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ブログ関連事業者が語る「RSSとブログが創る新たなビジネスの可能性」


 CNET Japan lnnovation Conference 2005 Summerでは、ドリコム、はてな、RSS広告社、Bloglinesの運営者によるパネルディスカッション「RSSとブログが創る新たなビジネスの可能性」が開催された。モデレーターはCNET Japanで連載を持つ渡辺聡氏が務めた。


「はてなブックマーク」「はてなRSS」が順調に伸びるはてな

左からドリコムの内藤裕紀氏、はてなの伊藤直也氏、RSS広告社代表取締役兼ネットエイジグループ執行役員の田中弦氏、Bloglines バイスプレジデント 兼 ゼネラルマネージャのマーク・フレッチャー氏
 ドリコム 代表取締役の内藤裕紀氏は、ドリコムが運営するRSS関連サービスを紹介。Webニュースとブログの検索サービス「News&BlogSearch」、ブログの更新情報やRSSを確認できる「MyblogList」、ブログ向け広告「BlogClick」について説明した。

 News&BlogSearchは、世間で話題となっているテーマや検索キーワードなどが表示されるほか、文中に含まれるキーワードを抽出して同じ内容のブログやニュースを分類する機能を搭載。内藤氏は「現在はRSSを取り込んだ後、不動産や教育、転職など自動でカテゴライズする取り組みを行なっていて、ある程度のところまで研究の成果が出ている」と語った。

 MYblogListは1年半ほど前に開始したサービスで、RSSリーダーがそれほど多く登場していなかった当時に簡単な形でRSSの概要が読めるサービスとして提供。また、自分のブログに貼り付けることでユーザー同士がつながるといった狙いもあったという。ブログ向け広告のBlogClickは、RSSを元にして各ブログの本文を抽出し、内容に適した広告を表示するシステムだったが、「今は研究開発が進んでおり、不特定多数のコンテンツから本文と件名を抽出することも97~98%の精度でできるため、実はあまりRSSを使わなくなっている」との裏話を披露した。

 はてな取締役最高技術責任者の伊藤直也氏は、はてなが提供するサービスとビジネスモデルについて説明。「昨年のブログブームではてなダイアリーが非常に伸びたが、最近ではソーシャルブックマークサービスのはてなブックマークの伸びがいい。また、最近RSSリーダーの提供も始めたが、こちらも順調に伸びている」と語った。

 はてなのビジネスモデルは、有料ポイント制度「はてなポイント」、広告事業、「TSUTAYA onlineはてな」「bk1はてな」といったシステムの提供の3つが主軸。伊藤氏は「一番大きいのは広告事業で、最近も大きく伸びている」とコメントした。


RSS広告社はRSS広告配信を開始。Bloglinesは7月にブログ検索を予定

 RSS広告社代表取締役兼ネットエイジグループ執行役員の田中弦氏は、同日に発表されたRSS広告社の提携や新サービスに関して説明。サイバー・コミュニケーションズおよびリクルートとの資本・業務提携を発表したほか、ネットエイジ代表取締役社長の西川潔のブログで開始したRSS広告の事例を紹介。記事中のキーワードに関連した広告を自動で表示する仕組みで、田中氏は「システムの開発はすでに終了している」との状況を説明した。

 RSSの広告配信システムは、「広告代理店10社のフィードバックを受けて日本人にわかりやすいシステムを構築した」とコメント。「すでに万単位のキーワードを販売済みで、キーワードが増えればコンテンツマッチ広告もより充実するだろう」と語った。

 Bloglines バイスプレジデント 兼 ゼネラルマネージャのマーク・フレッチャー氏は、Bloglinesのサービス提供についてコメント。「何百ものブログやサイトを自分のブックマークに登録していたが、それを毎日見ていると非常に時間がかかる。何か解決できる方法があるに違いない」との考えからオンライン型のRSSリーダー「Bloglines」をリリース、「100のサイトに行くことなく、更新や変更をすぐに知ることが可能で、たくさんの情報を管理できる方法だ」と自信を示した。

 Bloglinesはすでに8カ国語に対応しており、1日に250万から270万のブログ記事がインデックスに登録されているという。フレッチャー氏は「米国では、RSSが何かということを知らない人にも多く支持されている」とした上で、「ブログもそうだが、我々の目標は基盤の技術を知らなくても使えること。今年の夏には世界クラスのブログ検索をリリースする予定で、21世紀のホームページを目指していく」との抱負を語った。


