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迷惑メール対策には「オプトイン式」の法規制が不可欠

経産省と総務省の担当者が法改正について説明

 財団法人インターネット協会(IAjapan)は20日、迷惑メールに関する現在の動向や技術的な対策、法規制などをテーマにした「第5回 迷惑メール対策カンファレンス」を都内で開催した。その中の法規制に関するセッションでは、IAjapanの迷惑メール対策委員会で委員長を務めるニフティの木村孝氏の司会のもと、経済産業省の諏訪園貞明氏、総務省の扇慎太郎氏による法改正の考え方や運用の見通しについての講演が行なわれた。


迷惑メールに対しては、オプトアウトしにくいのが現状

IAjapanの迷惑メール対策委員会で委員長を務める、ニフティ経営補佐室担当部長の木村孝氏

経済産業省 商務情報政策局 消費経済対策課長の諏訪園貞明氏

総務省 総合通信基盤局 電気通信事業部 消費者行政課課長補佐の扇慎太郎氏
 2008年は、迷惑メール対策に関係する2つの法律が改正される予定になっている。1つは通信販売などについて規定する「特定商取引法」、もう1つは広告や宣伝を目的としたメールについて規定する「特定電子メール法」である。ともに改正の中核となっているのが「オプトイン式」の規制導入で、今後の広告および宣伝の手段としてのメール利用に大きく影響を与えることが予想されている。

 日本における現行の迷惑メール対策に関する法規制は、「オプトアウト方式」を採用している。これは、送られてきたメールに対して、受信者が今後のメールを拒否するかどうか決める仕組みである。つまり、ダイレクトメールやメールマガジンといった不特定多数に向けたメールを、受信者の事前承諾なしに配信することそのものは違法ではないのだ。ただし、表示義務などに規制があり、「未承諾広告」である旨や送信者名、さらに受信拒否を受け付けるための手段などを明記しなければならないことになっている。

 現行のオプトアウト規制は単なる表示義務でしかないと言いきる諏訪園氏は、「広告主事業者(通信販売事業者など)は、迷惑メール広告の送信を他の業者に委託していることが多く、実行行為に直接関与していないため違反行為を厳正に処分することが難しい」と述べ、現行の規制による実効性についての問題を指摘した。つまり、メール広告を委託した業者に「自分たちはそんな指示をしていない」と言い切られてしまえば、追求することが難しくなってしまうのである。また、メール広告受託者自身が占いサイトや懸賞サイトなどを通じて収集したメールアドレスを使用して、メール広告を送信する行為そのものは処分の対象外になるといった問題もある。

 さらに、扇氏は「オプトアウト式では迷惑メールの受信拒否を行なうことによって、そのメールアドレスが有効なメールアドレスであるかどうかの判断に利用されてしまうこともある」として、迷惑メールに対してユーザーがオプトアウトしにくい状況になっていると述べた。つまり、悪質な業者は、受信拒否を受け取ることで、そのアドレスがきちんと利用されている(有効なアドレス)と判断し、より価値の高いアドレスとして他の業者に流すといったことが起きているのである。


オプトイン式では、1通目を送信することを規制

迷惑メールの受信数の動向

迷惑メールには多面的な対応が必要
 これらの問題を解決するのが、最初の1通目となるメール広告そのものを送ることを規制する「オプトイン式」の採用である。つまり事前に受信者が承諾していない広告・宣伝のメールを送ることを規制するのである。すでに米国やEU諸国においては、採用されている迷惑メール対策だ。オランダではオプトイン式の規制によって約80%の迷惑メールが削減できたという。また、違反者に対する罰則もより強化し、現行の100万円以下から3,000万円以下へと罰金の上限を引き上げることや、より長期にわたる懲役刑の導入が検討されている。

 迷惑メールの受信数は、行政処分を公表するたびに一時的な減少を示すものの、現在もなお増加を続けているという。これらの解決にはオプトイン式の規制導入などを含めた根本的な解決策が不可欠となっている。

 総務省では2007年7月から「迷惑メールへの対応の在り方に関する研究会」を開催し、総合的な迷惑メール対策を検討している。その中間取りまとめ案においては、寄せられた意見のほぼすべてが迷惑メール対策の強化に賛成し、特にオプトイン式の導入にも多数の賛成意見が寄せられた(反対意見はなし)という。また、経済産業省が通信販売業者などを対象に実施した調査においては、多くの事業者がすでに広告メールに関して何らかのオプトインの施策(自社のサイトにおいて広告メールの受信を承諾するチェックボックスの設置など)を行なっているとの結果が出ているという。

 さらに扇氏は、「迷惑メール対策には特効薬はなく、多面的な対策が不可欠」と述べ、政府による効果的な法執行だけではなく、電気通信事業者による自主規制、技術的な解決、利用者の啓発、国際協調などが重要になるとしている。

 経済産業省においても、国際協調の動きが活発である。経済産業省の迷惑メール追放支援プロジェクトや、国内のプロバイダーによるOP25B(Outbound Port 25 Blocking)によって、迷惑メールを送信している事業者は、海外に拠点を置くことが多くなってきているという。

 その例として諏訪園氏が挙げたのは、2007年1月に実行役の社員など社長を含め4人が逮捕された有限会社タクミ通信だ。同社は中国に拠点を作り、国内からリモート操作で1日に約9,000万通もの迷惑メールを送信し、1カ月で1億円以上の収益を挙げていたという。諏訪園氏は「海外経由でのメールを規制することは難しいが、迷惑メールなどの対策がきちんと行なわれていなければIT先進国として日本の立場がなくなる」とコメント。中国政府とは2007年9月に迷惑メール追放体制構築について合意しており、効果が上がりつつあるとことも明らかにした。また、その他の諸国とも連携を深めていく予定だという。

 なお、このセッションでは、経済産業省の取り組みの1つとして、実際に職員が出会い系サイトに登録し、実際に請求が発生するまでを追いかけるといった、おとり捜査のようなことまでしていることも明らかにされた。ひと昔前の“お役所仕事”ではなく、かなり本気の対策が行なわれていると言えるだろう。


関連情報

URL
  第5回 迷惑メール対策カンファレンス
  http://www.iajapan.org/anti_spam/event/2008/conf0520/index.html

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( 北原静香 )
2008/05/21 15:27

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