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東京大学×ヤフー、コンテンツの未来を語る特別講義


 東京大学で26日、メディアコンテンツに関する学部横断型教育プログラムとヤフーによるパネルディスカッション「次世代インターネットポータルビジネスの展望」が開催された。東京大学の学部後期課程(3〜4年生)向けの講義「メディアコンテンツ特別講義1」(全13回)の最終回として行なわれたもので、パネルディスカッションでは東京大学の教授とヤフーの社員によるインターネットの今後の姿などに関する議論が交わされた。


ネットワーク中心からコンテンツ中心の時代へ

(左から)東京大学の相澤清晴教授、原島博教授、石塚満教授、ヤフーの井上俊一氏、大蘿淳司氏
 メディアコンテンツに関する学部横断型教育プログラムは、東京大学が2006年冬学期から設置した、コンテンツ創造教育に関する講義。2006年10月からヤフーの社員を講師として迎え、「メディアコンテンツ特別講義1 インターネットポータルビジネスの現状と未来」と題して行なってきた講義の最終回として、パネルディスカッションを行なった。

 パネルディスカッションの冒頭では、原島博教授が総論として、コンピュータのこれまでの歴史と今後の展望を紹介。最初の実用的コンピュータであるENIACが誕生してからの約60年間を、大型計算機が主役だった「システム中心の時代」から、個人でもコンピュータを持てるようになった「PC中心の時代」を経て、インターネットの登場により「ネットワーク中心の時代」へと変遷してきたと説明。ここまでの時代はある意味ではインフラ整備の期間だったが、今後はこのインフラの上に乗るコンテンツが主役となる「コンテンツ中心の時代」が訪れるという予測を示した。

 その上で、原島氏は「この講義にもコンテンツを手掛けたいと思って受講している学生は多いと思うが、そのためにはコンテンツの技術だけを知っていればいいというものではない」として、コンテンツ以外のネットワーク技術やデバイス技術などの知識の必要性を強調。「この分野は垂直統合で、上から下まで通して何ができるかというソリューションを示すことが重要。例えばiPodは単なるポータブル音楽プレーヤーではなく、iTunesやiTunes Storeという統合されたソリューションを提供している。これからの新しいコンテンツはそうした所から生まれる」と述べた。


「究極の検索エンジン」の姿とは

 パネルディスカッションのコーディネーターを務めた相澤清晴教授は、パネルディスカッションのテーマとして「“究極”の検索エンジン」「“究極”のユーザー創造コンテンツ(CGM)」「“究極”のインターネットコミュニティ」を挙げ、参加したパネリストがそれぞれの意見や研究分野を紹介した。

 石塚満教授は専門分野である人工知能の研究の中から、3Dキャラクターを利用した擬人化エージェントのデモを披露。開発した「MPML」という記述言語による、3Dキャラクターエージェントを利用したコンテンツの応用例を紹介した。また、検索関連の分野については、Web上にある各国語の文章の意味を機械的に捉えて共通化する「Web上のエスペラント語」と呼んでいる取り組みを紹介し、人工知能分野の研究がセマンティックWebの分野に応用されていくという将来像を示した。

 ヤフーの検索事業部長を務める井上俊一氏は、「検索エンジンは、基本的には誰かが考えたことを、他の誰かが検索できるという仕組み。誰かが考えたり話したりしたことが文字になり、それを検索しているのが現在の検索エンジン」と説明。その前提に立って「究極の検索エンジン」を考えるならば、「サーチ・ザ・ブレイン、誰かが頭で考えたことを検索できるようになる」ことが究極の姿ではないかとした。

 ヤフーのマーケティング本部長を務める大蘿淳司氏は、究極のCGMとは「人生そのもの」になるのではないかと説明。「人が一生のうちにアウトップットする情報をすべて記録できる『ライフタイムストレージ』を考えると、それを誰に見せるのかというアクセスコントロールの問題も重要になってくる」と述べた。その上で、コミュニティについて「インターネットは距離を無くしたが、そのために出会っていい人と出会ってはいけない人の区別もつかなくなった」として、自分の行動や嗜好などから相手との「距離」をコントロールできる仕組みが必要ではないかとした。


ネットとリアルをどのように結ぶかが今後の課題

 パネルディスカッションの後半では、現状のインターネットの問題点や今後の課題などについて、様々な意見が交換された。

 原島氏は、「ネットに要求したいことは、自分を解放すること。毎日たくさんのメールを読まなければならないといったように、今はメディアに振り回されている。また、クリエイティブな時間も失われている。検索は結局のところ、他人の考えを仕入れているだけ。自分で考える時間が必要だ」とコメント。井上氏もこれに賛同して、「ネットを使って本当に便利になったのかと思うことがある。情報をコンスーム(消費)するばかりでプロデュースしていない。ネットは本当は自分の時間を空けてくれるもので、その空いた時間に何をするのかを考えなければいけない」と述べた。

 大蘿氏は、「これまでの新聞や雑誌といったメディアには、それぞれに範囲や制約があった。インターネットも、使う人に対しての心地良い範囲をコントロールすること、うまく距離を作ってあげるといったことも必要になるのでは」と述べた。石塚氏は、「情報は指数的に増えているが、それを人間が選り分けるには限界がある」として、情報大爆発と呼ばれる時代においては技術的に解決すべき課題が多いとした。

 原島氏は、「情報の大洪水を『どう生き抜くか』ではなく、『そこから何を生み出すか』の観点が欲しい」として、人間の能力をどのようにして引き出すかがメディアの役割になると主張。例えば日本ではこれからシニア層が増えるが、シニア層の知恵を引き出すことができれば大きな力になるだろうとした。

 井上氏は、「現状では、検索して出てくるのはネットの上にあるものだけ」だとして、ネットワークの外にある意見をどのように取り込むかは今後の大きな課題だと説明。「Yahoo!知恵袋」のようなナレッジサービスも、そうした部分を補完する役割を果たすものだとした。学生からの「まだネットにつながっていない人に参加してもらうために、ヤフーで取り組んでいることは」という質問には、「ヤフーはネットにつながっている人ためののサービスなので、取り組むとなるとインフラやデバイスの協力が必要。コタツに座ってテレビを見ているだけで、実はネットに参加しているというような、PC以外の分野への取り組みを進めていかなければならない」と述べた。

 原島氏は、「今までのネットには参加できなかった人を、うまく取り込めむための仕組みにはまだまだ可能性がある。たとえば2ちゃんねるには参加できなかった人も、mixiなら参加できたりであるとか。地域社会のつながりであるとか、リアルワールドをネットがサポートできるようになれば、さらに広がるのではないか」とコメント。相澤氏はまとめとして、「リアルとネットの空間をどう結ぶかということが、今後のコンテンツやビジネスにおいても重要になってくる」と語り、パネルディスカッションを締めくくった。


関連情報

URL
  メディアコンテンツ特別講義1 インターネットポータルビジネスの現状と未来
  http://content-gakubu.iii.u-tokyo.ac.jp/2006winter/mediacontentsp1.html


( 三柳英樹 )
2007/01/29 16:58

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