WIRELESS JAPAN 2005の「4G+IEEE 802ワイヤレスフォーラム」では、アセロス・コミュニケーションズ代表取締役社長の大澤智喜氏が、2005年5月に行なわれた電波法改正による5GHz帯の開放について講演を行なった。
● 5GHz帯の開放でより多くのユーザーが収容可能に
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アセロス・コミュニケーションズ代表取締役社長の大澤智喜氏
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大澤氏ははじめに、実質上3チャネルしか独立して利用できない2.4GHz帯を、50近いアクセスポイントが共有しているというニューヨークの事例を紹介。5GHz帯の開放によって従来よりも多くのチャネルが利用可能になり、より多くのユーザーを収容できるというメリットを示した。
続いて大澤氏は、5GHz帯開放の経緯について説明。これまで日本では5.15~5.25GHzの4チャネルのみが開放されており、気象レーダーへの影響を避けるために世界標準とは10MHzずれた独自の運用を行なっていたが、今回の法改正では、米国や欧州ですでに開放されている5.25~5.35GHzが開放されたと同時に、独自運用だった従来の5.15~5.25GHzも米国・欧州と同じチャネルに改められた。なお、5.25~5.35GHzに関しては、国内では気象レーダーが利用している帯域のため、気象レーダーを検出する技術「DFS」の採用が義務付けられている。
さらに今後は、屋外でも利用できる5.47~5.725GHzも開放に向けた検討が進められている。この帯域は欧州ではすでに割り当てられており、日本と米国が新たに帯域を開放するという流れだ。なお、この帯域もレーダーを検出するDFSが必須であり、大澤氏は「特殊なレーダーがある帯域のために干渉条件を検討しているが、実験がスムーズに進めば2006年には開放されるのでは」との見通しを示した。
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チャネルの拡大でより多くのユーザーが収容可能に
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5GHz帯の国際的な割り当て経緯
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● 新たに開放された5.25~5.35GHz帯は気象レーダーと共用
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レーダーシステムとアクセスポイントの関係
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続いて大澤氏は、新たに開放された5.25~5.35GHzをIEEE 802.11aと共有する気象レーダーについて説明。気象レーダーは1秒間に4回のパルスを発射し、そのパルスが戻ってくるエコーの状況で干渉物を把握するが、無線LANのパケットはレーダーにとって障害物のように扱われるためにノイズが発生し、航空レーダーの場合は雨雲や飛行機として誤認される危険性があるという。
この対策として搭載されたDFS技術は、アクセスポイントが運用を開始する最初の60秒間に使用するチャネルにおけるレーダーの有無を確認し、レーダーが無いと確認してからはじめて無線LANを運用する。レーダーを検出した場合は10秒以内にすべての送信を停止、別のチャネルへ移動しなければならない。
また、気象レーダーは水平面以外に垂直方向にもパルスを発射するものがあるため、最初の確認時は問題がなくとも、運用している最中に干渉が発生する場合もあるという。このため、アクセスポイントの運用中は継続してレーダーを確認する必要があるほか、直前30分間にレーダーを検出したチャネルの使用を避けるという条件も含まれている。
このようにDFSはアクセスポイント運用中もレーダーの検出を行なうため、通信中の無線LANアクセスポイントであっても気象レーダーを検出した場合にはチャネルが変更され、結果としてインターネット接続中に通信が切断される可能性もある。ただし、大澤氏は「そもそも国内の気象レーダー自体は、全チャネルが使えなくなるほど多い数ではない」と指摘。「気象レーダーは電波が非常に強力なため、ほとんどの場合は初期設定の時点で有無を確認できるだろう」と語った。
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レーダーと共有する帯域を使用するアクセスポイントの条件
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DFSの動作イメージ
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● クライアントは経過措置として新旧チャネルを利用できる
これまでIEEE 802.11aとして利用してきた5.15~5.25GHzは、帯域こそ変わらないものの、チャネルが10MHzずつ変更されるため、旧チャネルに対応した製品では新チャネルに接続できない。この点について大澤氏は、総務省の行なった経過措置を説明。5GHz帯開放から3年間に認証を受けた製品に関しては、アクセスポイントは新チャネルのみをサポートするが、クライアントは旧チャネルのアクセスポイントが存在するときだけ電波が出せるパッシブ運用が認められている。
また、すでに発売されている旧チャネル対応のIEEE 802.11a機器は、ファームウェアのアップグレードによる新チャネルのサポートが6年間の経過措置として認められる。さらに、旧チャネル対応のクライアントについては、新製品と同様3年間は旧チャネルのパッシブ運用が可能になる。
このため、5GHz帯開放以降に発売されるIEEE 802.11aのクライアント端末であれば、チャネル変更を気にすることなく、IEEE 802.11aと名前が付くすべての製品と接続できる。また、すでに発売済みの旧チャネルの製品については、新たに開放された5.25~5.35GHz帯は利用できないものの、クライアント端末はチャネル変更に関係なく5.15~5.25GHzのアクセスポイントへ接続可能だ。
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3年間の経過措置としてクライアントは新旧チャネルを利用できる
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新旧チャネルとデバイスの関係
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● 無線LANのスループットは「距離」「速度」以外に「干渉」も課題
大澤氏は最後に、5GHz帯開放の意義について説明。無線LANとして幅広く普及したIEEE 802.11規格だが、ユーザー数やシステムの拡大に加えて、今後利用が進むと見られる無線IP電話やストリーミングなどの登場により、無線LANの干渉問題が大きな課題になりつつあるという。
ただし、IEEE802.11の規格では、物理層とMAC層という低いレイヤについては規定されているものの、干渉についての規定はされていない。大澤氏は「携帯電話などであれば、事業者が一環して提供しているために、干渉問題も当たり前のようにクリアしているが、無線LANではなかなか難しい」とコメント。「これからIEEE 802.11を広げていくためには、高スループットのIEEE 802.11nも重要なトピックだが、チャネルの問題は同じくらい大きな問題でないか」との考えを示した。
無線LANのスループットに関しても、これまでは速度と距離を対象としており、スピードは犠牲になるが距離を向上するAtherosの「eXtended Range」技術、距離は出ないがスループット向上を図るMIMO、MIMOでスループットを高めながらスマートアンテナで距離を改善するIEEE 802.11nなどが登場しているが、「実際には干渉によってスループットが落ちるという“縦方向の影響”もある」と大澤氏は指摘。5GHz帯の開放によって無線LANのチャネル数が増えることで、干渉の問題にも大きな効果があるとした。
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5GHz帯拡張の意義
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スループットには干渉の影響も大きい
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関連情報
■URL
WIRELESS JAPAN 2005
http://www.ric.co.jp/expo/wj2005/
Atheros Communications
http://www.atheros.com/
■関連記事
・ AtherosのCTOが語る「デュアルバンドやMIMOが無線LANのトレンドに」(2005/03/03)
( 甲斐祐樹 )
2005/07/14 12:01
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