幕張メッセで開催中の「CEATEC JAPAN 2007」で3日、次世代検索技術の開発を目指して経済産業省が進める「情報大航海プロジェクト」についての講演が行なわれ、慶應義塾大学環境情報学部教授の小川克彦氏がプロジェクトの意義と概要について解説した。
● 次世代検索は「量から質へ」、知的情報サービスの実現を目指す
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慶應義塾大学環境情報学部教授の小川克彦氏
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情報大航海プロジェクトは、経済産業省が2005年12月から開催した「ITによる『情報大航海時代』の情報利用を考える研究会」の参加メンバーを中心として、次世代の検索・解析技術の開発と、その技術を用いた事業について実証を行なうことを目的としたプロジェクト。現在、産学協同で技術開発や制度的課題の解決、実証事業などを進めており、次世代検索の共通技術のオープン化、標準化、法制度の整備などを行ない、新たなイノベーション創出環境の確立を目指すとしている。
小川氏は、「現在の検索技術は、数百億のページを収集して、数十万台のサーバーで検索を行なうといった、いわば『量』の検索だ」として、この手法だけでは情報量のさらなる増大に伴い、キーワードでWebページを検索するコストパフォーマンスは低下していくと分析。これに対して、情報大航海プロジェクトのコンセプトは、「個人の生活や仕事、企業に特化した活動など様々な情報を組み合わせ、個人の生活や企業活動の『質』を向上させる情報サービスの提供にある」と説明。単なるキーワード検索ではない「知的情報サービス」の実現がプロジェクトの目標だとした。
知的情報サービスの方向性としては、映像検索や対話型検索など従来のテキストベースの検索とは異なる価値を提供する「バリュー」、リアルタイム情報など各種情報の統合的な解析により新たな社会インフラとなるサービスを提供する「ソーシャル」、ユーザーのプロファイルや行動履歴などからその人に合わせた情報を提供する「パーソナル」の3つの方向を提示。携帯電話やSuicaなどのICカードが普及しているという日本ならではの特徴を活かし、位置情報や時間情報、個人情報をプライバシーに配慮した上で用いることで、新たな情報サービスを創出していきたいと語った。
● 次世代の検索のあり方をテーマとしたプロジェクトの実証事業が展示
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沖電気工業は「ラダリング型検索サービス」を展示
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CEATEC JAPAN 2007の展示会場では、情報大航海プロジェクトに参加する企業や大学などにより進められている実証事業の取り組みが紹介されている。
沖電気工業では、ユーザーが次々に質問に答えていくことで、探している情報にたどり着ける「ラダリング型検索サービス」を展示。デモでは転職サイトをサンプルとして、ユーザーに対して「前職は何ですか?」「休暇の希望はありますか?」といった質問を投げかけ、これに対してユーザーが回答していくことで、ユーザー自身の希望を明確にし、適切な求人情報を表示するといった例を紹介している。
質問文はユーザーが入力した回答によって変化していくため、ユーザーの希望をより深いレベルまで聞くことが可能になるとしている。また、ユーザー側の回答文に対しては自然言語処理技術が用いられ、自由文の入力が可能となっている。現時点では回答と検索部分のシステムのみとなっているが、今後はサービス提供者側に対して質問文や選択肢を作成するための支援プログラムなども検討しているという。
東京急行電鉄では、非接触式ICカード「PASMO」を活用した連携型サービスを展示。自動改札や料金の支払いなどの行動情報をサービスと連携させ、駅に設置したICカード読み取り機にカードをかざすと、普段利用する駅周辺の飲食店情報が表示され、割引クーポンの発行や店の混雑状況を表示するといったサービス例を紹介している。
シャープでは大画面テレビの高精細画面を利用した、リモコン操作による旅行サービスの検索デモを展示。大型高精細画面であることを活かして、観光地の映像を画面に複数まとめて表示。ユーザーが興味のある映像をリモコンで選択すると、さらにその映像に関連する映像の候補が表示されていくという形で、ユーザーが興味のある映像を選んでいくことでコースが選択され、それに近い旅行ツアーの情報が表示されるといった例を紹介している。
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東京急行電鉄は「PASMO」を活用した情報の連携サービスを展示
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シャープは大画面テレビを活用した映像検索型サービスを展示
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関連情報
■URL
CEATEC JAPAN 2007
http://www.ceatec.com/
情報大航海プロジェクト
http://www.igvpj.jp/
2007/10/03 19:24
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