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インターネットに求められる経営の知識~村井純教授・大前研一氏対談


 「SFC Open Research Forum 2005」では22日、慶應義塾常任理事・慶應義塾大学環境情報学部教授の村井純氏と、経営コンサルタント・UCLA教授の大前研一氏による対談が行なわれた。対談では、インターネットの技術と経営の関係や、インターネットの普及により世界各国が今後どのように変化していくかといった話題について、議論が交わされた。


10年で大きく進んだ日本のインターネット

慶応義塾常任理事・慶應義塾大学環境情報学部教授の村井純氏

経営コンサルタント・UCLA教授の大前研一氏
 村井氏は、今年で10回目の開催となるSFC Open Research Forumを振り返り、「湘南藤沢キャンパス(SFC)は1990年に出来て15年経った。SFCでは当時から学生はインターネットが使える環境にあった。その後、インターネットが一般化して、普通の人がインターネットを使うようになったのが1995年頃なので、その意味ではSFCは5年先取りしていた」と語った。

 大前氏も「SFCの状況は当時から知っているが、SFCは実に革命的な雰囲気を持っていた」述べるとともに、「私が『インターネット革命』という本を出したのは1995年で、30万部も売れた。けれども、ほとんどの経営者からは『我々の生きているうちには、この本に書かれているようなことは起こりませんよね』と言われた。今読むともう古臭いことが書いてあるのだけれど、当時の経営者には夢物語だと思われていた」と語り、1995年からの10年間は革命的な時間であったという感想を述べた。

 村井氏は「その10年のうち最初の5年間は、国際的に見て遅れをとってしまったと思う。1995年から2000年までの間は、日本ではインターネットの技術は進歩したけれども、社会への展開が遅れたと思う」と語った。一方、大前氏は「しかしその後の5年間では、日本は大きく進歩したと思う。それは携帯電話の普及で、日本のインターネット文化には携帯電話から入ってくる人が増えてきている。かつてはインターネット大陸とは離れた島であった携帯電話が、つながってきて1つになってきている。この5年の間に、携帯電話やデジタルカメラといったデバイスがどんどんインターネット大陸に入り込んでいて、その中心にいるのが日本だ。このような国は他にない」と語り、日本のインターネットがこの間に大きく進歩したと指摘した。


すべての人に経営を学んでもらいたい

 経営的な側面から見た産業界の今後について大前氏は、「経営者がはたして3年後、5年後を見えているかということが気になる。変化についていけなくなった産業の『突然死』を心配している」と語り、従来の業界の延長線上にはない発想が必要だと述べた。

 大前氏は、「重要なことは、数年先がどうなっているのかということを考えるクセをつけることで、例えば5年後のリビングがどうなっているかというところから考えればいい。5年後に出るような技術や製品は、だいたいもう準備が始まってる。iPodに対してソニーも『うちの方がいいものが作れる』と考えたが、レコード会社を抱えているので1曲単位でバラ売りするなんてとんでもないと止められた。Napsterが出てきた時点で、今のようになることはわかっていたはずなのに、それを見誤った」として、変化を見通すことが重要であるとした。

 村井氏が、「我々は、テクノロジーについては先を見通すにはどうすればいいかということはわかるが、ビジネス的な視点はどうやって身に付けていけばいいのか」と問いかけたのに対して大前氏は、「IT系で失敗する人は、たいていビジネスのことがわかっていない。例えば投資家の心理であるとか、顧客が何を求めているのかを知ることだとか、自分の会社の成長曲線を描いてそこに必要な人材や資金を集めるといったことはビジネスの常識なのだが、それを知らないために失敗する。とにかく、あらゆる人に経営の勉強をしてもらいたい。経営の勉強はそんなに難しくない」と語り、経営の重要性を説いた。

 「ではどのように経営を勉強すればよいのか」と尋ねた村井氏に対しては、「北欧では、そうした経営の教育をそれこそ幼稚園の頃からやっている。例えば、八百屋を経営するのに、どうすればお客さんが来るかといった所から考える。いきなり経営学の講義なんか受けてもダメで、そうしたことから培われる経営マインドがなければうまくいかない。コンピュータの分野にもそういうところがあると思う」として、身近なところからビジネスという視点で物事を考えることから始めるべきだとした。


「Google的な世界」の影響力が大きくなる

 村井氏の「世界との関係の中で、インターネットのテクノロジーが出てきて今後はどのように変わっていくのか」という質問には、大前氏は「最近の10年間で言えば、世界の地域に差がなくなってきた。最大のものはGoogleだと思う。例えば私は各国で講演の機会があるが、どこの国に言っても講演前に『大前さんはクラリネットを演奏されるそうですが』といった同じ質問をされるようになった。これはどうも私のプロフィールをGoogleで調べているからで、世界の人が同じものを見るようになった。Google的な世界というか、これからますますこういう影響が大きくなってくると思う」と答えた。

 各国の動向については、大前氏は「北欧が教育によって大きく変わった。また、北欧諸国をよみがえらせたのはインターネットの普及だと思う」とした。村井氏は「インターネットについてはロシアも強いと感じる。日本はファーイーストと呼ばれるが、ネットワーク的に見ると太平洋回線の端にあるファーウエストの位置にある。ロシアに回線を引いてヨーロッパにつなげられないだろうかと考えている」とした。

 また、大前氏は「中国は今後は一人っ子政策がボディブローのように利いてくる可能性があるが、製造業については中国が強い。一方のインドは若い連中が元気で、技術や経営の面でも強い。インドと中国はまるで違う国になっている」として、中国とインドの可能性についても語った。

 講演の最後には、「大学は今後どうなっていくと思うか」という村井氏の質問に対して、大前氏は「世界の最先端地域を見ると、必ずそこには大学があり、中心になっている。その意味では、日本の大学は怠慢だと感じる」と語り、大学への奮起を促して対談を締めくくった。


関連情報

URL
  SFC Open Research Forum 2005
  http://orf.sfc.keio.ac.jp/


( 三柳英樹 )
2005/11/22 21:40

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