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新時代のブラウザ競争、各陣営担当者がディスカッション


 秋葉原コンベンションホールで開催された「Internet Week 2008」で26日、セッション「HTTP Meeting 2008」後半のプログラムとして、Webブラウザをテーマとしたパネルディスカッションが行われた。

 2008年には、Firefoxがメジャーバージョンアップとなる「Firefox 3」をリリースし、Internet Explorer(IE)は次期バージョン(IE8)のベータ版を公開。また、Googleは「Google Chrome」を発表するなど、Webブラウザに再び注目が集まる年となった。

 パネルディスカッションには、マイクロソフトの原田英典氏(ビジネスウィンドウズ本部シニアプロダクトマネージャ)、Opera Softwareの冨田龍起氏(コンシューマー製品部門シニア・ヴァイス・プレジデント)、Mozilla Japanの瀧田佐登子氏(代表理事)が参加。今後のWebブラウザの方向性などについて意見を交わした。


IE8は標準規格の準拠と互換性を重視

マイクロソフトの原田英典氏
 マイクロソフトでは、IE8のベータ版を8月28日にリリースした。マイクロソフトの原田氏は、IE8の正式版については「年内には出ない。今のところ、来年の春先にリリースする予定」と語った。

 また、IE8の開発にあたっては「IE8はIE7を学んで作った」とし、Webの標準規格への準拠と互換性を両立させていることが特徴だと説明。「IE8はW3Cに準拠している。IE用にコードを用意しなければいけない現状を変えていく」とアピールした。

 また、IE8では、前のバージョンであるIE7でのレンダリングを完全に再現する「IE7標準モード」も搭載する。これにより、IE8でもIE7を想定して開発したWebサイトを崩れずに表示できる。さらにIE8標準モードは、CSSなどの標準規格に沿ったレンダリングエンジンにより、他のブラウザとも「高い互換性が保たれる」としている。


IE5からIE7までの描画モード。IE7では、IE6で表示できた標準CSS(IE6)の描画に問題があった IE8ではIE7の互換モードを用意する

「第2次ブラウザ戦争」はマルチデバイス化とプラットフォーム化

Opera Softwareの冨田龍起氏
 Opera Softwareの冨田氏は、1990年代に繰り広げられたNetscape NavigatorとIEの争いを「第1次ブラウザ戦争」とすると、現在は「第2次ブラウザ戦争」だとしながらも、「第1次と第2次では競争の軸足が違う」とした。

 過去の競争と違う点の1つ目は、さまざまなデバイスにブラウザが搭載されるということだと説明。Operaでは「PCだけではなく、デジタル家電やゲーム機、ポータブルメディアプレーヤーなど、さまざまなデバイスからインターネットにアクセスできるようにする」というコンセプトを掲げている。Operaはすでに、auの携帯電話、Wii、ニンテンドーDS、Windows Mobileのスマートフォンなどに搭載されており、FirefoxやGoogle Chromeも同様にモバイルを中心としたマルチデバイス化に進んでいる。

 また、違う点の2つ目としては、「ブラウザがアプリケーションを実行するプラットフォームという位置づけになった」という要素を挙げる。GmailやGoogleマップのように、Ajaxを用いてデスクトップアプリケーションと遜色のない操作性を実現しているWebサービスが、現在では数多く出てきている。こうした状況の中で、「アプリケーションを開発する会社にとって、魅力的な製品が作れるプラットフォームか」という点も競争の重要な要素になったと語った。


Mozillaは「先を行きます」

Mozilla Japanの瀧田佐登子氏(代表理事)
 Mozilla Japanの瀧田氏は、「2003年に『もう1回Webブラウザで勝負する』と言ったら冷たい目で見られた。『Webブラウザはアプリケーションプラットフォームになる』という話も理解してもらえなかった」と当時を振り返り、Firefoxのリリースで世の中に与えた影響として、Webブラウザに選択肢を与えたことと、標準規格への準拠の2つを挙げた。

 特にFirefoxでは、開発の当初から標準規格を意識してきたと説明。「Mozillaは“ブラウザごとに動作が違うようなことは起きてはいけない”と言い続けてきたが、やっと土台ができてきたと思う」とコメント。「Mozillaは先を行きます」と語り、FirefoxはWebのトレンドを先取りしてきたと強調した。

 また、Mozillaでは現在、モバイル機器向けのFirefox「Fennec」を開発している。Fennecの意義について瀧田氏は、「デバイスを選ばないアプリケーションプラットフォームが必要で、PCのユーザー体験をすべてのデバイスで同じようにストレスなく実現させなければならない」との目的があると語った。


Webブラウザが次に目指すところは?

慶應義塾大学の砂原秀樹氏

Mozillaを中心としたWebブラウザの歴史。http://foxkeh.jp/downloads/ にて公開している
 Webブラウザの開発側は、いずれもアプリケーションプラットフォーム化、マルチデバイス化、標準への準拠といった方針を掲げている。また、アプリケーションプラットフォームとしては、どのWebブラウザもJavaScriptの高速化に力を入れている。

 3人の意見を踏まえて、司会を務めた慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授の砂原秀樹氏は、「JavaScriptの実行速度などの性能も行き着いた感があるが、次の一手は何でしょう?」とパネリストに質問した。

 冨田氏は「Webブラウザには“ファイル”と書かれたメニューがあるなど、まだまだ“ドキュメントを見る”というパラダイムから抜け出せていない。Webブラウザの使い方は変わってきおり、まだまだ改良の余地はある。まだ話せないが、次期バージョンのOpera 10でも新しい提案ができる」とした。また、Webブラウザの高速化が限界に来ているという意見には否定的で、「PCのCPUは速くなりメモリーは増加している。しかし、携帯電話やスマートフォンなどの非PCデバイスはまだまだ貧弱だ。リッチになっていくアプリケーションを、どうやったら非PCデバイスでも快適に使えるのかが検討課題だ」と語った。

 瀧田氏は「ユーザビリティが重要になってくるのではないか」とする。例に挙げたのはGoogle Chromeで、「Chromeがリリースされたときに、ユーザーインターフェイスがほとんどないため『何これ?』と思った人がいるかもしれない」とした。一方で、モバイル向けのFennecでは画面の大きさのなど制約から、極力ユーザーインターフェイスを少なくし、コンテンツを画面いっぱいに表示するというアプローチをとっているとした。

 いずれのWebブラウザも、現在ではモバイル向けにも力を入れている。これに対し砂原氏は、「HTMLはどんな画面であっても見られる論理構造になっているはず。なのにPC用やPDA用、携帯電話用など、デバイス別にWebサイトを作らないといけないのはおかしいのではないか」と疑問を投げかけた。

 冨田氏は、「HTMLはコンテンツを表記し、CSSはメイクアップを定義している。デバイスの違いを吸収できるはず」と砂原氏の意見に賛成した。実際にOperaは、PC、携帯電話、スマートフォン向けにWebブラウザをリリースしており、PC向けのWebサイトであってもどのデバイスでも表示できる技術を持っているが「まだまだ開発途上だと思っている」と説明。問題となるのは、モバイル機器はPCよりも画面が小さいことと、PC向けのWebサイトで採用しているAjaxが常時接続が前提であることだとした。


関連情報

URL
  Internet Week 2008
  http://internetweek.jp/
  Internet Explorer 8
  http://www.microsoft.com/japan/ie8/
  Firefox
  http://mozilla.jp/firefox/
  Opera
  http://jp.opera.com/


( 安達崇徳 )
2008/11/28 14:49

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