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ひろゆき氏&夏野氏が講演「日本のネットは決してダメじゃない」
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アナログ停波後の周波数帯域を利用したマルチメディアサービス
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CO2排出量が都内最多の地域、東大工学部のグリーンプロジェクト
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IPv4アドレス枯渇で「Google マップ」が“虫食い”に!?
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「Interop Tokyo 2009」展示会が開幕、今年はひろゆき氏の講演も
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「ネット選挙」は日本でも実現するか、国会議員も交え議論


 2008年に行われた米大統領選挙では、オバマ大統領の勝因として「インターネットの積極的な活用」が挙げられることが多い。一方、日本においては、選挙期間中にWebを選挙運動に利用することは公職選挙法違反の可能性が高いという見解が示されており、選挙期間中は候補者が自身のサイトやブログの更新を停止している。

 アジャイルメディア・ネットワークは24日、今後のネットと政治・選挙の可能性について議論するイベント「インターネットが選挙を変える? 〜Internet CHANGEs election〜」を開催。オバマ大統領のネット戦略や、日本の公職選挙法の問題点についての解説、自民党・民主党の現職国会議員を交えたパネルディスカッションが行われた。


オバマ氏はネットをフル活用した初めての大統領

フライシュマンヒラード・ジャパン代表取締役CEOの田中慎一氏
 イベント前半では、フライシュマンヒラード・ジャパン代表取締役CEOの田中慎一氏が、オバマ氏がどのようにインターネットを活用したかを紹介した。

 田中氏は、2008年の米大統領選挙を「インターネット社会における初の大統領選挙」と評し、オバマ氏は「インターネットによって大統領になった」最初の人物だと説明。ネット献金により豊富な選挙資金を集めただけでなく、自身のサイトに加えてFacebookやMySpace、YouTubeといったサイトもフル活用することで、支持者の参画意識を醸成していったと分析した。

 また、大統領選勝利後に開設したサイト「CHANGE.GOV」では、ユーザーがオバマ氏への質問や政策に対するコメントを投稿でき、さらにそれぞのコメントをユーザーが評価できるシステムなど、「民意」を可視化することに取り組んできたと説明。また、就任後のホワイトハウスのサイトにおいては、政策決定のプロセスやデータを積極的に公開していくという「政策プロセスのオープン化」に取り組んでいるとした。

 田中氏は、こうしたオバマ氏の手法を「ネットを介してサイレントマジョリティとオバマという政治家との間で対話をしながら、共通認識を作っていくやり方」と説明。「囲い込まれていたプロセスやデータがオープンになることで、それらに対するレスポンスから民意や共通認識が生まれる。オバマのやり方を見ていると、これからはそういう政治が主流になっていくのではないかと思う」と語った。


2008年の米大統領選挙が「インターネット社会における初の大統領選挙」になったと説明 オバマ氏の選挙中から大統領就任後までのサイトの分析。「共通認識をつくる」という目的はすべて一致している

ネット規制以外にも制約が多い公職選挙法

「構想日本」の伊藤伸氏
 続いて登壇した非営利団体「構想日本」の伊藤伸氏は、現在の日本の公職選挙法について解説した。

 伊藤氏は、日本の公職選挙法は「禁止事項が異常に多い“べからず法”」で、選挙期間以外には「選挙運動」を行うことは認められず、選挙期間中も「やってよいことだけが列挙されており、それ以外はすべて禁止という法律だ」と説明。一方で、ある活動が違法な「事前の選挙運動」にあたるか、それとも合法な「政治活動」のどちらにあたるかといった解釈は、都道府県によっても異なる例が見られるなど、「運用は解釈によるものが多く、白でも黒でもない“グレーゾーン”が多数存在する」状態だとした。

 現在の公職選挙法では、選挙期間中に頒布してよい文書図画は、ビラや葉書、マニフェストのみと定められており、それ以外は禁止されている。総務省では、Webやメールはこの「文書図画の頒布」にあたるという見解を示しているため、選挙期間中の候補者はサイトの更新やメールの送付を控えている。ただし、実際には「初回であれば警告で済むだろう」と考えているか、あるいはそうした規制があることを知らずに、選挙運動にあたるメールを送信している候補者も見受けられるという。

 伊藤氏は、「ネットに対する規制も問題だが、公職選挙法そのものが多くの問題を抱えている」として、改正が必要だと訴える。現在の公職選挙法には、「選挙期間中以外に“選挙運動”をしてはいけない」「選挙期間中の演説会は、候補者か政党以外が開催することはできない」「戸別訪問をしてはいけない」といった制約があり、1950年に法を制定した当時の意図からは外れ、逆に国民の政治参加を妨げてしまっていると指摘。「日本の公職選挙法は候補者を中心に書かれている。国民が政治に参加し、その手段の1つとして選挙があるという発想が無い。有権者を信用していない法律と言える。選挙が政治参加の手立てになるよう、法の精神を変えていくべきではないか」と訴えた。


現在の公職選挙法では「事前の選挙運動」や「戸別訪問」なども禁止されている 選挙中に「頒布してよい文書図画」が定められていて、Webやメールはこれに含まれないため禁止とみなされる

「ネット選挙解禁」だけでなく、公選法の抜本的な改正を

フライシュマンヒラード・ジャパン代表取締役CEOの田中慎一氏、フライシュマンヒラード・ジャパン代表取締役CEOの田中慎一氏、民主党所属参議院議員の鈴木寛氏
 イベント後半にはパネルディスカッションが行われ、現職の国会議員も交えて、日本のネット選挙に向けての課題などについての議論が行われた。

