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WIDEが20周年イベントを開催、「引き続きコネクティビティへの挑戦が必要」


WIDEプロジェクト代表の村井純氏
 WIDEプロジェクトは20日、発足20周年を記念したシンポジウムを開催した。WIDEプロジェクトは、インターネットに関する産官学連携の研究プロジェクトとして1988年に設立され、IPv6などネットワーク技術の研究開発や、インターネットの普及に向けた活動を行なってきた。

 シンポジウムの冒頭では、WIDEプロジェクト代表で慶応義塾大学教授の村井純氏が挨拶に立ち、「20年の活動は多くの方々に支えていただいたものだ」として、関係者への感謝の言葉を繰り返し述べた。また、「WIDEが20周年を迎えた年に、TCP/IPの開発に携わったRobert Kahn氏とVinton Cerf氏にアワード(日本国際賞)を日本から贈ることができたことは、非常に感慨深いものがある」とコメントし、授賞式の模様をビデオで紹介した。

 村井氏はWIDEの発足当時を振り返り、「当時は気付いていなかったが、WIDEの特徴はテストベッドであること。我々の活動を世の中に認めてもらうためには、動くもの、役に立つものを作ることが重要だった。しかし、当時はなかなかそれができなかった」と語り、大学と企業を同じネットワークに接続することが、20年前には困難だったと語った。


WIDEの最初のNOCは岩波書店に設置

岩波書店の山口昭男社長に感謝状が贈られた
 そうした中で、アカデミズムの世界からも理解が得られる企業として岩波書店がWIDEに参加し、WIDEの最初のネットワークオペレーションセンター(NOC)は岩波書店に置かれ、運用が続けられてきたというエピソードを紹介。WIDEの20周年にあたり、これまでの協力に感謝したいとして、岩波書店の山口昭男社長に感謝状を贈った。

 山口氏は、「インターネットの黎明期、岩波書店の地下の倉庫のような場所で出発したのが1988年8月で、それから今年の4月まで接続拠点としてあった。当時は産学共同研究に対して風当たりが強かったり、電話局からは急に接続が増えたと問い合わせがあったりしたが、それもたった20年前のこと。この先の10年、20年も、想像できないほどの変化があるだろう。この20年のWIDEの活動に、岩波書店が携われたことに感謝したい」とコメントした。


ソースコードからインターネットを学んだ

Cisco SystemsのFred Baker氏は、米国からの生中継でメッセージを寄せた
 Cisco SystemsのFred Baker氏は、米国からの生中継で「The next network」と題するメッセージを寄せた。Baker氏は、電話会社はNGN(次世代ネットワーク)でも音声を収益の中心とした囲い込み型のモデルを続けたいと願っているが、インターネット企業にとっては帯域こそがサービスであり、多様なアプリケーションを少ない制限で提供することが求められているとした。

 一方で、ユーザーが利用するアプリケーションの変化に伴って、特にこの5年間でトラフィックが急増しており、次世代のアプリケーションの登場によりさらにこの傾向が顕著になるだろうと指摘。例として、現在のネットワークゲームはクライアント/サーバー型の接続モデルだが、将来的にはユーザー間のピアツーピア型の接続モデルになり、中央のサーバーは認証を行なうのみといったモデルに変わっていくだろうとした。

 Baker氏は、「次世代のアプリケーションは、帯域が制約となっていたような過去を知らない人間によって作り出されるだろう」とした上で、「我々は帯域や遅延など、引き続きコネクティビティの問題に取り組んでいかなければならない」と語り、今後も次世代のネットワーク環境の構築という課題に挑んでいこうと来場者に呼びかけた。

 プログラム前半の最後には、バークレー版UNIX(BSD)の設計と実装に携わり、現在はベンチャーキャピタルのKleiner Perkins Caufield & Byersのパートナーを務めるBill Joy氏が、ビデオ中継で村井氏と対談。当時の技術者は、BSDに実装されたTCP/IPのソースコードからインターネットを学んだことや、機器の相互接続についてテストを繰り返したことなどを振り返り、Joy氏は「これからのインターネットには、若者が自ら欲しているものを発明することに期待したい」と語った。


Baker氏は、引き続きコネクティビティへの挑戦が必要だと来場者に訴えた Bill Joy氏ともビデオ中継で対談

関連情報

URL
  WIDEプロジェクト
  http://www.wide.ad.jp/index-j.html


( 三柳英樹 )
2008/05/21 11:22

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