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欧州評議会の経済犯罪部部長を務めるAlexander Seger氏
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インターネット犯罪対策に関する国際カンファレンス「CeCOS II 東京:Counter-eCrime Operations Summit」で27日、ネット犯罪に対する国際協力についての講演が行なわれた。
欧州評議会(Council of Europe)の経済犯罪部部長を務めるAlexander Seger氏は、「サイバー犯罪の効果的な国際捜査」と題して、欧州評議会で2001年に署名された「サイバー犯罪条約」について説明した。
サイバー犯罪条約は、不正アクセスなどのコンピュータ犯罪に対して、各国で必要とされる法整備などをまとめた国際条約。2001年にハンガリーのブダペストで開かれた欧州委員会の国際会議において、日米欧などの30カ国により署名されている。
条約では、インターネットなどを利用した犯罪の共通的な定義付けとして、「不正アクセス」「偽造や詐欺」「児童ポルノ」「著作権および隣接権の侵害」「それらの犯罪に対する幇助」の5項目を挙げ、それぞれについて犯罪捜査や刑事訴追を行なうための規定、国際協力のための手法などを定めている。
Seger氏は、「条約は、各国がサイバー犯罪に対する法整備を進めていくためのガイドライン」と説明。フィッシング詐欺などの行為そのものを犯罪として、捜査や検挙を行なっていくための法整備をまとめたもので、グローバル化が進む犯罪組織に対しては、各国が足並みを揃えることが重要だと訴えた。
また、2008年4月までには、22カ国が条約を批准、22カ国が条約に調印しているが、さらに多くの国が参加していかなければ効果が上がらないとして、各国の組織と協力して条約への参加を呼びかけていきたいとした。
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CERT/CCのJason Milletary氏
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CERT/CCのJason Milletary氏は、「データシェアリングと国際協力における成功事例」と題した講演を行ない、犯罪の捜査や犯罪を未然に防ぐためには、組織間での情報共有が重要だと訴えた。
Milletary氏は、最近の事例として米国とルーマニアの捜査機関の協力により、フィッシング詐欺を行なっていた38人を起訴した事件を紹介。38人には様々な国の人間が含まれており、サイバー犯罪の国際化はますます進んでいるとして、こうした犯罪の捜査には国際協力が欠かせなくなっているとした。
一方では、犯罪を未然に防ぐという観点でも、組織間の情報共有が重要だと説明。フィッシング詐欺などの犯罪を発見した場合に、サイトをホスティングしている業者、銀行・カード会社、捜査機関などが素早く情報を共有して連携することで、被害を最小限に抑えることが可能になり、その後の犯罪捜査も迅速に行なえるとした。
Milletary氏は、CERTでも国内の捜査機関と協力を進めており、サイバー犯罪に対してはこうした活動を広げていくことが重要だと説明。「同じ問題に立ち向かう人達が集まり、脅威に対する情報を共有していくことが必要。共有できる情報とそうでない情報もあるが、まずはその範囲を確認することから始めて、組織同士の信頼関係を深めていくことで問題に迅速に対応できる」と訴えた。
また、「究極の理想はグローバルでこうした問題を解決できること」だとして、各国の行政や捜査機関などの連携に加えて、企業のCSIRT(セキュリティ対策組織)など民間レベルでも国を超えて関係を構築していくことが重要だとアピールした。
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サイバー犯罪条約の状況。2008年4月までに22カ国が批准、22カ国が署名
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Milletary氏は、犯罪対策には国際的なパートナーシップによる情報の共有が必要だと訴えた
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関連情報
■URL
CeCOS II 東京 開催概要
http://www.antiphishing.org/events/2008_operationsSummit_jp.html
関連記事:日米欧など30カ国、ネット犯罪に対処するサイバー犯罪条約に署名
http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2001/1126/ce.htm
( 三柳英樹 )
2008/05/27 17:25
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