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ビデオチャットを通じて基調講演を行ったジミー・ウェールズ氏
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「iCommons Summit 2008」で30日、フリーライセンスによる検索エンジン「Wikia Search」プロジェクトを運営するジミー・ウェールズ氏が、検索エンジンの透明性の重要性を訴えた。ウェールズ氏は、オンライン百科事典「Wikipedia」の創始者。ビデオチャットを通じて、基調講演のトップバッターを務めた。
Wikia Searchは、フリーライセンスでソースを公開し、ユーザーの協力を得て検索エンジンの開発を進めている。開発に当たっては、1)オープンソースや検索アルゴリズムを公開する「透明性」、2)個人・団体を問わず誰でも参加できる「コミュニティ」、3)検索結果の妥当性とそれを改良する「品質」、4)ユーザーの検索結果を蓄積しない「プライバシー保護」――という4つの原則を掲げ、「透明性の高い検索エンジン」を目指している。
一方、GoogleやYahoo!、Microsoftなどが手がける検索エンジンは、検索アルゴリズムが非公開。ウェールズ氏は、これらの検索エンジンの透明性の低さを指摘した。「アルゴリズムは単なるプログラムと思われがちだが、検索結果はブラックボックス化されたシステムでコントロールされている。米国成人の9割は検索エンジンで情報を得ているが、そこには信じられないほどの力が加わっている。検索はネットインフラの根幹。もっと関心を払うべきだ」。
さらに既存の検索エンジンの問題点としてウェールズ氏は、次のように説明した。「検索エンジンで上位に表示されるためにはSEO対策が必要となるが、それもおかしな話。お金や時間がなくてSEO対策ができなければ、良質なコンテンツが埋もれる可能性もある。検索結果で3番目に表示されたページを、ユーザーが最上位に変更するようリライトすることもできない」。
これに対してWikia Searchは、誰でも編集可能なWikipediaのノウハウを活用。検索結果の不満を修正できるという。「検索結果に文句を言えるし、間違っていれば指摘もできる」。また、ユーザーのプライバシー保護にも目を向けているという。「検索結果を見るだけの場合はプライベート、検索結果を書き換える場合はオープン。特に後者は、改変を加えたユーザーの履歴を表示するなど透明性を重視している。Wikipediaがこれだけ機能しているのも、この透明性に尽きる」。
とはいえ、Wikia Searchの検索エンジンとしての品質は「良くできていると自負している」が、業界水準のレベルには達していないという。しかし、数週間前にWikia Searchの改訂版を公開し、最近では欧米に加えドイツやトルコなどでも利用者が増えているとして、今後もより多くのフィードバックを反映させて品質を向上させる考えだ。
「Wikia Searchでは、より多くの言語をサポートしたいと思っているが、多くの人にインターフェイスの翻訳をサポートしてほしい。また、ただ利用してもらうだけでもいいし、コーディングに関与してもらうなど、Wikia Searchのエントリーポイントはさまざまだ。コードの誤りを指摘する連絡も待っている。」
関連情報
■URL
iCommons Summit 2008
http://www.creativecommons.jp/isummit08/
Wikia Search
http://search.wikia.com/
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( 増田 覚 )
2008/07/30 19:41
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