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【特別企画】ソースネクスト松田社長インタビュー

「1,980円ソフトはソフト市場を活性化する」

 ソースネクストは17日、日本オラクルやNRIセキュアテクノロジーズと提携し、OracleのJava開発ソフトや、NRIセキュアのセキュリティ診断・管理ソフトを1,980円で販売することや、PDF作成ツールを皮切りに法人事業へ参入するという戦略を発表した。

 法人市場参入をはじめとしたソースネクストの1,980円ソフトウェア戦略を、ソースネクスト代表取締役社長である松田憲幸氏に聞いた。


オラクルとの提携は2~3カ月前から始まる。まだまだ1,980円製品を拡充したい

ソースネクスト代表取締役社長
松田憲幸氏
─オラクル社の開発ソフトを1,980円で販売することは相当な衝撃がありましたが、いつ頃からオラクル社へ持ちかけていたのでしょうか?

松田社長:当社から持ちかけた話ではありません。2~3カ月前に話が出始めて一気に具体化しました。

 私が日本IBMでエンジニアをしていた時、「開発ソフトはなぜこんなに高いのだろう?」と思ったことがあります。、安く提供すれば、日本でもより多くのソフトウェアエンジニアが育つと思います。

─現在171タイトルということですが、今後1,980円シリーズにはどのような製品がラインナップとして入るのでしょうか?

松田社長:昔のPCユーザーは、開発者というか、プログラムを打ち込んだりして遊んでいる人が多かったものです。今は、ここ10年間で多くのユーザーが“PCを使うだけ”になってしまいました。

 このような状況では、日本のソフトウェア産業を中長期的に考えるとダメになってしまうだろう、もっと開発者を増やさないと世界に置いていかれるだろうという危機感から、開発ソフトもラインナップに入れました。インドでは大卒レベルで、立派な開発者が毎年数多く育っています。今後もこのようなソフトウェアを提供し、日本人開発者を多く育成していきたいと考えています。

 また日本には、まだまだ世に出ていない素晴らしいソフトウェアが沢山あると思います。販路が確立されていないために、世間に出てこないが使ってみると、もの凄く便利なソフトです。このようなソフトを我々が探し出し、1,980円で世に送り出せば、「ちょっと作ってみようか」という気持ちで開発する開発者が多く出てくるはずです。


セキュリティは、ソフトウェア業界が発展するためにも必要不可欠の要素だ

─NRIセキュア社のセキュリティ診断・管理ソフトも1,980円で販売することになりましたが、これはどのような目的からなのでしょうか?

松田社長:現在、当社ではウイルス対策ソフトを1,980円で販売しており、かなりのシェアを獲得しましたが、最新のウイルスなどでは、ウイルス対策ソフトだけでは防ぎきれない場合があります。逆に言えば、WindowsUpdateさえキチンとしていれば防げる場合でも、それができていない場合が多いということです。

 その一因は、やはり“わかりにくさ”だと思います。安くてわかりやすく、ワンクリックでできるようなソフトウェアがあれば、導入するユーザーが多いのではないかと考えています。したがって、ユーザーインターフェイスには特に力を入れており、今回の「SecureCube/PC-Checkのコンシューマー版」では、当社がユーザーインターフェイスデザインを担当し、“わかりやすい”インターフェイスでご提供する予定です。

 ソフトウェア業界が発展するためにもセキュリティは重要です。ウイルスなどの蔓延により、「PCは使いにくい、こわい」という認識がユーザー間に拡ってしまっては問題だと考えています。


日本市場はハードとソフトウェアのバランスの悪さが一番の問題だ

─6月発売製品から税込み1,980円で統一するということですが、この時期に統一した理由は何だったのでしょうか?

松田社長:正直なところ、“様子見”をしていたということです。総額表示制が4月より導入されましたが、実施の時期や範囲が、通常よりは少し厳しかったと思います。総額表示制が厳しく実行されるのであれば、ユーザーに混乱させないためにも、「税込み1,980円」で統一することは、当社としては当然の判断です。個人的にはすべて内税表記の方が、わかりやすさや値段のキリの良さで消費が喚起されると考えているからです。

 とにかく、現状では「ハードとソフトウェアのバランスの悪さが問題」だと思います。市場規模を見ればわかりますが、ハードウェア市場に対してソフトウェア市場がはるかに小さい。ソフトウェア市場はハードウェアに追いつかなくてはいけない。そのためのひとつの方法として、当社では1,980円でソフトウェアを販売し、市場拡大に繋げていきたいと考えているのです。


最初は法人市場への参入は考えてなかった。市場の要求が参入を決断させた

─法人市場への参入を発表されましたが、きっかけはどのようなものなのでしょうか?

