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ニコニコ動画は「動画共有ではなく動画コミュニケーション」

ニワンゴの杉本誠司社長が解説

 オンラインゲームとコミュニティをテーマとしたカンファレンス「OGC(Online Game & Community service conference)2008」が14日に開催された。基調講演では、ニワンゴ代表取締役社長の杉本誠司氏が登壇。杉本氏が自ら「動画共有サイトではなく動画コミュニケーションサイト」と位置付ける「ニコニコ動画」について、開発の狙いや最新の利用者動向などを解説した。


「臨場感の共有」を目指し、動画で遊ぼう

ニワンゴ代表取締役社長の杉本誠司氏

ニコニコ動画の概要
 ニコニコ動画は単なる動画の視聴にとどまらず、字幕風のコメントを付けられるのが最大の特徴だ。映像を覆い尽くすような過度の字幕を「弾幕」と呼ぶなど、独特の視聴スタイルが生み出されており、2007年3月の「ニコニコ動画(γ)」のスタートから約1年で約580万人のユーザーが会員登録するなど、人気を集めている。

 ニコニコ動画の開発スタートにあたっては、さまざまな発想があったという。杉本氏が話す「YouTubeを楽しもうにも、英語サービスのため意味がわからないことがほとんど。誰か翻訳してコメントを付けてくれれば便利なのに」というアイディアもその1つだ。

 また「感情の表現」や「臨場感の共有」も大きなテーマという。歌手によるコンサートなどをライブ配信するケースはこれまでも数多くあるが、観客同士の一体感といった会場に足を運ぶことによって得られる醍醐味までは味わえなかったと指摘する。

 杉本氏はこれらの要素をまとめ、ニコニコ動画について「お茶の間で家族そろってテレビを楽しんだり、ライブ会場でみんなが一緒に騒いだりする感覚を、コメントを通じて再現するサービスを目指した」と説明。動画共有サイトとしてすでに知名度を得ていたYouTubeとは似て非なるサービスだと語り、「ニコニコ動画は動画共有サイトではなく、動画でコミュニケーションするためのサイト」と補足する。

 一方で杉本氏は「私たちは動画を楽しむためのツールを提供しているが、一方で“場を楽しむためのネタづくり”を怠りなくやっている」と語る。動画に関連した商品を表示させる「ニコニコ市場」はその代表例。「物販につなげたい気持ちももちろんあるが、動画の内容に引っかけたダジャレなどのネタにもなる」と効能を明かす。


「自己表現の場」としてのニコニコ動画

ニコニコ動画の会員登録動向
 ニコニコ動画の無料会員は3月11日時点で580万人、有料会員は19万2,000人に上るほか、携帯電話から利用できるモバイル版会員も119万人に達した。ユーザー属性は約70%を男性が占めるものの、「猫鍋」など幅広い世代に受け入れられやすいコンテンツが増えていることあり、女性の利用者が増加傾向にあるという。また、2月にはモバイル版がiモードの公式メニュー化された影響もあって、10代の利用者が急増している。

 特徴的なのが、ユーザーのサイト内滞在時間の長さだ。ビデオリサーチインタラクティブ調べのデータによれば、1人1カ月あたりの滞在時間がYouTubeでは1時間11分なのに対し、ニコニコ動画では3時間57分と長い。なお、サイトへの1日あたりのユニーク訪問者数は約180万人。また、連携する動画アップロードサイト「SMILE VIDEO」には60万~80万件程度の映像が投稿されているという。

 利用者の増加によって、広告を掲載する媒体としての価値も高まってきており、バナーを中心とした広告の売上は2月度で3,200万円となった。ただし杉本氏は「ニコニコ動画は運営者とユーザーが一体になって盛り上がっているところがあり、滞在時間の長さといった他にはない特徴もある。ユーザーに“ささる”面白広告的なものにも取り組んでいきたい」と語る。

 アップロードされる動画の傾向にも変化が生まれつつある。杉本氏によれば、動画の作成者自身がコメントを付けてもらうことを前提に映像制作する傾向が強くなっているほか、「初音ミク」を使って制作された楽曲に代表されるようなユーザー自身が著作権を持つオリジナルコンテンツも着実に人気ランキングを上げてきているという。

 このほか「アニメのエンディング曲にあわせて踊った映像を公開したり、おじいさんにプレイさせた下手なゲームプレイ映像をあえて公開したり……。いろいろな人が自己表現の場としてニコニコ動画を使い、そのレスポンスとして弾幕が付いたりランクが上がったりするというモチベーションをもたらしているようだ」と杉本氏は解説する。


利用者の約70%を男性ユーザーが占める 1日あたりの利用状況も公開された

今後は「ニコニコ大百科」なども提供へ

 文字通り動画を生配信する「ニコニコ生放送」など、コミュニケーション促進のための企画は運営者側でも頻繁に実施している。中でもニコニコ市場で購入されたコンテンツを速報表示する電光掲示板サービスは、売上面での刺激効果も大きかったという。

 「現状ではユーザーにウザがられている」と杉本氏自身が苦笑いする「ニコ割」もその1つ。時報などの形式で視聴中の動画へ強制的に割り込み、広告など別のコンテンツを表示させている。モグラたたきなどの簡易なゲームを割り込ませるサービスもすでに実施済み。「そのタイミングには10万人ほどの利用者がいたが、うち7万3,000人が参加してくれた。オンラインゲームとして見た場合にはかなりの利用度では」と語り、イベントとしての効果に期待を寄せている。

 このほかニコニコ動画を初めて利用する初心者層を意識し、Webサイトのリニューアルなども行なっている。「使い慣れた人には逆にウザがられているようだが、よりよいサービスのため一時的に使いづらくなるのもまたニコニコ動画。試行錯誤していきたい」。

 今後はニコニコ動画で使われる専門用語の解説を目的とした「ニコニコ大百科」などの立ち上げを予定すると同時に、著作権保護体制の強化に向けた取り組みも推進していくとした。


「あさっての方向」への進化を目指すというニコニコ動画 ニコニコ動画での専門用語などを解説する「ニコニコ大百科」の立ち上げを予定

関連情報

URL
  OGC 2008
  http://www.bba.or.jp/ogc/2008/
  ニコニコ動画
  http://www.nicovideo.jp/

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( 森田秀一 )
2008/03/17 13:08

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