グーグルは9日、開発者向けのイベント「Google Developer Day 2009」をパシフィコ横浜(神奈川県横浜市)で開催した。午前中の基調講演では、Webアプリケーション、Android、OpenSocialなどの最新動向について紹介した。
グーグルの辻野晃一郎代表取締役社長は、「2008年は1000人を超える来場者だったが、今年はそれを上回っている。登録受け付けを開始してから2週間で定員に達した。年々関心が高くなっている手応えを感じている」と話す。日本の来場者数は、米国、中国に次ぐ規模だという。
また、「Googleが、これからもインターネットのイノベーションを追求していく上で、日本をマーケットの1つと考えるのではなく、日本の技術や開発者の皆さんの才能をインテグレートすることが重要だと考えている。日本の開発者とのコラボレーションに期待している。OpenSocialやAndroid最新のテクノロジーにおいても日本の開発者の存在感は大きい」と語った。
|
|
グーグルの辻野晃一郎代表取締役社長
|
Google Developer Day 2009のテーマ
|
● マイクロソフトにはIE8でWeb標準に賛同してほしい
シニアプロダクトマネージャーの及川卓也氏は、Webアプリケーション関連の技術について紹介した。及川氏は、「今まさにWebアプリケーションの新しい時代が来ている。Webアプリケーションを作成する際の課題は、今後その多くが解決されるだろう」と話す。
さらに、JavaScriptのみでダイナミックなサイトやWebアプリケーションを作成できる次世代のWeb標準「HTML5」について説明。ブラウザ上で図形を描画できる「Canvas」、Flashなどを使用することなく動画の埋め込みが可能な「Video」、ユーザーの位置情報を利用するための「Geolocation API」などをデモした。
「HTML5」をサポートするブラウザとして、Google Chromeをはじめ、Firefox、Safari、Operaを挙げた。Internet Explorer(IE)については、「マイクロソフトもIE8でWeb標準に賛同してもらえることに期待する」と述べた。Google Chromeの最新トピックスとしては、MacおよびLinuxに対応する開発者版を紹介した。
|
|
|
グーグルの及川卓也シニアプロダクトマネージャー
|
HTML5のvideoタグでは、動画再生画面の回転も可能
|
Flashを使わずにYouTubeの動画を再生するページ
|
|
|
|
Webページ上で3D表現が可能なオープンソースJavaScriptライブラリ「O3D」
|
HTML5をサポートするブラウザ
|
Google Chromeの動向
|
● 「スマートフォンは成長市場」、NTTドコモがAndroidに期待
モバイル関連では、Android統括部長のトム・モス氏が、Androidの動向を簡単に説明した後、NTTドコモの永田清人氏(執行役員プロダクト部長)が登壇し、Android搭載端末「HT-03A」を紹介した。永田氏は、「携帯電話市場が伸び悩む中、スマートフォンだけは新開拓できる分野。ただし、スマートフォンはアプリケーションが市場の伸びを左右する」と話し、開発者にアプリケーションの提供を呼びかけた。
Android用のアプリケーション販売・提供プラットフォーム「Android Market」について、グーグルのデベロッパーアドボケイドであるクリス・プルエット氏が説明。「HT-03A」の発売後2~3カ月間は、無料アプリのみをラインナップし、その後、有料アプリを提供していくという。また、「Google Developer Day 2009」のサプライズとして、事前登録して来場した開発者全員に、HTC製のAndroid搭載端末を無償で提供すると発表。会場から歓声が上がった。
|
|
|
Googleのトム・モスAndroid統括部長
|
Androidのトピック
|
Android Marketのアプリケーション一覧画面
|
|
|
|
NTTドコモの永田清人執行役員プロダクト部長
|
HT-03A
|
NTTドコモのAndroidへの期待
|
● 「大きなチャンスがある市場」、ミクシィ笠原社長がmixiアプリを紹介
エンジニアリングディレクターのデービッド・グレーザー氏は、OpenSocialやGoogle Friend Connectを紹介した。「Webとソーシャルが融合することで、インターネットはより社会的なものになる」としたほか、OpenSocialにおいても、Webのスタンダードを推進することが重要になると述べた。
OpenSocialの事例として、ミクシィ代表取締役社長の笠原健治氏が登壇し、「mixiアプリ」と「mixi Connect」を紹介した。「日本最大のSNSでアプリを提供でき、マイミクの口コミによる伝播を期待できるため、マーケティングコストもかならない」などの特徴を説明し、「今、起業するとしたらソーシャルアプリの会社を作る。大きなチャンスがある市場」とアピールした。
|
|
|
Googleのデービッド・グレーザーエンジニアリングディレクター
|
Webとソーシャルを融合するための動き
|
OpenSocialでは課金用のAPIも提供
|
|
|
|
ミクシィの笠原健治代表取締役社長
|
mixiアプリの特徴
|
mixiアプリ関連のスケジュール
|
● メールやIMとは違うリアルタイムコミュニケーション「Google Wave」
このほか、「Google I/O」で発表された次世代コミュニケーションプラットフォーム「Google Wave」を日本初披露。Google Waveプロダクトマネージャーのグレゴリー・ダレサンダー氏、Google Waveアーキテクチャーテックリードのデービット・ワン氏、Google Wave APIテックリードのダウア・オシンガ氏がデモを行った。
「Google Waveは、メールやIMとは違うリアルタイムコミュニケーションが可能」という。デモでは、チャットやドキュメント共有、チェスなどの簡単なゲームガジェット、自動翻訳機能などを紹介。プレイバック機能により、会話の履歴を参照し、途中に追記することも可能だ。「Blogger」や「Twitter」との連携機能、モバイル向けサービスも用意する。なお、「Google Developer Day 2009」の来場者には、数週間以内に限定アカウントを発行する。
Google Waveに関しては同日、報道関係者向けに説明会を行った。Google Waveは、「Google Maps」の開発者が2年前に構想し、開発をスタートしたという。Googleアカウントを取得すれば利用できるが、現在は一般公開していない。HTML5をサポートするブラウザで利用でき、モバイルでもHTML5をサポートしていればフル機能を使うことが可能という。また、「ロボット」と呼ばれる機能を使い、外部サイトとデータ連携も行える。まずは、開発者の反応を見て、一般向けの公開を検討する方針だ。
|
|
|
Google Waveを説明する担当者
|
ナビゲーションボックスとコンタクトボックス
|
ドキュメントの共有
|
|
|
|
ゲームガジェットも用意
|
メッセージ表示ボックス
|
自動翻訳機能
|
|
|
|
画像のスライドショーも可能
|
モバイル版の画面
|
Googleの提供する各種APIを利用した製品を紹介する企業ブースも設置
|
|
|
|
株式会社鳥人間が展示していた「Space Bike with Google Earth API」。自転車でGoogle Earthを操作できる
|
ヘッドマウントディスプレイにGoogle Earthを表示。加速度センサーを付け、頭を傾けた方向に移動できる
|
Google Earthの画面。自転車を速くこぐと上昇、ゆっくりだとグライダーのように前方へ進む。センサーなどは安価に自作でき、プログラムはAPIを公開するという
|
関連情報
■URL
Google Developer Day 2009
http://code.google.com/intl/ja/events/developerday/2009/home.html
■関連記事
・ 米Googleが次世代通信プラットフォーム「Google Wave」発表(2009/05/29)
( 野津 誠 )
2009/06/09 20:47
- ページの先頭へ-
|