 自民党所属衆議院議員の河野太郎氏は、「政治家にとってもネットは便利なツール。ただ、候補者の側からすると、選挙期間中にネットが使えないのは実はそれほど不便ではない」とコメント。「選挙期間は12日間(衆議院議員選挙の場合)しかない。ネットではむしろ、選挙期間ではない時期にどれだけ自分の活動を伝えられているかが大事だと考えている」と語った。

 ただし、現在の公職選挙法にはやはり問題点が多いとして、「現状でネットだけを解禁しても、情報発信がいびつになるだけ。公職選挙法全体を変えていかなくてはいけない」と主張。また、候補者に対するネットでの誹謗中傷が選挙中に起きた場合に、選挙期間内に対処できるのかといった課題や、「米大統領選のように巨額の費用をかけられれば格好いいページやシステムも構築できるが、選挙にお金がかかりすぎるのはやはり問題だ」として、費用面の問題についても指摘した。

 民主党所属参議院議員の鈴木寛氏は、「既存のマスメディアを通じた情報には偏りもあるので、ネットはそれを補う有力なツール」と説明。公職選挙法について、民主党ではネット利用を可能とするための改正法案を提出しており、自民党から条文について修正すべき点を指摘してもらえれば、それを受け入れて法改正を実現したいと語った。

 一方で、「国民の政治に対する意識も変えていかないと、ネット献金やネット選挙の解禁と言っても、偏った対応や混乱の原因にもなりかねない」として、河野氏と同様に選挙のネット利用を解禁するだけでは不十分だと主張。日本ではメディアリテラシーや政治に対する教育が十分に行われていないといった問題もあり、こうした点にも対処していかなければいけないと語った。


(左から)自民党所属衆議院議員の河野太郎氏、ドットジェーピー理事長の佐藤大吾氏、フォーナイン・ストラテジーズ代表の西村豊氏、モデレーターを努めたブロガーで国際大学GLOCOM客員研究員の楠正憲氏
 NPO法人ドットジェーピー理事長の佐藤大吾氏は、「公職選挙法は候補者だけでなく、誰でも対象になる。ブログで『あの人に一票入れよう』といったことを書き込むことも違反になってしまう」と説明。現在の公職選挙法は、お金がかからない選挙を実現することを趣旨として定められており、その趣旨から言えば多くの人に安く情報を届けられるインターネットは早急に利用が認められるべきだと主張。「ネット選挙をどうするかという議論が、公職選挙法全体を見直す機会になってほしい」と訴えた。

 イベント前半でオバマ氏の事例を紹介した田中氏は、「オバマ氏の事例は、それを見てただうらやましがる必要はない。日本でもオバマ現象のようなことが起こるかは議論が必要だが、彼の基本戦略は日本でも有効だと思うし、コミュニケーション戦略はむしろ日本人向き。日本人は決してコミュニケーション下手ではなく、日本には日本独自のネット選挙が生まれると思う」とコメント。「ただし、法的な部分は問題で、公職選挙法はぜひとも変えていただきたい」と語った。

 フォーナイン・ストラテジーズ代表の西村豊氏は、「米大統領選では、若者達がオバマの応援をするんだということで、選挙運動を活発化させた。政治は上から与えられるもので、自分たちは投票に行くだけだという状況では、ただ悪口を言うだけになりがちだ。しかし、いまはブログがあり、ネットでも運動が起こせるということをオバマの選挙が示した」と説明。フォーナイン・ストラテジーズが運営するブログ記事の読み比べ評価リンク集「Blog-Headline+」では、「こんなネット選挙運動はイヤだ!」といったNG事例をブログ記事にして登録できる特設ジャンル「インターネットで政治をよくする!ブログ意見集」を開設しており、たくさんのエントリーを寄せてほしいと呼びかけた。

 アジャイルメディア・ネットワーク社長の徳力基彦氏は、現状でブロガーはどのような選挙活動ができるのかを、公職選挙法の解説を行った伊藤氏やパネリストの各氏に質問したが、「事前の選挙活動はすべてダメ」「選挙期間中も認められている手段以外の活動はすべて行えない」といった説明が相次ぎ、現在の公職選挙法による制限の厳しさを再確認する結果となった。

 一方で、政策や政治活動に対して意見を述べていくことには問題はないとして、伊藤氏は「選挙の時だけ注目するよりも、普段の政治活動や政策にも関心を持ってもらいたい」と訴えた。「構想日本」では、各政治家のプロフィールや政策意見を集めている政治家データベースを公開しており、ドットジェーピーとヤフーが運営している「Yahoo!みんなの政治」のように政治家の活動や政策を確認できるサイトもあることから、選挙時だけでなく普段から政治・政策に対してブログで意見を述べていくことが重要だと語った。


関連情報

URL
  AMNブログイベントvol.8「インターネットが選挙を変える?」
  http://agilemedia.jp/blog/2009/04/424amnvol8_internet_changes_el.html
  Blog-Headline+
  http://www.blog-headline.jp/
  構想日本
  http://www.kosonippon.org/
  Yahoo!みんなの政治
  http://seiji.yahoo.co.jp/

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( 三柳英樹 )
2009/04/28 12:43

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