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イベントレポート
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【 2009/06/11 】
アナログ停波後の周波数帯域を利用したマルチメディアサービス
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「Interop Tokyo 2009」展示会が開幕、今年はひろゆき氏の講演も
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DNSの最新動向を報告、トラフィック増加などで運用者の負担増大も


 秋葉原コンベンションホールで開催中の「Internet Week 2007」で19日、カンファレンス「DNS DAY ~運用管理のあり方~」が行なわれた。今年のDNS DAYは、従来にはなかった招待講演を含めた3部構成。満席の会場で、さまざまな情報が交換された。


JP DNSは安定運用を継続中

 日本DNSオペレーターズグループ(DNSOPS)代表の石田慶樹氏による司会進行で始まった最初のプログラムは「DNS関連動向Update」。これは、DNS関連で、この1年間に起こった事柄や動向を解説するものだ。


日本DNSオペレーターズグループ代表の石田慶樹氏 WIDEプロジェクトの加藤朗氏(左)と日本レジストリサービスの松浦孝康氏(右)

 最初の報告は、WIDEプロジェクトの加藤朗氏による「Root DNS サーバ」。ルートDNSサーバーにおいてIP Anycast技術を用いた実装が増えており、現在、世界で132地点でサーバーが稼働していること、そのうちの6台が日本にある(日本は恵まれている)ことのほか、ルートDNSサーバーにおけるIPv6対応状況などが報告された。

 続く、日本レジストリサービス(JPRS)の松浦孝康氏による「JP DNS Update」では、日本のドメイン名である「.JP」に関して報告された。ニューヨーク拠点でIP Anycast技術を用いたJP DNSサーバーの評価運用実験を行ない、分散効果がはっきりと確認できたこと、集中監視センターを構築して運用を開始したこと、JPのゾーン情報を秘密鍵を使いより安全に転送できるようにしたことなどが説明された。


クエリ数とドメイン数を比較したグラフ 東京大学情報基盤センターの関谷勇司氏(左)と日本ネットワークインフォメーションセンターの川端宏生氏(右)

 また、統計情報としてクエリ(DNSのリクエスト)数とドメイン数の伸びを比較したところ、ドメイン数の伸びよりもクエリ数の伸びが年々高くなっており、「DNSを利用したアプリケーションが増えているのでは?」という推測がなされるなど、多くの話題が提供された。

 その後は、東京大学情報基盤センターの関谷勇司氏によるAS112 Projectの報告や、DNSOPS.JP代表幹事の石田慶樹氏によるDNSOPS.JPの活動報告、日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)の川端宏生氏によるIPアドレス関連の報告が行なわれ、会場からはさまざまな意見や質問が投げかけられた。


DNSに要求されることは大きくなっている

米NeuStarのEdward Lewis氏
 第2部となる招待講演は、ドメイン名のレジストリでありDNSのサービスも行なっている米NeuStarのEdward Lewis氏による「Managed DNS Services」。Lewis氏は1980年代からDNSにかかわり、DNSSECなどでの貢献をしてきた権威者の一人として、また、DNSの運用をサービスとして提供している立場として講演した。

 Lewis氏は最初に「Managed DNS」とは何かということを話した。新しい言葉であるためその定義を行ない、続いて、このサービスの顧客は誰か、そしてサービスそのものについての説明を行なった。「Managed DNS Services」はすでに北米で提供されており、パフォーマンスや管理の容易さを狙ったプロダクトだということだ。

 Lewis氏が述べたことのうち、DNSに関しては次のようなことを示している。DNSの運用は、経験を持った者が行なうことが好ましいこと、Anycast技術を使うことでモニタリングを含めた管理は複雑になっており、そうしたことに対処していく必要があること、DDoS攻撃など、DNSに対する攻撃の可能性が増大しており、それらにも対応していかなければならないことなどである。

 また、顧客からの個別のリクエストにも応えられる必要があること。IPv6に関しては全体として対応を進めていく必要があることなども述べている。

 会場からは、サービスそのものに対するものを含め、非常に多くの質問が投げかけられたが、Lewis氏はそのひとつひとつに丁寧に答えを返していた。


DNS運用管理者の地位向上を

日本レジストリサービスの米谷嘉朗氏
 第3部は、JPRSの米谷嘉朗氏をコーディネーターとした「事例紹介・パネルディスカッション」。このプログラムでは、各パネリストがそれぞれの立場でDNSについて現場を紹介し、その後に議論を行なう形になる。

