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RSA SecurityのYinon Glasner氏
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インターネット犯罪対策に関する国際カンファレンス「CeCOS II 東京:Counter-eCrime Operations Summit」で27日、国際的な犯罪組織が海外への送金を行なう手法として、ネット上で募集した一般人を「運び屋」として利用する手口について、RSA SecurityのYinon Glasner氏が報告した。
Glasner氏は、犯罪組織がフィッシング詐欺などによって不正に得た金銭を、マネーロンダリングして海外に送金する新たな手法として、一般人を金銭の「運び屋」として利用する方法が用いられていると指摘。こうした組織はネット上で集めた運び屋のネットワーク(Mule Network)により、金銭を小分けにして海外に送金を行なうという。
手口としては、まず「自宅で簡単にできる仕事」などといった文面のスパムメールにより、運び屋となる一般人を募集する。この際には、「地域代理店」「ファンドマネージャー」などの名目で人材を募集しているとして、普通の企業を装ったWebページで人材登録を行なわせる。
こうして集めた運び屋に対しては、「金を振り込むので、指定した口座に送金してほしい。手数料10%が報酬として受け取れる」などとして、送金が依頼される。実際にはこの金は犯罪組織がフィッシング詐欺などで不正に得たもので、マネーロンダリングのために小分けにして一般人に送金させることを目的としている。送金にはWestern Unionなどの国際送金サービスが利用され、送金先は主に東欧諸国となっているという。
Glasner氏が確認した事例では、ある犯罪グループは運び屋の候補として350人を集め、そのうちの120人ほどに送金を依頼。4カ月間に合計で50万ドル以上を送金していたという。また、このグループはスパムの配信やWebサーバーなどにボットネットを利用し、運び屋を管理するために専用アプリケーションを構築するなど極めて組織的に活動していた。Glasner氏は、こうしたグループは他にも多数存在しているとして、マネーロンダリングに対する警戒と法整備の必要性を訴えた。
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マネーロンダリングの「運び屋」を募集するスパムメール。内容は通常の求人を装っている
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求人に用いられるサイトも一般企業を装っている
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運び屋を管理するための専用システムも構築されていた
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4カ月間に50万ドル以上が不正送金された
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● 京都府警のハイテク犯罪対策室長がウイルス作成者の検挙についてコメント
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京都府警ハイテク犯罪対策室長の小山雅子氏
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ネット犯罪対策関連の講演の最後には、京都府警ハイテク犯罪対策室長の小山雅子氏が登壇。京都府警が検挙したサイバー犯罪の事例として、2件のフィッシング詐欺事件と、Winnyネットワークを通じてウイルスを作成・配布していた男性を著作権法違反・名誉毀損で検挙した事例を紹介した。
小山氏は、ウイルス作成者の逮捕にあたっては、現状ではウイルス作成を直接罰する法律が無いため、検察庁と協議を重ねて検挙にこぎつけたと説明。会場からの「かなり無理のある立件で、本来的にはウイルス作成についての法整備が必要なのではないか」という質問に対しては、「ウイルス作成罪については国会で審議中ということもあり、警察としてコメントを出すのは難しいが、今の法律でも犯罪であるものについてはきちんと検挙していきたいと考えている」とコメントした。
関連情報
■URL
CeCOS II 東京 開催概要
http://www.antiphishing.org/events/2008_operationsSummit_jp.html
( 三柳英樹 )
2008/05/27 20:06
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