松田社長:1,980円で販売するコモディティ化戦略を打ち出した2003年2月当初は、法人市場参入はまったく考えていませんでした。しかし、「いきなりPDF」を発売したところ、法人ユーザーから驚くほど大量の発注を頂き、「数千本をパッケージで納入するわけにはいかないだろう」ということでライセンス販売を開始した、という経緯があります。

 当社は、パッケージ版は今後スリムパッケージ化していく、という戦略を発表しましたが、いくらスリムパッケージと言えども、千本単位となるとかさばりますし、各社員にパッケージを手渡して「インストールしてね」と言っても面倒臭がる人もいるでしょう。そこで、ライセンス販売を開始したのです。つまり、市場から逆に教えられた、というのが実情でしょうか。

 わたしは、「いきなりPDF」のようなソフトウェアは“武器”だと考えています。このような有用なソフトを全社員に与えることは、企業全体の生産性向上に役立ちます。従来は「便利だけど高くて全員に配布できなかった機能を持つ」ソフトウェアを、どんどん当社で製品化し、企業の“戦力”を上げていって欲しいと考えています。


1,980円はその場で購入を決断できる値段。980円でも2,980円でもダメ

─1,980円という低価格での製品化には、さまざまな問題があったと思いますが

松田社長:まず、純粋な売上だけでなく、プロモーションという利点もあるでしょう。わたしが考えるマーケットとは、「価格×数量=マーケット」です。1億円の開発費がかかったソフトウェアの場合、1億円で1本売る方法と、1円で1億本販売する方法が、ビジネスモデルとしてすでに確立されています。しかし、我々はその中間で「2,000円×5万本」というビジネスモデルが現在1番やりやすい、と考えているのです。

 値段が初めから決まっていると営業もしやすいのです。100円ショップと同じ要領で、「何本仕入れれば、2,000円で販売させて頂けるか?」という1点に集中して仕入れをすればよいからです。リスクは、販売元である当社が受け持ちます。

 また、1,980円という値段は非常に微妙な値付けであり、980円だと流通業の販売マージンが薄すぎて、受け入れられない。2,980円だと、値段的にコンビニでの販売ができない。コンビニなど、通常のソフトウェアは扱わない販路を確保してこそ、低価格が実現できているわけですから、2,980円も無理なのです。

 しかし、この値段にすることで、音楽CDや映画のDVDと同列に並ぶことができたと考えています。ソフトウェアを“音楽CDや映画と同程度に気軽に購入できるもの”にできたのです。販売店に行くとわかりますが、いわゆる“大人買い”をしている方が非常に多いです。3~4本まとめ買いができる値段でもあるし、「あ、これ便利そう」と思い立って衝動買いできる値段でもあります。このような理由から、1,980円という値段付けがされています。


シェアウェアの製品化もあり得る

─先ほどのお話では、今後も1,980円シリーズを拡大していくということでしたが、「秀丸」などの有名なシェアウェアなどもラインナップに入れる予定はあるのでしょうか?

松田社長:有名なシェアウェアソフトの製品化もあり得るでしょう。わたしは、まだ日本のソフトウェアの8割以上は世に出ていないと考えています。優秀なソフトウェアを広く知らしめることは当社の方針のひとつです。優秀なソフトウェアの開発者に活躍の場や夢を与えられるような存在になりたいと思います。

 それが、中長期的に日本のソフトウェア業界の発展に繋がり、アジアや欧米のソフトウェア業界に負けない日本のソフトウェア業界に成長してほしいという願いでもあります。また、そのような有用なソフトウェアを広くPCユーザーに広め、企業においては「武器」に、コンシューマーには「PCの便利さ」を得て欲しいと思っています。

─ありがとうございました。


関連情報

URL
  ソースネクスト
  http://www.sourcenext.com/

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( 大津 心 )
2004/06/23 13:32

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