東京・霞ヶ関の東京會舘で10日、財団法人国際IT財団の主催による「新世代ネットワークにおける通信事業のあり方」と題したシンポジウムが開催された。シンポジウムでは、総務省、NTTコミュニケーションズ(NTT Com)、KDDI、ソフトバンクからそれぞれパネリストが参加し、NGNや今後の通信行政に関するパネルディスカッションが行なわれた。
● 総務省の谷脇氏は今後のインターネットを巡る7つの視点を提示
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総務省の谷脇康彦氏
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総務省総合通信基盤局事業政策課長の谷脇康彦氏は、IP化・ブロードバンド化の進展による市場の変化を受けて、通信・放送法制の一本化やネットワークの中立性に関する議論を進めていると説明した。
その上で、今後のインターネットを巡る視点として、1)伸び続けるトラフィックにインターネットはインフラとして耐えうるのか、2)次世代ネットワークとインターネットの並存、ネットワークの選択の自由は確保可能か、3)セマンティックWebは実現可能か、4)プラットフォームを軸としたビジネスモデルのあり方は可能か、5)ベストエフォートの考え方は維持可能か、6)国境を越えたボーダーレス社会の競争モデルはどうなるか、7)NGNの次の新世代ネットワークはいつ実現するのか――という7つの問題を指摘。これらについてさらに議論を進めていきたいと語った。
● 新世代ネットをテーマに多様な意見、ソフトバンクはアクセス回線の開放を求める
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(左から)ソフトバンクの嶋聡氏、KDDIの沖中秀夫氏、NTT Comの出口秀一氏
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ソフトバンク社長室長の嶋聡氏は、通信ネットワークは水道・電気・ガスに並ぶ重要なインフラだが、FTTH市場においては圧倒的なシェアによりNTT東西の独占が拡大しており、競争による料金低減・サービス向上が見込めないと指摘。こうした独占状態の解消のためには、光アクセス回線の開放ルールをソフトバンクやKDDIが求めているように1分岐単位での開放に改めるか、アクセス回線網機能の分離により同等性を確保することで、他事業者の参入を容易にして競争を促進すべきだと訴えた。
嶋氏は、2010年にはFTTH市場でNTT東西のシェアは80%以上になるという予測を示し、このままでは競争事業者は撤退し、新世代ネットワークもこうした独占的なネットワークの上に構築されることになってしまうと指摘。NTTのあり方については2010年以降に議論するとしているが、議論が終わる頃には独占が確定してしまうとして、2008年からでも即座にNTTのあり方について見直しの議論を開始すべきだとした。
NTT Com経営企画部の出口秀一氏は、NTTグループのNGNの展開とIPTVへの取り組みを紹介した。NGNの特徴は「オープンなインターフェイス」「セキュリティ」「QoS(帯域制御)」「信頼性」の4点にあり、IPベースの技術を採用しつつ信頼性・安定性を実現するネットワークをオープンな形で他事業者にも提供すると説明。NTTコミュニケーションズもNGNのQoS機能により、H.264によるリアルタイム映像圧縮技術を活用したハイイビジョン映像を安定配信することが可能となり、放送局の同意を得て地上デジタル放送の再送信や多チャンネル放送、VODサービスなどを展開していくとした。
KDDI執行役員技術渉外室長の沖中秀夫氏は、電気通信事業を取り巻く環境の変化として、固定電話市場の縮小や定額ブロードバンド接続の普及といった市場構造の変化、固定から移動へのシフトなどトラフィックの構造変化、回線交換機などのレガシー機器が急速にIPへのシフトを進めている通信機器産業の構造変化の3点を指摘。こうした状況の中で、通信事業者はネットワークの統合やサービスの融合など接続事業から付加価値創造事業への転換が迫られており、KDDIでも携帯網と固定網のIPへのネットワーク統合などを進めていると語った。
関連情報
■URL
シンポジウム概要
http://www.bba.or.jp/itzaidan/
( 三柳英樹 )
2007/12/10 22:13
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