マイクロソフトは、開発者向けのカンファレンス「Microsoft Tech Days 2009 “Best of PDC”」を27日と28日に開催する。同カンファレンスでは、2008年10月に米国・ロサンゼルスで開催された「Microsoft Professional Developers Conference 2008(PDC 2008)」の内容を日本向けに紹介する。
● クラウドを活用するための「ソフトウェア+サービス」
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マイクロソフト執行役デベロッパー&プラットフォーム統括本部長の大場章弘氏
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27日に行われた基調講演では、「マイクロソフトのクラウドコンピューティング戦略」と題し、PDCで発表したクラウドコンピューティング向けプラットフォーム「Azure Services Platform」を紹介した。
マイクロソフト執行役デベロッパー&プラットフォーム統括本部長の大場章弘氏は、「これからもITはクラウドへ進むが、これまでのテクノロジーの変遷がなければクラウドへの移行はできない。過去からの継続性が重要」と話す。
また、クラウドへ移行する上で、手間やコスト、多様なデバイスへの対応など企業が思う懸念材料を挙げ、「クラウドは魅力的だが、すべてを解決する万能なものではない」と説明。マイクロソフトでは、クラウドを最適な形で活用するために「ソフトウェア+サービス」を提案する。
「企業が持つIT資産や、これまでに培ったスキルを最大限に活用し、クラウドから得られるメリットを組み合わせて拡張していく考え方が、今後10年内で重要になってくるだろう。マイクロソフトは、ソフトとサービスの両方で技術展開を行っており、それぞれの分野でクラウドの考え方に沿った新しい技術を提供できる」とした。
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クラウドに至る潮流
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ソフトウェア+サービスでクラウド化
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● Azure Services Platformはアプリケーション開発と運用を提供
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Azure Services Platformの構成
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大場氏は、「現状、クラウド的なコンピューティングを実現するためにはホスティングサービスを利用してWebアプリケーションを公開しているが、ホスティングではシステムの拡張性や、ユーザーニーズに瞬時に応える俊敏性などに制限がある」と指摘する。
マイクロソフトでは、次世代のクラウドプラットフォームとして「Azure Services Platform」を提供する。Azure Services Platformは、Webアプリケーションのホスティングと管理を行うための大規模データセンター向けOS「Windows Azure」と、Webアプリケーションを構築するための「Live Services」「SQL Services」「.NET Services」などで構成される。加えて、マクロソフトはデータセンター分野に5億ドルを投資し、毎月1万台のペースでサーバーを増強していると説明した。
Windows Azureでは、Webアプリケーションを作動させるためのコンピューティング環境やストレージ環境を提供する。基調講演では、Windows AzureのWebアプリケーション開発手順についてデベロッパー&プラットフォーム統括本部の中原幹雄氏がデモを行った。ソフトウェア開発スイート「Visual Studio」で作成したアプリケーションをWindows Azure上にアップロードして実行するまでを解説。既存の開発環境でアプリケーションの開発・実行までが可能なほか、マイクロソフトのデータセンターを利用するため安価に運用できるとアピールした。
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Windows Azureの概要
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基本アーキテクチャ
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Windows Azureのメリット
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● Windows Azureを利用したJTBの「TORIPOTO体験サイト」
Windows Azureを利用した事例としてJTB情報システム取締役副社長の北上真一氏が、旅行の写真を編集・共有できるサイト「TORIPOTO」を紹介した。TORIPOTOは、JTBとイーストが2008年3月に発表したSilverlight対応のサービスで、ブラウザ上で画像のアップロードやデザイン編集、保存が行える。
今回、Windows Azure上で稼働し、SilverlightとWindows Live IDを使用した「TORIPOTO体験サイト」を期間限定で公開する。期間は2009年9月末日までの予定。体験サイトは、Windows Azure上のcloudapp.netから起動し、ユーザー認証にはWindows Live IDを使用する。作成したデータの保存にはSQL Servicesを使用する。
北上氏は、「比較的簡単にWindows Azure上でWebアプリケーションを展開できたことに驚いている。我々は旅行の予約が主な業務であるため、TORIPOTOのためのサーバー管理やネットワーク管理などの保守・運用業務をマイクロソフトに任せることで、自分たちの本業に集中できる。特に、写真のような容量の大きいデータを扱うサービスで自社とは違うサーバーやネットワークを使える利点がある」と話した。
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TORIPOTO体験サイト
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TORIPOTOの概念図
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● Live Servicesを利用したBBCの「iPlayer」を紹介
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米MicrosoftのWindows Liveプラットフォームシニアディレクタージョン・リチャーズ氏
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基調講演の後半は、米Microsoftシニアアーキテクトのユージニオ・ペース氏が、基幹・業務系アプリケーションを開発するための「SQL Services」「.NET Services」について紹介したほか、Windows Liveプラットフォームシニアディレクターのジョン・リチャーズ氏が、コンシューマ向けのアプリケーションを開発するための「Live Services」を紹介した。
Live Servicesは、Windows Liveのサービスや機能を自社のコンシューマ向けサービスに組み込み、Windows Azure上で展開するためのプラットフォーム。リチャーズ氏は、「Windows LiveやOffice Live、MSNといったマイクロソフトのオンラインサービスの基盤を利用した自社サービスを開発できる。また、デバイス間のデータ共有を可能にする『Live Mesh』も提供する」と説明した。
Live Servicesの利用事例として、BBCの「iPlayer」を紹介した。iPlayerは、BBCの番組をインターネット経由でPCや携帯電話にダウンロードし、オンデマンド視聴できるサービス。コンテンツを異なるデバイス間で同期できるため、例えば、PCで見ていた番組の続きを携帯電話で見ることが可能となる。また、Windows Live Messengerのコンタクトリストにあるユーザーの視聴履歴を参照でき、友人がどの番組を見たのかがわかる。
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iPlayer
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同期するデバイスやユーザーを選択
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視聴画面。同じ番組を見たユーザーを表示
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同じ番組の続きを外出先で携帯電話で視聴
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● 2009年半ばにWindows Azureの価格発表、1年半後の商用化見込む
最後に大場氏は、「コンシューマ向けのサービスや、基幹・業務系アプリケーションを開発できる環境を1つのアーキテクチャの中で開発者がシームレスに活用できる。また、既存の技術をクラウドで展開できるように設定されている」とまとめた。
Windows Azureは現在、コミュニティテクノロジープレビュー(CTP)を公開している。2009年半ばにはCTPのアップデートを図り、価格やSLAの発表も行うという。日本では、1年半後の商用展開を考えている。今後は、Windows Azureのサイトにおいて、日本語での技術情報も掲載。大場氏は、「日本の開発者にAzureの技術評価とフィードバックをいただきたい」と述べた。
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Windows Azure上でコンシューマおよびエンタープライズ向けの環境を提供
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Azure Services Platformのまとめ
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ロードマップ
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関連情報
■URL
Microsoft Tech Days 2009
http://www.microsoft.com/japan/events/techdays/default.mspx
■関連記事
・ マイクロソフト、クラウド向けサービス「Windows Azure」を発表(2008/10/28)
( 野津 誠 )
2009/01/27 19:56
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