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プロバイダーと行政の双方が考える迷惑メール対策に向けた法整備


 財団法人インターネット協会(IAjapan)は10日、迷惑メールに関する技術や対策に関する「迷惑メール対策カンファレンス」を開催した。午後のセッションでは、迷惑メール対策と法律の関係についてのパネルディスカッションが行なわれた。


法改正や国際連携などで迷惑メール対策を進める行政サイド

総務省の渋谷闘志彦氏と経済産業省の十時憲司氏
 総務省の渋谷闘志彦氏は、迷惑メールに関する調査結果を紹介し、日本においては迷惑メールは携帯電話を対象としたものが多く、内容もいわゆる出会い系サイトの宣伝が多いなど、海外とは特徴が異なるというデータを示した。こうした迷惑メールへの対策としては、2002年に施行された「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」(特定電子メール法)があるが、現時点では十分な成果は上がっていないとした。

 特定電子メール法では、広告や宣伝目的のメールを送信する場合には題名に「未承諾広告※」の文字列を入れることや、受信者が今後メールの送信を拒否できる仕組みを備えること、架空のメールアドレスからの広告メール送信の禁止などが定められている。ただし、法律が施行されてから約3年が経過したが、この間に違反者に対して出された措置命令は3件に止まっており、罰金刑となった例はまだ無いという。

 渋谷氏は、「今の法律では、違反者に対してまず措置命令という行政処分を下して、措置命令に従わなかった場合には罰金刑になるという、二段階の間接罰になっているが、これではなかなか抑止効果が低い」として、特定電子メール法の改正案が国会で現在議論されていることを紹介した。改正案では、送信者を偽った迷惑メールの送信については措置命令を経ずに直接刑(100万円以下の罰金または1年以下の懲役)が課せられるようにすることが検討されている。これにより、警察がプロバイダーに対して契約者情報の開示請求を行なうなど違反者に対する捜査も可能となり、抑止効果が期待できるという。

 また、渋谷氏は「迷惑メールは国を超えて飛んでくるので、各国との連携も重要である」として、最近では欧州25カ国とアジア13カ国からなるASEMの会合で迷惑メール対策に共同で取り組む共同声明を発表したほか、アジア各国との間で情報交換や規制などの協力を行なう相互協定を結ぶ動きが活発化していることを紹介した。


 経済産業省の十時憲司氏は、2002年に施行された特定商取引法を紹介し、経済産業省では商取引という観点から迷惑メールに取り組んでいるとした。特定電子メール法では迷惑メールを「不当な通信」として規制しているのに対して、特定商取引法では迷惑メールを「通信販売の広告」として規制を行なっている。

 十時氏は、「この2つの法律の連携により総合的な迷惑メール対策が可能になる」として、特定商取引法では迷惑メールだけでなく、迷惑メールによって誘導されるサイトも範囲内になることが特徴であると述べた。特に、最近問題になっているワンクリック詐欺サイトなどは、特定商取引法の「虚偽・誇大広告の禁止」(12条)や、「意に反して契約の申し込みをさせようとする行為の禁止」(14条)にあたるとして、迷惑メールによって誘導されるサイトに対しても行政処分が可能になるという。

 ただし、実際にはどこから迷惑メールが送られているか、誰がサイトを運営しているのかということを把握しなければ行政処分が行なえないという問題があり、経済産業省では各省庁との協力により「迷惑メール追放支援プロジェクト」を実施していることを紹介した。プロジェクトでは、迷惑メールの送信者や迷惑メールによって誘導されるサイトの運営者に対して、プロバイダーが特定商取引法の違反を理由に契約解除・サイト削除などの措置を行なえるようにするための支援や、金融庁との協力により詐欺に利用される不正預金口座の凍結を促進するといった活動を行なっているという。これにより、「迷惑メールを送らせない」「Webを利用した不当請求をさせない」「口座から引き出させない」という3段階の対策により、迷惑メールの追放を図っていきたいとした。


