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シンポジウムの会場となった世田谷文化生活センターのセミナールーム
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IT・音楽ジャーナリストで、MIAUの発起人でもある津田大介氏が司会
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インターネット先進ユーザーの会(MIAU)が1日、「青少年ネット規制法について考える」と題した緊急シンポジウムを都内で開催した。青少年をインターネット上の有害情報から守ることを目的として自民党と民主党で検討されている“青少年インターネット規制法案”については、国による検閲に繋がりかねないなどの懸念が指摘されており、MIAUでも、十分な議論がないままで立法化すべきではないなどとする反対意見を表明をしている。
今回のシンポジウムは、同法案の問題点について一般に周知を図るとともに、他の組織からの意見も聞きながら、この問題への理解を深めることを目的に開催したという。マイクロソフト技術統括室CTO補佐の楠正憲氏やコンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)専務理事の久保田裕氏らも出席し、同法案の問題点についての解説を行なったほか、保護者も含めた情報リテラシー教育の重要性などを訴えた。
シンポジウムの冒頭、MIAUの発起人でもあるIT・音楽ジャーナリストの津田大介氏が挨拶した。「インターネットには有害情報があふれているのだから、何らかの規制はやむを得ないと考える人が多いが、この3月に出てきた自民党や民主党の法案には、さまざまな視点から問題点が指摘されている」と説明する。
具体的には、有害情報の定義が非常に広範であり、小中学生が行なっている健全なコミュニケーションが阻害されてしまう恐れや、インターネットを通じた表現活動が規制され、憲法の表現の自由にも抵触するのではないかとの指摘などだ。
そこでMIAUでは、「問題点を多面的に検証する必要がある」として、法案の概要や国際動向、情報モラル・情報リテラシー、親の教育といった多様な観点で講演者を招き、シンポジウムを企画したという。
● 自民党の「高市案」がバージョンアップ、有害基準策定は民間へ?
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MIAUの幹事でもある多摩大学情報社会学研究所の中川譲氏
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続いて、MIAUの幹事で、多摩大学情報社会学研究所の中川譲氏が、青少年インターネット規制法案の概略と経緯について解説。自民党の高市早苗議員の主導により同党の内閣部会と青少年特別委員会が出した「青少年の健全な育成のためのインターネットによる青少年有害情報の閲覧の防止等に関する法律案」(通称「自民案」または「高市案」)について、実際に高市議員が作成して自民党内に配布したという概要資料を紹介した。
これによると、青少年にとって何が有害情報であるかの基準は、内閣府に設置する「青少年健全育成推進協議会」で定めることとしており、具体的には以下の6つが挙げられている。
1)青少年に対し性に関する価値観の形成に著しく悪影響を及ぼす情報
2)青少年に対し著しく残虐性を助長する情報
3)青少年に対し著しく犯罪、自殺及び売春を誘発する情報
4)青少年に対し著しく自らの心身の健康を害する行為を誘発する情報
5)青少年に著しい心理的外傷を与えるおそれがあるいじめ情報
6)青少年の非行又は児童買春等による青少年の被害を著しく誘発する家出情報
また、これらの閲覧防止措置として、個人を含む全Webサイトに対して、会員制サイトへの移行やフィルタリングソフトとの連動、管理権限による有害情報の削除などの構ずべき措置を努力義務として課すとともに、ISPなどの事業者には罰則も付く厳しいものになっている。このほか、携帯電話キャリアのフィルタリング提供義務や、PCメーカーへのフィルタリングソフトのプレインストール努力義務なども盛り込まれている。
そして中川氏が「高市案の肝の部分」と指摘するのが、ADR(裁判外紛争解決)機関を設ける点だという。「民・民の調整機関としたのは非常にうまい。基準は国が作るが、削除するのは民間。『国は直接は何もやっていないよ』というかたちを作れる。その調整のためにADRをうまく使う。『国が検閲をしないために、むしろ民間に配慮しているのだ』と高市議員はおっしゃるだろう」。
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高市案(旧バージョン)の概要。この資料は、4月23日にマイクロソフトやヤフーなど5社が反対表明を出した際の会見時にも紹介された
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一方、この法案が明らかになったことに対して、有害情報対策は民間の自主規制で行なうべきとする指摘も挙がっているが、中川氏は、映画やゲームでは特に規制のための法律があるわけではなく、自主規制を行なっていると説明。
「インターネットも自主規制にすればうまくいくという指摘もあるが、何もかもがうまくいくのかというと、必ずしもそうではなく、大きな問題も招く」として、放送禁止歌や、特撮作品・アニメなどの“封印作品”を取り上げた書籍を紹介。「NHKや日本民間放送連盟が自主規制することによって、何の法的な規制もないまま闇に葬られてしまっている作品がある。自主規制というのは必ずしも万能ではないということを承知の上で、今後の議論をする必要がある」とも述べた。
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中川氏がまとめた、高市案のポイント
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映画やゲーム、放送、図書など他メディアでの規制方法
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なお、中川氏が解説した高市案は、4月22日時点でMIAUが声明を出した時点で確認していた内容で、旧バージョンにあたるという。マイクロソフトの楠氏によると、いろいろな批判があったことで、現在は新バージョンを検討しているのだという。
具体的には、新バージョンでは、有害基準は基本的に民間が策定し、それが適性かどうかを審議会で審査するスタイルになったほか、他にも細かい修正が入っている状況で、自民党の総務部会や経済産業部会からのフィードバックもふまえて、連休明けにも内閣部会がとりまとめるものと見られる。
● 男子高校生からは「ネットの生活が根本から変わる」との指摘も
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シンポジウムには、約100人が参加した
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シンポジウムの開催日はちょうどゴールデンウィークの連休の間だったが、約100人が参加。会場となった世田谷文化生活センターのセミナールームの席は、プロバイダーやフィルタリングベンダーを含むインターネット業界関係者やマスコミ関係者、MIAUの会員などで埋め尽くされたほか、現役の高校生だという参加者もいた。
この高校生は、高市案で挙げられている6つの有害情報のうち、残虐性を助長する情報や犯罪を助長する情報は普段触れたりすることはなく、それを必要としている人はごく一部と指摘。実際に高校生に影響があるのは、1)の性の価値観に関する情報と、5)のいじめに関する情報だとした。
特に性の価値観に関する情報については、「これを規制されたら多くの高校生は一網打尽。ネットの生活の根本から変わらなければならない」ともコメントした。ただし、店舗でアダルト雑誌を子供に売らないことで対応していたような時代とは異なり、「そういう規制はネットでは全く機能していない。それに関して何とかしなければならないというのは納得いく」とも述べた。
一方、いじめに関しては、裏サイトを規制されるというよりは、高校生のブログ同士で大きな論争があった時などへの影響が懸念されるという。「論争だったら有意義なものになるかもしれないが、裸の画像を上げられたらまずい。何を規制して、何を規制しないかという線引きが難しい問題だと思う」とコメントした。
シンポジウムの模様はUstreamでストリーミング中継され、視聴者からの質問コメントにも講演者が回答する場面もあった。
関連情報
■URL
MIAU緊急シンポジウム「青少年ネット規制法について考える」
http://miau.jp/1209319200.phtml
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( 永沢 茂 )
2008/05/02 14:24
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