秋葉原コンベンションホールで開催中の「Internet Week 2007」で20日、「インターネットと著作権~みんなのための著作権制度~」と題したカンファレンスが行なわれた。このカンファレンスでは、デジタルコンテンツ配信が多様化する中で、コンテンツの保護とユーザーの利便性を共存させるための方向性について考えることをテーマとしている。
プログラムは、前半が現状の把握と問題の整理、後半ではそれを踏まえたパネルディスカッションなどという構成となっており、午前中には法律・技術・政策などの側面から、ネットワークと著作権を巡る状況について解説が行なわれた。
● 壇弁護士が著作権法の基礎知識を解説、Winny事件にもコメント
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壇俊光弁護士
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プログラムではまず、Winny開発者の裁判で弁護団の事務局長を務めている弁護士の壇俊光氏が登壇。著作権法の基本的な構造や、関連する判例の紹介などを解説した。
壇氏はまず、「著作権というのは、複製権や上映権、貸与権などの個々の権利(支分権)の総称で、支分権ごとに保護される範囲や存続期間、権利が制限される範囲は異なります」といった基本的な部分から著作権制度を説明。記事の見出しやフォントタイプなど、著作物性はどこまで認められるかといった問題や、著作権の保護期間に関する問題などを、判例を交えながら解説した。
ネットワーク配信などのビジネスにおいては、事業者が著作権を間接的に侵害したとされる間接侵害が問題となることが多いとして、カラオケを設置した店や装置のリース業者が訴えられた「クラブキャッツアイ事件」「ナイトパブG7事件」、P2Pソフトを開発・公開していた企業が著作権侵害で訴えられた「ファイルローグ事件」の判例を紹介。これらの判例では、民事においては直接の侵害者と同視できる場合しか責任を負わないとされているが、刑事事件における幇助という概念は間接的に関与した者を広く含んでおり、刑事法と民事法の逆転現象が起きているとした。
その上で、Winny開発者が著作権法違反の幇助に問われた事件については、「Winnyに匿名性があるから有罪とか、作者に著作権侵害の意図があるから有罪になったという話はすべて誤りだ」として、判決では、1)不特定多数に悪用されている、2)社会的に問題があるとされている、3)それを認識・認容して技術提供した――ことが幇助にあたるとされていると説明。「この法理は、悪用者が多かったり、社会が悪と言えば、中立的な技術であっても犯罪者になることを真正面から認めた判決だ」とコメントした。
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民事で責任を負わない場合でも「幇助」とされる可能性
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Winny事件について
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● 中村修教授は「身内以外はすべて敵」に向かう保護技術に警鐘
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慶応義塾大学の中村修教授
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慶応義塾大学教授の中村修氏は、デジタルコンテンツやネットワーク流通における著作権保護技術を解説。アナログ時代から現在に至るまでの保護技術について概説した。
保護技術の方向性としては、アナログ時代に採用されたマクロビジョンやCGMS-Aといったコピーガード技術には制限を回避する手法があり、DVDに採用されたCSSも暗号が解読されるなど、保護技術とそれを回避しようとする動きが繰り返されてきたと説明。こうした中で、より強固な保護技術が要求されるようになり、コンテンツ自身を保護するDRM、放送波を保護するB-CAS、機器間の伝送を保護するDTCP、家庭内LANでDRM保護されたコンテンツを伝送するためのDTCP-IP、といった仕組みが登場してきたという状況を説明した。
また、現在ではさらに、機器からモニターに接続する部分には「HDCP」、PC内部ではソフトウェアとグラフィックボードの間に「COPP」といった著作権保護の仕組みが取り入れられるようになり、デジタルコンテンツが移動するすべての経路に対して著作権保護をかけようとする動きが顕著になってきているとした。
中村氏はこうした著作権保護の動きについて、「コンテンツホルダーや機器メーカーなどが『身内以外はすべて敵』といった形で保護しようとしており、それ自体が利権のようになってしまう点が問題。インターネットのようなオープンプラットフォームや、その上で活動するフリーのアプリケーションプログラマーもすべて敵ということになってしまう」として危惧を表明。「技術と社会システムがお互いに反目しあっているように感じる」として、正しい方向に進むためには両者の合意と協調が必要ではないかと語った。
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メディア・流通・機器のすべてにコンテンツ保護がかかるように
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技術と社会システムの両者による合意と協調が必要
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関連情報
■URL
Internet Week 2007
http://internetweek.jp/
( 三柳英樹 )
2007/11/20 18:56
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