RSSで情報流通の速度が加速化

モデレーターを務めた渡辺聡氏
 全員のプレゼンテーションが終了したのち、モデレーターの渡辺氏が「RSSでユーザーの体験はどう変化するのか」と質問。はてなの伊藤氏は「以前のWebサイトは、情報の受け手が能動的に見に行っていたが、RSSが広まったことで、更新を知りたい情報を登録しておけば発信側から受け手へ逆に流れる」とコメント。「まだ技術が色濃いものなので、一般には広まっていないと思うが」と前置いた上で、「はてなブックマークでは、多くの人がブックマークしている記事がわかるようになっている。RSSの普及により流通の速度が速くなる中で、ユーザーがどうやったら情報を見落とさずに使ってもらえるか、情報の受け手にも重きを置いてサービスを運営している」と語った。

 Bloglinesのフレッチャー氏は「RSSは単にフィードをアグリゲーターに取り込むだけではない」と述べ、ブログ検索について言及。「今までの検索エンジンは、これまで書かれたものが対象だったが、ブログは今誰かが言っていることをリアルタイムに検索できる。それはRSSによってもたらされたもの」と語った。また「RSSで新しくできるようになったこととは」という質問にフレッチャー氏は「新しい情報は自分から行かなくても向こうからやってくる、これは非常にパワフルなこと。RSSはインターネットが大きな成長を遂げるために必要なテクノロジーで、ユーザー1人1人がこういった機能を必要とするようになるだろう」との見通しを示した。

 RSSの位置付けについて渡辺氏が尋ねると、Bloglinesのフレッチャー氏は「まだ我々は試行錯誤の段階で、メディア企業もどのような形でこの技術を使っていこうか考えている」と回答。RSSで記事の要約を配信し、全文を読むためにサイトへアクセスすることでサイトにユーザーを取り込む方法や、全文をRSSで配信して広告を含めるビジネスモデルなどを紹介した上で、「1つのビジネスモデルではなく、今後どうなっていくかは個々のメディアによって違うだろう」と語った。

 はてなの伊藤氏は、「Web全体を検索するなら、従来通りYahoo!やGoogleを使えば事足りる」とした上で、フレッチャー氏と同様にRSS検索の特徴を「情報のフレッシュさ」と指摘。「メディアがRSSを配信することには議論があるが、海外ではすでにRSSを配信していないメディアの場合、ユーザーはそのサイトに対して『もう来なくていいよという意思表示』との認識を持っているという。メディアとしてRSSの対応が強いられているのではないか」との考えを披露した。

 ドリコムの内藤氏は検索サービスを図書館に例えて説明。「本を作る場合は実際に本を買う作業のほか、人や機械を設置して本を探しやすくすることも重要で、検索もそれは同じこと。RSSは集めることも探すことも簡単なので、GoogleやYahoo!のような検索技術を持っていなくても、検索サービスを実現するための土台が低くなっている」と語った。


RSSはメディアでありメタデータであるという二面性が

 「ユーザーがサイトへアクセスするまでの経路が変化しつつあるのでは」との渡辺氏の質問には、ドリコムの内藤氏が「RSSは簡素なメールマガジンに近い」と回答。「今までは週1回発行されていたメールマガジンでアクセスするユーザーが、RSSでは毎日アクセスする。今ではメールマガジンよりRSSの購読者が多いサイトもあると聞いている」との考えを示した。

 「RSSやブログが普及した後、企業側に求められる対応」というテーマでは、ドリコムの内藤氏が「企業にもよるが、メーカーであれば商品情報などはRSSで配信するのは一般的になるのではないか。メディアではメールマガジンの位置付けがRSSへ変化していくのでは」との意見を披露。はてなの伊藤氏は「Webはかつてよりも多くの人々が使っている。現段階ではRSSはリテラシーの高い人々が使っているが、広告のターゲットとしては、そういった層よりもっと一般の層が重要だろう。かといってリテラシの高い層は、一般層へサービスを広めるという面もあるため、そのあたりを踏まえた全体的なマーケティングが重要だろう」との考えを示した。

 RSS広告社の田中氏はマーケティングの観点から「情報の速度がここ3年で一気に早まっている」とコメント。企業としてはその情報の速度にうまく乗って、いかに伝播を早くしつつ、ユーザーにうまくメッセージしていくかが重要になるのではないか」と語った。

 会場から「RSSはメタデータなのか、それともメディアなのか」という質問が飛ぶと、はてなの伊藤氏は「両方ではないか」とコメント。「ユーザーから見るとメディアで、技術者から見るとメタデータ。メタデータという観点からは、RSS広告は嬉しくはないが、Webが生まれたときも同じ議論があった。Webに広告が載ったことから大きなビジネスが生まれており、複雑な気分ではあるがそういう面もあるだろう」との考えを示した。


関連情報

URL
  CNET Japan lnnovation Conference 2005 Summer
  http://japan.cnet.com/info/cjic2005/
  関連記事:ブログと共に普及期に入ったRSSと、Web創世記から繰り返される議論[Broadband Watch]
  http://bb.watch.impress.co.jp/cda/alphageek/9778.html


( 甲斐祐樹 )
2005/06/20 19:40

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