特定電子メール法の改正案概要 経済産業省が進める迷惑メール追放支援プロジェクト

プロバイダー側は「通信の秘密」と迷惑メール対策の関係に不安も

NTTコミュニケーションズの甲田博正氏とニフティの木村孝氏
 ニフティの木村孝氏は、プロバイダー側の立場から迷惑メール対策について現時点で考えられる法律面での問題点を提示した。木村氏は、プロバイダーがメールのフィルタリングや送信者認証技術などを導入した場合に、電気通信事業法に定められた「検閲の禁止」(第3条)、「秘密の保護」(第4条)、「利用者の公平な取り扱い」(第6条)といった事項に抵触する可能性を挙げ、こうした点がクリアにならなければ技術も導入できないという問題があると指摘した。

 通信内容については、通信当事者の同意があればそれを見ることは可能とされているが、メールの「当事者」に送信者も含まれるとすると同意を得ることは事実上不可能となってしまうことや、利用者に対して契約約款による包括的同意があればよいか、個別に同意を求める必要があるかという点が議論の対象になるとした。

 NTTコミュニケーションズの甲田博正氏は、迷惑メールの送信者に対してプロバイダーが契約解除などの措置を行なう際の問題点を提示した。現状では、迷惑メールを受け取った側のプロバイダーがIPアドレスなどから送信者を特定し、送信者が契約しているプロバイダーに対して情報を提供することで、迷惑メールの送信者に対して警告や契約解除などの措置を行なう形が一般的になっている。しかし、こうした行為が通信の秘密の侵害に抵触する可能性もあることや、プロバイダー間でIPアドレスなどの情報を交換する場合に情報が正確であるかを保障する仕組みがないといった問題があると述べた。

 また、あるプロバイダーが迷惑メールの送信者の契約を解除したとしても、すぐに別のプロバイダーと契約してしまうことが考えられるが、これについても現時点では対応策が無いという。NTT東西のフレッツサービスなどを利用すれば、別のプロバイダーに乗り換えることも簡単にできるが、プロバイダー間で契約者情報を交換する仕組みが無いことや、契約者情報を交換すること自体が法律的に可能であるかという点が議論の対象になるとした。


 こうしたプロバイダー側からの問題提起に対して、総務省の渋谷氏は「電話の場合には片方の同意があれば通信内容を事業者がチェックしても良いとは言えないが、メールの場合には送信した時点で送信者と事業者の間で通信は完了しており、あとは受信者と事業者の間の通信の問題だと考えられる。したがって、受信者が同意すればメールのフィルタリングなどは可能であり、通信の秘密の侵害にはあたらないと考えられる」という見解を示した。

 また、迷惑メール業者が次々と別のプロバイダーに契約してしまう問題については、「携帯電話事業者の間では不払い者リストの情報交換が行なわれており、プロバイダーでもこうした仕組みを構築することは可能だと考えられる」とした。その上で、プロバイダー間で情報を交換するための第三者機関を作るなど、情報の正確性の担保やプライバシーとの関連をどのように解決していくかなどは、業界の側からも働きかけてほしいと呼びかけた。

 パネルディスカッションのコーディネーターを務めた慶應義塾大学の村井純教授は、「迷惑メールへの対策は、メールという重要なツールが生きるか死ぬかという問題にもなってきている。こうした対策については、民間が主導で行政がサポートするといった形が望ましいと考えている。的を外した法律や規制ができてしまっては意味がなく、民間の側から新しい技術の導入や協力体制の構築を行ない、これを行政がサポートしていく形でどこまで対策が行なえるかが重要になるだろう」と述べ、ディスカッションを締めくくった。


プロバイダー間での迷惑メール対策の問題点 パネルディスカッションのコーディネーターを務めた慶應義塾大学の村井純教授

関連情報

URL
  IAjapan 迷惑メール対策カンファレンス
  http://www.iajapan.org/anti_spam/event/2005/conf0510/

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( 三柳英樹 )
2005/05/10 22:36

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