文化庁、国立新美術館、CG-ARTS協会は、「第12回 文化庁メディア芸術祭」を2月4日から15日まで開催する。場所は東京・六本木の国立新美術館。入場は無料。
「第12回 文化庁メディア芸術祭」では、アート、アニメ、マンガ、映像、ゲーム、Webなどの約170作品を展示する。また、シンポジウムや上映会を行うほか、「学生CGコンテスト受賞作品展」「先端技術ショーケース'09」「Media Art in the World」といった展示、ワークショップなどのイベントも併催する。
「第12回 文化庁メディア芸術祭」各部門の大賞作品は、アート部門がインスターレーション「Oups!」(マルシオ・アンブロージオ氏)、エンターテインメント部門が電子楽器「TENORI-ON」(岩井俊雄氏/TENORI-ON開発チーム代表西堀佑氏)、アニメーション部門が「つみきのいえ」(加藤久仁生氏)、マンガ部門が「ピアノの森」(一色まこと氏)。
CG-ARTS協会では、今回の受賞作品の傾向について、「経済不況で世の中が暗くなっているときに、明るい未来を見せてくれるような作品が選ばれた。どの作品も未来志向で元気がある」と説明。「そこで、今回のキャッチコピーは『未来をつなぐ』にした」という。また、「既存のアートやエンターテインメントの垣根を越えて、新しいジャンルを感じさせる。一見するとアートのような作品がエンターテインメント部門に選ばれたり、逆にアート部門の中にはエンターテインメント性のある作品も選ばれている」とした。
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「TENORI-ON」(C)岩井俊雄/ヤマハ株式会
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「TENORI-ON」体験コーナー (C)岩井俊雄/ヤマハ株式会
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スクリーンにアニメーションと合成された自分の映像が映る「Oups!」(C)Oups! Marcio AMBROSIO
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エンターテインメント部門優秀賞の「Wii Fit」。作者はWii Fit開発チーム代表宮本茂氏 (C)2007 Nintendo
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エンターテインメント部門の審査委員会推薦作品に選ばれた携帯ゲームが並ぶ。PS3のゲームなども展示。すべて試遊可能
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● モリサワフォントを使ったイラスト作成サイト
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FONTPARK 2.0 (C)株式会社モリサワ
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FONTPARK 2.0の作品例 (C)株式会社モリサワ
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エンターテインメント部門の優秀賞には、モリサワのWebコンテンツ「FONTPARK 2.0」が選ばれた。制作者はWebデザイナーの中村勇吾氏。「FONTPARK 2.0」は、モリサワフォントを使ってイラストが描ける無料サービス。マウスのドラッグ操作で文字を一画までばらし、組み合わせて描画する。作成したイラストは投稿・公開できる。
また、奨励賞には、携帯電話とWebサイトを使った釣りゲーム「Gyorol(ギョロル)」が選ばれた。ユーザーは、PCサイト上のQRコードを読み取り、専用サイトにアクセスして携帯を釣り竿(コントローラー)にする。ボタン操作で糸を垂らすと、PCサイト上にユーザーの浮きが表示される。“あたり”が来るとバイブレーションで通知。ボタン操作で魚を釣り上げる。
釣った魚は、Gyorolの水槽ページに投稿できる。他のユーザーが釣った魚(最新30匹)も鑑賞できる。Gyorolは、携帯とWebを利用した新しいリアルタイムコミュニケーションを提示するためにバスキュールが制作した実験コンテンツ。展示では、Gyorolのサイトがプロジェクターで床に投影してあり、まるで釣り堀のようになっている。Gyorol制作チーム代表の朴正義氏は、「新しいデジタルサイネージとして活用できる」と話す。
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「Gyorol」体験コーナー (C)株式会社バスキュール
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ボタン操作で釣り糸を垂らす場所の移動や魚の引き上げを行う。釣った魚の大きさは携帯に表示 (C)株式会社バスキュール
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● アイドルからのモーニングコールをWeb予約
