秋葉原コンベンションホールで開催された「Internet Week 2007」で22日、カンファレンス「IP Meeting/Internet Forum 2007」が行なわれた。このカンファレンスでは、ネットワーク基盤に関わるオペレーショナルなテーマについて1年間の動向を振り返り、今後の展望についてレポートを行なう午前の部と、今後のネットワークはどうあるべきかをテーマに議論する午後の部から構成。本レポートでは、この中からNTTコミュニケーションズの吉田友哉氏による講演「ルーティング・トポロジ動向」についてお伝えする。
● トラフィックは確実に増えている
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NTTコミュニケーションズの吉田友哉氏
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1日のトラフィック推移
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近年、インターネットにおけるトラフィックの増大が話題となることが多くなってきているが、実際にはどのくらい増えているのだろうか。今回示されたデータでは、日本国内の伸びはここ3年から4年にかけて1.2倍から1.5倍を推移しており、平均して1.4倍程度の伸びとなるという。ただし、これには地域差もあって、西のトラフィックは年1.4倍から1.2倍というように、倍率で見ればやや落ち着く傾向が出ていることも示されている。
また、IX(インターネットエクスチェンジ)のトラフィックが300Gbpsを超えたことも報告された。国内の主要IX以外で交換するトラフィック(主としてプライベートピアリング)が国内の主要IXで交換するトラフィックを上回っているため、このIXの値だけを見て傾向の判断をすることは困難だが、トラフィックの増大傾向は今後も堅調に推移すると考えられる。
このペースでトラフィックが増大すると、現在、721.7Gbpsとなっている日本のブロードバンドトラフィックの総量が2008年のどこかで1Tbpsを超える可能性もある。
トラフィックの増大を招いている要因の例として挙げられるのが、動画配信とP2Pだ。動画などのダウンロードトラフィックが増加傾向にあること、国内の動画配信が加速する傾向にあること、P2Pによるトラフィックが依然として増加傾向を維持していることなど、それを裏付けるデータなどが示された。また、会場では「ニコニコ動画」のトラフィック分析などが表示され、関心を集めていた。
● 枯渇問題はIPv4アドレスだけではない
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IPv4経路数推移(予測)
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RIRごとAS割り当て数の推移
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ルーティングなどに関しては、IPv4のフルルートが24万弱に到達したことや、IPv4アドレスの在庫枯渇問題に対する議論が活発化してきたことが報告された。その中で、2オクテットのAS番号の方が早く枯渇しそうだという話題には注意が必要だろう。
AS番号とは、インターネットにおいて自律したネットワークに振られる番号で、現在は2バイト(2オクテット)の長さを持つ。その番号が枯渇するということで延命策なども考えられているが、所詮は延命策に過ぎないので4オクテット化は必須と言われてきた。実際には2007年1月より4オクテットAS番号は取得可能になっているが、今後、2009年1月からはデフォルトで4オクテットAS番号を分配することになるようだ。
もちろん、4オクテットAS番号だけではなく希望者には2オクテットAS番号も分配されるようだが、そもそも在庫が少なくなっているためどこまで希望に添えるかは未知数だと考えられる。さらに、予定ではあるが、2010年1月からは4オクテットAS番号、2オクテットAS番号の区別無く分配されるようになり、かつ、その際にどちらかを明示的に希望することはできなくなるようだ。
基本的に、AS番号はどちらのオクテットを使っても大丈夫で、現在2オクテットAS番号を使っているところが4オクテットAS番号に移行する必要もない。一部、4オクテットAS番号に対応していない装置を使っているところでおかしな挙動が見られたり、番号にドット(.)が含まれるためASパスフィルターなど正規表現などで問題が出るといった面で避けらるケースもあるが、今後はベンダーなどでの対応が進むため大きな問題にはならないと考えられる。
ルーティングの全体的には、経路数やAS数が継続的に増加していることなど、多くの課題が示された一方で、東京一極集中型は継続しているが、大阪にも徐々に分散する傾向があるという。また、ユーラシア大陸を横断するような、国際ケーブルの異経路分散の促進などの話題も紹介された。
関連情報
■URL
Internet Week 2007
http://www.internetweek.jp/
■関連記事
・ 国内ブロードバンドユーザーのトラフィック総量は721.7Gbps、総務省試算(2007/08/22)
( 遠山 孝 )
2007/11/22 19:52
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