 各パネリストの役割は、さくらインターネットの大久保修一氏がデータセンターにおいてDNS運用をする立場、GMOインターネットの小島育夫氏がドメイン名レジストラとしての立場、MKIネットワーク・ソリューションズの仲西亮子氏がエンタープライズサービス提供者の立場、そしてライブドアの伊勢幸一氏が利用者の立場を分担する形となった。

 冒頭で米谷氏はまず、最近の動向として、DNSに高い可用性が求められていること、トラフィックが増えていること、新しいレコードやデータ形式が増えていること、DNSを対象とした攻撃が増えていることなどがDNS運用管理者の負担増加の理由となっており、それらにどう対処していけばよいかを話し合うことを今回のパネルディスカッションの動機として紹介した。


さくらインターネットの大久保修一氏(左)とGMOインターネットの小島育夫氏(右) MKIネットワーク・ソリューションズの仲西亮子氏(左)とライブドアの伊勢幸一氏(右)

 各パネリストがそれぞれの立場で発言した後、DNS運用管理者の抱える悩みや、DNS運用サービスの良い点・至らない点、課題解決といったテーマについて議論が交わされた。設備の強化や構成の悩み、日々続く新しい情報との格闘、メンテナンス、顧客とのやりとりなど、さまざまな問題が浮かび上がるが、これといった特効薬があるわけではない。話の骨子は専門家のサービスを使いましょうということだが、失敗して叱られることはあっても、滅多に誉められない仕事といった苦労話なども飛び出し、日頃の悩みを共有する形にもなった。

 会場からも、運用者としての経験を共有する仕組みが欲しいといった要望から、優れたオペレータを評価し、表彰する制度を作ってはどうかといった提案までさまざまな意見が幅広く出されたが、総じて、DNS運用管理者のモチベーションを上げるための意見が大勢を占めた。

 DNSは、インターネットという社会基盤を支える大事な仕組みのひとつである。その運用を、いわば縁の下の力持ちとして支えている数多くのオペレータに我々はもっと感謝の意を表すべきなのかもしれない。


お弁当を食べながらDNSについて質疑応答、ランチセミナー開催

セミナーは、日本レジストリサービスの民田雅人氏(右)と森下泰宏氏(左)が担当

用意されたお弁当
 昨年の「Internet Week 2006」のプログラムを見ると、午前と午後のインターバルは13時から15時までの2時間となっている。参加者にしてみれば慣れない地での食事は不自由だし、どうしてもうろうろするため時間の使い方も思うようにならない。しかし、これだけ昼休みを長く取ってしまうとプログラムの作り方に影響してしまうのは確かだろう。実際、最後のBoFまで参加すると帰りは20時半を過ぎていた。

 その対策の検討が行なわれたのか否かは知る由もないが、今年のInternet Week 2007では、協賛企業による「ランチ付き無料セミナー」というプログラムが登場した。そのおかげか、午前と午後のインターバルは13時半から14時半の1時間に短縮され、BoFの終了時刻も19時半となっている。

 19日に行なわれたランチ付き無料セミナー「あなたのギモンにお答えします!『ランチのおともにDNS』」は、DNSに関する技術的な質問であれば、日本レジストリサービス(JPRS)の技術者がその場で回答するという内容だ。事前に投稿されたという4つの質問(グルーレコードの設定に関して、DNS応答シミュレーション、DNSの512バイト問題関連、digコマンドの出力について)がまず回答され、続いて会場からの質問を受け付ける形となった。

 会場からは、「DNSサーバーの能力はどのように見積もればいいのか」「設計する際に目安となる情報はあるのか」「DNSサーバーの変更はどのような手順とタイミングで行なうのがいいのか」といった質問が挙がった。いずれの質問もかなり専門的な内容だあったが、丁寧な回答がなされ、食事の効果も手伝ってか和やかな雰囲気でセミナーが進行した。こうした企画が無料で受けられるのもInternet Weekならではかもしれない。


関連情報

URL
  Internet Week 2007
  http://www.internetweek.jp/

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「DNS Day」では、安定運用とセキュリティが最大の関心事に(2006/12/07)


( 遠山 孝 )
2007/11/20 16:32

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