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「ひこにゃん調停」に見る著作権問題、みんながハッピーになるためには


 秋葉原コンベンションホールで開催中の「Internet Week 2007」で20日、「みんなのための著作権制度」と題するパネルディスカッションが行なわれた。冒頭では、「国宝・彦根城築城400年祭」のイメージキャラクター「ひこにゃん」をデザインした男性が、彦根市と実行委員会に対して同祭閉幕後に商標使用中止を求めている問題について、「みんながハッピーになるためには」という観点から各パネリストが意見を述べた。


著作権問題の議論では「ユーザー視点」が欠けている

 ひこにゃんをめぐっては、彦根市がキャラクターを使用する際に必要な著作権使用料を無料にすることで、個人や企業を問わずに利用を促進。その後、全国的に認知を得たひこにゃんは、インターネットなどでもグッズが販売されるようになったという。

 一方、ひこにゃんをデザインした男性は、彦根市側が「お肉が大好き」など自らが意図しない性格などを後付けしたことから、「適正なキャラクター管理を怠った」として著作者人格権(同一性保持権)の侵害を主張。11月19日には商標使用中止を求める第1回調停が開かれ、彦根市側が「商標権は実行委員会にあり、法的根拠が無く不当な要求」と反論している。

 この問題について、モデレータを務めた慶應義塾大学デジタルメディア・コンテンツ総合研究機構専任講師の斉藤賢爾氏は、「キャラクターをデザインした著作者、キャラクターを管理する権利者、権利を利用して商品を作っている企業、商品を購入する消費者など、著作権をめぐるすべてのプレイヤーが参加している」と指摘。ひこにゃんをデジタルコンテンツに置き換えた場合、将来このような問題が起こらないようにするためにはどうすればよいのかという質問をパネリストに投げかけた。

 これに対して日本弁護士連合会コンピュータ委員会委員の壇俊光氏は、地方自治体が著作権を扱う際の一般論として、「権利を譲渡してもらうケースが多く、(著作物の)改変についても同一性保持権を保持しないという特約を結ぶことがある」と説明。ただし、著作権制度で問題になるのは、著作物の作者ではなく管理している側の権限が強くなってしまうところだと指摘。また、著作権問題の議論で欠ける点として、著作物を支えているユーザーの視点を踏まえた議論も必要であると語った。


慶應義塾大学デジタルメディア・コンテンツ総合研究機構専任講師の斉藤賢爾氏 日本弁護士連合会コンピュータ委員会委員の壇俊光氏

 一方、慶應義塾大学デジタルメディア・コンテンツ総合研究機構准教授の金正勲氏は、「著作権法は基本的に当事者間の契約。みんながハッピーになる解決策はない」との考えを示した。こうした問題が発生することを防ぐには、「お互いの気持ちを大事にして話し合う」ことか、「米国のように究極の論理性を追求した契約書を作成するのか」のどちらかで対応するしかないと話した。

 「市がクリエイティブコモンズ的にひこにゃんの使用権を開放したことは、著作権的に見て面白い事例」というIT・音楽ジャーナリストの津田大介氏は、ひこにゃんが「予想外のヒット」となったことで、作者が予想できないキャラクターの使用事例が出てきたことが問題であると指摘。キャラクター使用権を開放するようなビジネスについては今後、予想外のヒットなどでキャラクターをめぐる状況が変わったとき、著作権の問題を協議し直すことをデフォルトルールにするなど、「“バッファ”を持った著作権契約」が必要になるのではないかと述べた。

 弁護士の牧野和夫氏は、「あくまでも詮索ではあるが、この問題は『のまネコ』と近いのでは」と指摘した。「彦根市が市民のためにひこにゃんを使うのであれば良いが、作者にしてみれば商業的に走ってしまうのが気に入らないという思いがあったのではないか」。作者が侵害を主張している著作者人格権については、「(他人に)譲渡できないことになっている」として、市との契約の詳細はわからないが、作者の主張が認められるのではないかと語った。


弁護士の牧野和夫氏 慶應義塾大学デジタルメディア・コンテンツ総合研究機構准教授の金正勲氏

みんなのための著作権制度実現には「政策プロセスへの関与」が重要

慶應義塾大学環境情報学部教授の中村修氏

IT・音楽ジャーナリストの津田大介氏
 続いて斉藤氏は、「現状の著作権制度は、メディアの進化に適用する歴史と言われるが、それがユーザーの立場を踏まえていない。著作権制度は資本家のための権利という言い方もされるが、これを改善する道はあるのか」という質問を投げかけた。

