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地理情報システムにも「2.0」の流れ、“国産Google Maps”が実現するか!?


 財団法人日本情報処理開発協会(JIPDEC)とgコンテンツ流通推進協議会の協催によるシンポジウム「g-Contents WORLD 2006」が10月16日・17日に開催され、SVG電子地図を活用するためのデモが行なわれた。また、マイクロソフトやヤフーも出席し、自社の地域情報サービスについて講演した。


「地理空間情報活用推進基本法」で、国が整備した基盤地図の共用が可能に

SVG MAPコンソーシアムが提供するSVG電子地図ビューアのデモ。IE7でSVG地図を表示している
 「g」は「Geographic」の頭文字で、gコンテンツとは「位置情報に関係したコンテンツ」を表わす。従来、このような情報を扱うために必要な地理情報システム(GIS)の開発・流通は、限られた事業者においてそれぞれ独自の仕様で行なわれており、基盤となる地図(「基盤地図情報」「背景地図」などという)の整備から地域情報などコンテンツの制作・流通に至るまで、事業者ごとに閉じられた縦割りのシステムの中で進められてきたという。

 gコンテンツ流通推進協議会は、このような状況を改善し、多くのコンテンツ事業者がgコンテンツ市場に参入できる環境を整備することを目指して2003年3月に発足した。具体的には、gコンテンツの提供に必要な共通の相互流通基盤の整備・促進およびそれに必要なデータ公開の呼びかけ、事業者間の交流機会の提供や支援などを行なっている。

 基盤地図情報の流通については、今臨時国会で成立が見込まれている「地理空間情報活用推進基本法」によって共用化へ向けて前進しそうだ。同法案は、地理空間情報の活用を推進するための施策について基本理念を定めたもので、基盤地図情報の整備に必要な施策を国や自治体が講ずることとしているほか、国が保有する基盤地図情報を原則としてインターネットを利用して無償で提供することが盛り込まれている。

 まずは、自治体などが国庫で整備した基盤地図情報を、国民の利便性を高めることを目的に公開していくことになる。さらには、関連法の見直しが必要であるために少し時間はかかるものの、自治体などの公共機関だけでなく、民間の企業も基盤地図情報の無償提供を受けて商用サービスなどで使用できるようになることも期待されている。

 こういった流れの中で、基盤地図情報を流通するフォーマットとして注目されているのがSVG(Scalable Vector Graphics)だ。すでに国土交通省では、オルソ画像(もともとは中心投影である航空写真画像を、地図と同じ歪みのない正射投影画像に変換したもの)のSVGサービスで全国データを提供している。また、国土地理院でも内部的にはすでにSVG電子地図データを完成。官民が共同で開発中のSVGゲートウェイサーバーによって、これらの数値地図や航空写真のSVGコンテンツの配信が2006年度中にも開始される予定だという。

 このようにSVGによる基盤地図情報が整備される一方で、SVG地図を表示できる環境が普及すれば、Webの標準的な技術でgコンテンツを流通するための基盤が実現することになる。今回のシンポジウムでは、「SVG MAPコンソーシアム」が2006年度中の公開を目指して開発を進めている「SVG電子地図ビューア」のデモが行なわれた。このビューアの開発は、JIPDECの補助事業として行なわれているものだ。

 今回のデモでも実際に、国土交通省のオルソ画像のSVG背景地図や国土地理院の電子国土SVG背景地図データのほか、ゼンリンやインクリメントPのSVG背景地図データなどをSVG電子地図ビューアで表示する様子を紹介した。


IEでSVG地図を表示するためのプラグインを無償公開予定

FirefoxによるSVG地図の表示。ただし、地理座標系がサポートされていないため、単なるイラストデータとして地図画像を表示しているという
 SVG MAPコンソーシアムには、カイ・ソフトウェア、ゼンリン、インディゴ、セック、マイクロソフト、インクリメントP、オークニー、YRPユビキタス・ネットワーキング研究所、KDDIが参加しているほか、国土交通省と国土地理院等も協力し、SVG電子地図によるオープンなWeb GISの実現を目指して活動を進めている。国が提供するSVG地図と“マッシュアップ”したgコンテンツの流通が促進されることを狙い、まずはSVG電子地図ビューアを広く普及させたい考えだ。

 シンポジウムで展示されたビューアは、Internet Explorer 7(IE7)用のプラグインとして組み込まれており、ブラウザ上に表示した航空写真地図上に地下鉄の駅の位置を表示するなどのデモを行なっていた。このプラグインは無償での公開を予定しており、IE 6にも対応する。コンソーシアムでは、APIやチュートリアル、サンプルコードなども公開し、GISベンダーらがSVG地図を利用したサービスなどを開発するのをサポートする。

