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ブロードバンドの普及で求められる次世代ルーティング技術


 テリロジーは12日、米AnagranのCEOを務めるLawrence Roberts氏を招き、Anagranが開発した次世代フロールータ技術などを照会する「次世代ブロードバンド技術セミナー2005」を開催した。


「ルータは単純であるべき」からQoSが必要とされる時代に

Lawrence Roberts氏
 Lawrence Roberts氏は、インターネットの原型となったARPANETの計画・設計を行なった人物で、2001年にはTCPを開発したVinton Cerf氏やRobert Kahn氏らとともに米国NAE(National Academy of Engineering)からエンジニアに与えられる「ドレーパー賞」を受賞している。

 Roberts氏は2004年にAngran社を設立し、現在はフローステートルーティング技術を用いたルータの開発に取り組んでいる。講演ではフローステートルーティング技術の概要と、それによってもたらされるメリットが紹介された。

 フローステートルーティング技術とは、たとえばWebにアクセスした際に発生する多くのパケットをひとかたまりの「流れ」(フロー)と認識し、このフロー単位でルーティングを行なう技術のことだ。パケットごとにルーティングを行なう従来のルーターに比べて低コスト化が可能で、帯域制御(QoS)も可能になるなどのメリットがあるという。

 Roberts氏は、「ビットあたりの決定数が下がるとルーティングのコストは下がる。パケット通信では数十バイトごとにルーティングを行なうことで大きくコストが下がったが、フロールーティングではさらに多くのパケットをまとめて扱うことでコストを下げる技術である」と説明した。また、「フローステートルーティングを実現するには大容量のメモリが必要となるが、これまではメモリの価格が高かったために誰も採用しようとしなかった。しかし、現在ではむしろフローステートルーティングの方がコストを削減できる」として、フローステートルーティング技術の優位性を語った。

 フローステートルーティング技術はユーザーの通信をまとめて処理するため、特に音声や映像で必要とされるQoSの実現に効果を発揮するという。また、これまでのパケット通信では通信速度が徐々に上がっていく特徴があるが、通信開始直後から一気に最高速で通信を行なう「ジャンプスタート」の実現や、P2P型アプリケーションなどで特定のユーザーが帯域を占領しないようにトラフィックを制御するといったことも容易に行なえるとしている。

 Roberts氏は、「これまでは、ルータは単純であるべきで、フローやステート(状態)といった情報を保持するのは良くないと言われてきたが、現在では状況は大きく変化している」として、ブロードバンドの普及や音声や動画などのQoSが必要なサービスが登場してきたことを挙げ、今後はコスト面やQoSなど品質面からも、フロールーティング技術が主流になっていくだろうとの見通しを語った。


パケットルーティングとフローステートルーティングのコストの関係 徐々に通信速度が上がる従来のパケット通信(青)に比べて、一気に高速通信を可能にする「ジャンプスタート」(赤)を実現する

ブロードバンドの普及で高まるQoSの需要

Anthony Vidal氏(左)と藤原洋氏(右)
 セミナーの後半では、Roberts氏に加えて、インターネット総合研究所の藤原洋代表取締役社長と、米AnagranのAnthony Vidal氏によるパネルディスカッションが行なわれた。

 Roberts氏は、特にアジアでブロードバンドが急速に普及が進んでおり、アメリカではアジアに比べてブロードバンドの普及は遅れているが、今後はWiMAXなどのワイヤレス技術が突破口になるのではないかとした。ただし、Wi-FiやWiMAXなどのワイヤレス技術をそのまま使ってしまうと、ユーザーの間で帯域の奪い合いが起こり、音声や動画などのサービスには利用できなくなるとして、ワイヤレス技術にこそQoSが必要であるとの認識を示した。

 藤原氏は、「日本はブロードバンドの料金は世界一安くなったが、携帯電話の料金は高いままだ。しかし、料金が高いにも関わらず利用者はとても多く、モバイルやワイヤレスには大きなニーズがある」と語り、日本では「モバイルブロードバンド」の需要が高まるとした。このモバイルブロードバンドの実現については、「3Gや4Gといった既存のキャリアからのアプローチがある一方で、WiMAXのようなインターネット的なアプローチもある。IP電話のときにも、電話会社からはH.323、インターネットからはSIPといったアプローチがあったが、結局マーケットはSIPを選んだ。ワイヤレスの世界でも、技術を使っていきながらQoSなどの解決策を見つけていくという形で、WiMAXのようなインターネット側からのアプローチが残るのではないか」という見解を述べた。

 Vidal氏は「ワイヤレスのサービスを考えると、セキュリティや課金の問題も重要になってくる」として、こうした問題の解決にもフローステートルーティングが利用できるのではないかと語った。また、Vidal氏から「ブロードバンドの普及した日本では、ユーザーはどのようなアプリケーションを利用しているのか」という質問には、藤原氏が「広い意味でのコンテンツが求められている。5年前にはインターネットでのコンテンツビジネスは成り立たないと言われてきたが、この5年でそうした説は覆りつつある」として、今後もコンテンツ市場が大きく成長するだろうとした。

 また、ブロードバンドではWinnyなどのファイル交換ソフトや、IP電話「Skype」のようにP2Pを利用した技術も流行したが、それについてはどう考えるかという質問には、藤原氏が「P2Pということでは、日本ではWinnyの開発者が逮捕されて、自分も検事から意見を求められた。Winnyについては、誰もが著作権の侵害に加担してしまうネットワークを作ってしまったことは問題だったと思うが、P2Pそのものは法律で禁止すべきでないと考えている。技術によって起こった権利侵害は、やはり技術によって防ぐ方法を考えるのが筋ではないかと思う」と見解を述べた。


関連情報

URL
  テリロジー
  http://www.terilogy.com/
  Anagran
  http://www.anagran.com/


( 三柳英樹 )
2005/04/12 20:18

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