 これに対して、「政策は、過去と現在だけでなく、未来の社会全体を大切にする必要がある」という金氏は、将来的にメディアや技術、市場、ユーザーの行動に変化が生じた際、新しい可能性が規制されない政策判断が不可欠であると回答。さらに、米国の政策手段の一例として、「新たな技術やサービスが登場したときには、あえて規制的な判断を遅らせる」という事例を紹介し、日本でも最初から規制するのではなく、何らかの問題が起きるまで見守ることも必要という考えを示した。

 技術によって著作権問題を変えられるのかという質問に対しては、慶應義塾大学環境情報学部教授の中村修氏が、「著作権者は『とにかく俺を守れ』という直球の要求が多すぎる。確かにコピー防止をかけることはできるが、それに注力しすぎるのはあまりコストエフェクティブではないと思う」と回答。コピー防止を破られたらエンジニアの責任とされ、エンジニアが新たなコピー防止技術を開発するために金銭を要求するという流れは悪循環であると話した。理想としては、例えばウォーターマークを導入するのであれば、エンジニアはトラッキングだけに注力し、実際にユーザーを摘発するのは警察などの社会システムで対応するといった協力体制を整えることを挙げた。

 私的録音録画補償金制度の抜本的な見直しを図る文化審議会の「私的録音録画小委員会」に参加している津田氏は、11月15日に締め切られた同小委員会のパブリックコメントを引き合いに出し、「あれで何が変わるというわけではないかもしれないが、集まった意見は少なくとも政府の報告書にまとめられる」として、消費者が政策決定プロセスに関与できる環境が整いつつあると指摘。これまで消費者が政治に関わるには投票しかなかったが、政策ベースで議論に参加できるようになったと述べた。

 津田氏の意見については、金氏も「著作権制度は(消費者や権利者などが)コンセンサスに至ることよりも、対立していることが表面化するかどうか重要である」と賛同。「これまでの著作権制度は密室で決められていたが、消費者が政策プロセスに関与することで議論の対立軸が見えてくる。政府も根拠に基づいた政策決定が可能になる」として、今後の政策決定プロセスに変化が訪れる可能性があると話した。


ネット時代の著作権問題は「後追いでも時代に合わせた幅を持たせるべき」

 また、パネルディスカッションの前には、津田氏が「著作権法改正をめぐる現状」と題した講演を行ない、現在審議されている著作権法改正案として、「著作権法違反の非親告罪化」「検索エンジンのWebページ収集合法化」「著作権の保護期間延長問題」のほか、「違法著作物ダウンロードの違法化」などについての動向を説明した。

 インターネット上に公開されている違法ファイルをダウンロードする行為を違法にする「違法著作物ダウンロードの違法化」については、IT産業やインターネットの発展を阻害する懸念があり、ダウンロード違法化は慎重に行なうべきとの考えを示した。さらに、インターネット時代における著作権制度に関しては、「時代に合わせてどう変えていくかがポイント。後追いになるにしても、後追いだから大なたを振るうのではなく、現状にあわせて、ある程度幅を持たせることがインターネットの発展につながる」と話した。

 質疑応答では、Internet Week 2007のプログラム委員長を務める東京大学大学院・情報理工学系研究科教授の江崎浩氏が「YouTubeやニコニコ動画がダウンロード扱いではないことがわからない」と質問。津田氏が「確かにキャッシュフォルダにファイルが生成されるが、ブラウザで再生するサービスは『ストリーミング』」という文化庁の解釈が出ている」と答えた。

 会場からは、「違法著作物のダウンロードの違法化」の問題は、携帯端末に欲しいコンテンツがオンデマンドで配信されるようになれば、近い将来に重要な議論ではなくなってくるのではという意見が寄せられた。これに対して津田氏は、「方向性はその通りだが、現実的には携帯端末のバッテリに問題がある。バッテリについては燃料電池なども開発されているが、ストリーミングで20時間持つようなプレーヤーは4〜5年は出てくるとは思えず、そこは超えにくい壁だと思っている」と回答した。


関連情報

URL
  Internet Week 2007
  http://www.internetweek.jp/


( 増田 覚 )
2007/11/21 11:54

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