 なお、SVGをサポートしているWebブラウザとしてはすでにFirefoxやOperaがあり、会場ではこれらのブラウザでもSVG地図を表示していた。ただし、これら従来のSVGビューアではGeographic Coordinate Systems(地理座標系)をサポートしていなかったのに対して、コンソーシアムが公開予定のSVG電子地図ビューアではこれをサポートしている点が特徴だ。

 地理座標系は、SVGに保管された2次元ベクトル図形の描画座標を地理的空間座標として扱うためのメタデータの記述規格で、SVG 1.1から正式にサポートされた。これに対応したSVGビューアでは地理的空間座標(緯度・経度)を扱うことが可能になり SVG文書を電子地図として利用することが可能になる。すなわち、SVGコンテンツに地理座標系が設定されていた場合、そのグラフィック上のある点の緯度・経度がわかるわけだ。

 地理座標系の代表例としてはGPSの緯度・経度座標がり、GPSで測位した位置情報を逆にSVG上にプロットしたり、その位置を中心にスクロールできる機能なども実現する。

 さらに、ハイパーレイヤリング機能によって、地理座標系が設定された複数のコンテンツの緯度・経度を解釈して、ずれることなく重ね合わせることが可能だ。背景地図、経路情報、建物情報などを最終的にはイラストレーションとして地図上に合成して表示する。なお、重ね合わせるコンテンツの呼び出しはURL指定によって行なわれるため、コンテンツが複数Webサーバーに分散して公開されている場合にも、URL指定のみで呼び出すことが可能だという。「シンプルなハイパーリンクによる情報のマッシュアップが可能になるため、さまざまな用途に適したコンテンツを容易に作成できる」としている。


YRPユビキタス・ネットワーキング研究所がRFIDの実証実験などで使っている端末「ユビキタス・コミュニケータ」でもSVG地図を採用 街頭に設置するデジタル地図案内板の実証実験でも、SVG地図が使われているという

すでに普及している「Google Maps」ではだめなのか?

パネルディスカッション「Where 2.0とWEB 2.0とgコンテンツ」の様子。向かって左から6人目がインディゴの松澤有三氏
 日本では、携帯電話などでFlashを使った地図サービスが普及しているが、SVG地図の強みはやはり、Webのオープンな標準規格を採用していることであり、世界的に見れば、SVGは電子地図のデータ交換フォーマットとして標準だという。

 また、地域情報を提供する際の基盤として利用できる地図のプラットフォームとしては、「Google Maps API」がすでに広く利用されている。ただし、Google Mapsはインターネットに接続しなければ使えないという制約があるのに対して、SVG地図はデータの提供形態にもよるが、イントラネット内などにデータを保有して利用する活用法も考えられるとしている。

 Google MapsとのSVG地図との違いについては、「Where 2.0とWEB 2.0とgコンテンツ」と題したパネルディスカッションの中でも言及された。この中でインディゴの松澤有三氏は、「大半の人は『もう、Google Mapsでいいじゃないか』というあきらめに似た感情を持っていると思うが、実際にはいろいろと問題点がある」と指摘する。

 具体的には、セキュリティ面のほか、コンテンツをGoogle Mapsで扱えるJavaScriptのかたちにすることにより、データ量が圧倒的に削られてしまうという。その結果、Google Maps上でのコンテンツ表示方法は、従来のGISからすると「非常にプア」なものになる。それまで築いてきたGIS資産をGoogle Maps上で提供すると情報量が低下してしまうことがあるとし、「Google Mapsだけで使えるデータにするのではなく、オープンスタンダードを採用したデータに移行していくことが重要だ」と訴えた。

 なお、松澤氏によると、現状でもG-XMLプロトコルや地理情報標準、標高データなどがWeb上で流通しているが、実際はこれらのデータをそのまま使っている人はほとんどいないとう。「これらは基本的にB2Bのデータ交換のためのフォーマットで、ユーザーにビジュアルに訴えかけるようなデータではない。コンシューマにとって使いづらいものとなっている」と指摘する。

 そこで松澤氏は、セマンティックウェブ(RDF、Microformats)を利用してデータの品質を落とすことなく、道路ネットワークデータや標高データをビジュアルで表現し、これらを合成してユーザーにとってインパクトのあるデータを提供してくことが、Web 2.0の流れの中で重要だと説明した。


関連情報

URL
  g-Contents WORLD 2006
  http://www.g-contents.jp/2006/0index.htm
  地理空間情報活用推進基本法案
  http://www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/g16401039.htm


( 永沢 茂 )
2006/11/14 17:54

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