エンターテインメント部門/Webの審査委員会推薦作品では、ユニリーバ・ジャパンのボディフレグランス製品プロモーションサイト「AXE WAKE-UP SERVICE INC.」を展示する。同サイトは、設定した時間にアイドルからモーニングコール(自動再生)がある無料サービス。電話番号で予約すると音声ガイダンスが流れるが、それに同期してPCサイト上で受け付けたアイドルの動画を再生する。電話口で話している相手の姿がPC画面に映っているというリアルタイム風の仕掛けが面白い。
このほか、季節ごとに対象とする生物の調査報告を投稿すると日本地図上に反映される環境省のサイト「いきものみっけ」、科学技術振興機構の知覚に関する学習コンテンツ「マインド・ラボ」、新しいグッズのアイデアを提案し続けるプロジェクトサイト「prototype1000」、Webページ中のネガティブな言葉を剣士が一刀両断する「月刊剣道時代ブログパーツ」などを展示する。
また、アート部門/Webの審査委員会推薦作品では、100ドル紙幣の再描写プロジェクト「Ten Thousand Cents」を展示する。独自開発のオンライン描画ツールを使い、1万個に分割された紙幣をプロジェクト全体の目的を知らされていない匿名の1万人が再描写する。参加者には労働報酬として1人につき1セント支払われる。描写の過程は動画で視聴可能。同プロジェクトでは、現代社会の「労働」について、デジタル時代におけるその価値の変容、クラウドソーシング、著作権などの問題を提起するという。
このほか、ソニーマーケティングのWALKMANプロモーションサイト「REC YOU」や、博報堂のブランディングサイト「hakuhodo brand design」などもアート部門/Webの審査委員会推薦作品で展示している。
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「AXE WAKE-UP SERVICE INC.」電話と同期してサイト上の動画が再生。こちらも制作はバスキュール (C)ユニリーバ・ジャパン株式会社
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「Ten Thousand Cents」100ドル紙幣にマウスオーバーすると、再描写した箇所を拡大表示 (C)Aaron Koblin + Takashi Kawashima
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● キューブ内のキャラを脱出させるARゲーム
エンターテインメント部門の審査員推薦作品では、Augmented Reality(AR)を用いたゲーム「levelHead」を展示する。手のひらサイズのキューブをWebカメラで撮影した映像を見ると、キューブ内に小さな部屋が映っている。キューブを傾けると、部屋の中のキャラクターが移動する。キューブは3つ用意されており、3部屋のどのドアがどこにつながるのかを記憶しながらキャラクターを移動させ、出口を探していく。
マンガ部門では、Web作品も展示している。携帯電話で配信しているWebマンガ「ほのぼの日和」は、クリックすることによって画面が動き、携帯のバイブレーターと連動してストーリーが進んでいく仕組み。また、PC向けでは、Flashを用いた「ハック・トゥ・ザ・ブレイン」、講談社が配信する「ヤクゼン! 韓国美少女の挑戦」などが審査委員会推薦作品に選ばれている。
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「levelHead」(C)Julian Oliver
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キャラが部屋の出口に近付いたところで、別のキューブをくっつけて移動させる。操作にはコツが必要 (C)Julian Oliver
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携帯電話で読むWebマンガ「ほのぼの日和」。作者は薄雄大氏
(C)クリコミ
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アート部門優秀賞のインタラクティブ作品「Touch the Invisibles」。モニター上の人を指先で倒すと、爪の上に付けたバイブレーターが振動 (C)渡邊淳司/草地映介/安藤英由樹
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関連情報
■URL
文化庁メディア芸術祭
http://plaza.bunka.go.jp/festival/2008/information/
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・ 文化庁メディア芸術祭、作品の一般推薦受付を開始(2008/06/25)
( 野津 誠 )
2009/02/04 13:20
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