3D仮想空間(メタバース)をテーマにしたイベント「VirtualWorld Conference&Expo2008」(主催:サイメン、IDGジャパン)が東京・有明の東京ビックサイトで開催されている。期間は5月28日から30日まで。29日には、「Second Life」を運営する米Linden Lab設立者のフィリップ・ローズデール氏による基調講演が行なわれた。
ローズデール氏は冒頭、「バーチャルワールドは、新しいゲームやお金儲けをすることがメインの場所ではない」と切り出した。「バーチャルワールドは我々の未来。長い時間を費やすことになると思うが、現実世界で行なわれていることのすべては、いずれバーチャルワールドで再現されることになる。日本の動向に期待している」と話した。
● Second Life成長の要因は売買活動
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米Linden Lab設立者のフィリップ・ローズデール氏
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ローズデール氏は、高校生のときにソフトウェア会社を起業し、そのときからバーチャルワールドの構想を持っていたという。「実現するために、技術が追い付くのを待っていた」と振り返る。
「状況を変えたのは1999年で、具体的に2つの変化があった。1つ目はブロードバンドが出てきたこと。インターネットへの常時接続が普及し始めた。2つ目はGeForce 2というチップが登場したこと。あらゆるPCで3DCGの描画が容易になった。」
ローズデール氏は、ブロードバンドとチップという2つの条件が揃ったことで、Second Lifeを立ち上げ、今に至ると説明。現在の状況については、「2万のサーバーが動いており、SIMの総面積は500平方マイルある。Second Life内では、ユーザー間の売買によって、毎日100万ドルの金額が流通している」と説明した。
Second Lifeの流通金額は「米国の中規模都市程度の経済圏に相当する」という。また、「売買によってすでに5万人以上が利益を上げている」とのこと。「自分が作ったものをお金にできることは大きい。これこそが、Second Lifeを大きくし、成熟させた要因である」と述べた。
● バーチャルワールドが広まる4つの理由
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講演はSecond Life内の会場にも中継
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ローズデール氏は、バーチャルワールド全体の今後について、「この先、10年間でユーザー数は100倍に伸びる」と話す。「バーチャルワールドの利用者数や利用時間は、現在のWebサイトのそれを超える」とした。
Webサイトよりもバーチャルワールドが広まる理由として、1つ目に「情報の表示方法」を挙げる。「現在のWebはテキストによるコミュニケーションが中心だが、コミュニケーションにおいて文字表現は最適ではない。バーチャルワールドでは、現実と同じように物を目で見られることがパワフルな情報になる」とした。
2つ目に「言語の壁」を挙げる。「文字によるコミュニケーションが主体であれば、そこには言語の壁がある。バーチャルワールドでは、情報を3Dモデルで見せられるため、言語の影響が少ない」とした。3つ目は「共同作業」だ。「バーチャルワールドでは、同じ時間・場所を共有でききるため、リアルタイムにコラボレーションできる」とした。
また、4つ目に「成長の段階」を説明した。「最初は、バーチャルワールドで遊んだり、物作りを楽しんだりする。第2段階では、教育分野での活用。第3段階では、企業での活用。コラボレーションツールとして利用されるようになる。最終段階では、企業によるEC面での活用が行なわれる」とした。Second Lifeは、まだ最初の段階だが、教育分野では活用され始めているという。「Second Lifeのグリッドの15%は教育者に使われており、教育機関は多くの土地を買っている」とのことだ。
● 異なるメタバース間の融合が必要
ローズデール氏は、今後の課題について、「使いやすさ」を挙げた。「日本においてはモバイルで利用するための技術開発が進んでいる。また、ユーザーインターフェイスはもっとシンプルにすべき。情報の検索機能も改善する必要がある。Second Lifeにあるコンテンツの中から、ユーザーが興味のあるものを見つけられるようにしたい」と述べた。
また、バーチャルワールドに対する不満や批判については、「Webサイトの黎明期にも同じようなことがあった。使いづらいとか、仕事で使えるレベルではないとか言われていたと思うが、現在では誰もが利用している。バーチャルワールドも同じように成長していくだろう」とコメントした。
最後にローズデール氏は、バーチャルワールドの普及には技術のオープン化や、標準化による複数メタバース間の相互運用が必要であると説明。「今後は、アバターやオブジェクト、電子マネーがあらゆるメタバース間で有機的に結合していくだろいう」とした。「我々は従来のインターネットのスケールをバーチャルワールドで実現しようとしてる。その為には、オープンな立場で、他のメタバースとも融合していくことが必要」との考えを示した。
関連情報
■URL
VirtualWorld Conference&Expo2008
http://virtualworld-conference-expo.net/
■関連記事
・ Linden Lab技術責任者が「Second Life」のバックエンドを語る(2008/03/13)
・ Linden Lab副社長が「Second Life」のグローバル戦略を語る(2007/10/17)
( 野津 誠 )
2008/05/29 15:48
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