってパネルディスカッションが実施された。

 出席したパネリストは同委員会の委員である、立教大学法学部の上野達弘助教授、紀尾井坂法律事務所の小川憲久弁護士、アンダーソン・毛利・友常法律事務所の城山康文弁護士、虎ノ門南法律事務所の椙山敬士弁護士、あさひ狛法律事務所の宮下佳之弁護士らに加え、ニフティ情報セキュリティ推進室の鈴木正朝課長や、NTTネットワークサービスシステム研究所の星合隆成主幹研究員の8名。


パネリストの面々。左から立教大学の上野氏、小川弁護士、城山弁護士、椙山弁護士、ニフティの鈴木氏、NTTの星合氏、宮下弁護士 モデレータは大橋弁護士が務めた

これまでの裁判ではピュアP2Pは“無罪” 今後の動向に注目

パネルディスカッションの前にP2Pファイル交換サービスに関する裁判事例を紹介した小関氏
 パネルディスカッションの前には、凸版印刷法務本部法務部の小関知彦部長が、P2Pファイル交換サービスに関する裁判事例を、事件の性質に基づく分類で紹介した。

 まず、中央サーバーが存在するハイブリッド型P2Pサービスでは、2001年のNapster裁判と2003年のファイルローグ裁判を例示。Napsterの判決では、直接の著作権侵害はないものの間接的に侵害行為に寄与していること(寄与侵害)、侵害行為を監督する権利・能力を持ち、その行為に金銭的利害関係を持っていること(代位侵害)が認められた。ファイルローグ裁判でも、サービス提供者が送信可能化権の侵害と自動公衆送信の主体とする判決が下り、いずれもサービス提供者側に責任を認定する内容になった。

 続いて、サーバーが存在しないピュアP2PサービスであるGrokster裁判を例示した。2004年8月の米連邦控訴裁判所の判決では、Groksterによる寄与侵害や代位侵害を否定。現在最高裁で係争中だという。国内で係争中のWinnyについては「著作権法違反の幇助という新しい考え方」だとし、「Grokster、Winnyともに今後の裁判結果が注目されている」という。


ピュアP2Pの違法性は再検討が必要

 パネルディスカッションではまず、こうした事例の判決理由となった「中央サーバーの有無」に妥当性があるかどうかが議論された。

 「はっきりしているのは違法コピーを行なうユーザーが違法である点」と立教大学の上野氏。「サーバーがあるかないかが決定的な要素になるのかどうか検討する必要はある。むしろ、サーバーがないP2Pソフトの方が権利者の被害がひどくなる可能性もある」と中央サーバーの有無に関わらず、違法性を検討するべきだとの見解を示す。

 弁護士の城山氏も「(ピュアP2Pソフトのように)管理できないものを作って、権利侵害に利用されてしまう。利用されている行為の適法性・違法性が問題。ほとんど違法行為に利用されているものであれば、管理サーバーの有無を議論する必要はない」と同調した。

 会場からも凸版印刷の小関氏が、「Groksterが最高裁で有罪になる可能性としては、もっぱら違法行為に使われているということが最大の理由になるのではないか。ベータマックスが無罪だったのは、タイムシフトに利用されていたからだ」と利用行為の違法性を問題視。ただし、「Groksterの場合、違法行為に利用されているという著作権者側の主張は、これまでの裁判で1度は棄却されている」という。

 一方、慶應義塾大学経済学部の田中辰雄助教授が会場から反論。自ら調査した「WinnyはCD売り上げの減少には関係がない」という調査結果を元に、「P2Pで交換されたファイルにより被害が生じていないのであれば、そもそも違法とは言えないのではないか」と主張。弁護士の小川氏は「本来違法コピーの問題は、著作権法マターではなくビジネスマター。全体の3%ぐらいの人が違法コピーしているからといってビジネスが成り立たないのもどうかと思う。メーカーだって歩留まり率は97%もない」との見解を示した。


立教大学の上野氏 城山弁護士

データが削除できないP2Pは問題

 続いてのトピックは「P2P技術の匿名性」。NTTの星合氏は、「P2Pで一番心配しているのは匿名性の問題。通常の掲示板に誹謗中傷が書き込まれた場合、管理者に対して削除を命令すれば、管理者が削除できる。しかし、放流型のP2Pにそういったデータが流出してしまった場合はどうやって削除するのか」と指摘する。

 弁護士の宮下氏も「健全なネットワーク社会を構築するためには、匿名性を追求するよりは、最終的に捕捉可能なシステムとし、P2Pによるサービスの利用に社会的な責任を負える形にするべきだ」との見解を表明した。

 城山氏は「P2Pと匿名性はセットで議論されることが多いが、必ずしも一緒ではない。匿名性だと情報が出やすくなる。コンテンツが放流されやすくなると、出てくるコンテンツには正当でないものも出てくる」と解説。その上で、「匿名性がなくなれば、権力批判や内部告発が保護されなくなるという声もあるが、表現の自由を保護するのは当然で、むしろ技術ではなく、表現の自由という法制度面から保護すべきではないか」とコメントした。


NTTの星合氏 宮下弁護士

DRMでは私的複製を抑制できない

小川弁護士
 デジタル著作権保護技術(DRM)の現状について、弁護士の小川氏が「米国ではiTunesが非常に伸びているが、日本ではCDを借りてきてiTunesでリッピングしてiPodに取り込んでいる。これでは課金できず、レンタルCDショップに課金しろということになりかねない」とDRMがサポートしていない分野があるという。

 また、宮下氏は「がんじがらめで一律のDRMだとユーザーにとって不便で利用しにくいものになってしまう。物理的なCDが欲しいなら3,000円、iPodに入れたいなら300円、PCにダウンロードするだけなら100円、というように柔軟に価格設定する必要がある。また、そうした環境を実現するには技術的に柔軟な設定が可能なDRMに頼らざるを得ない」と指摘した。

 試聴用コンテンツは配信コストの低いP2Pで配信し、本番コンテンツは既存システムで配信するようなハイブリッド型の配信システムを提案するのは、NTTの星合氏。「配信はP2Pで行ない、認証は従来型のシステムで行なう」など、配信/認証というフェイズごとに機能を分けたハイブリッド型配信システムのバリエーションも紹介した。

 なお、試聴用コンテンツに関しては「現在の法律では著作権の対象にはなっていない」(宮下氏)ため、侵害行為が発生しない。「試聴コンテンツにDRMをつけてコントロールするようなシステムだと、著作権法で定められた範囲以上のことを制限してしまう」(小川氏)という。小川氏はまた、「法律で規定された著作権保護技術は、著作権侵害行為の防止と抑制が目的。私的複製のための補償金は音楽プレーヤーやCD-ROMなどメディアのメーカーが支払っており、もし、私的複製をDRMで抑制するのであれば、著作権の改正が必須になる」と解説した。

 このほか、会場からは慶応大の田中氏が「Winnyのユーザーは膨大な数のコンテンツをダウンロードし、音楽であれば聞かないとどんどん削除してしまう。実態としてそういう利用状況がある」と報告し、音楽ファイルであれば実際に音楽を聞く段階でDRMによるライセンス認証を行なうようにするべきだとの意見を示した。


関連情報

URL
  P2Pコミュニケーションの可能性と法的課題
  http://www.dcaj.org/contents/frame03.html


( 鷹木 創 )
2005/03/08 17:11

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